第3回インデックス投資ナイト体験記 その1

水瀬ケンイチ

2011年1月9日、東京カルチャーカルチャーにて行なわれた「第3回インデックス投資ナイト」に行きました。
その様子を水瀬のコメントを交えながらまとめたいと思います。
なお、本記事は水瀬の個人的解釈でまとめていますので、誤解・曲解があるかもしれないことを予めご了承ください。
それではいきます。(長文失礼!)

【プログラム】
・ディスカッション:インデックス投資の始め方、続け方。やってはいけない危険な投資法は?
・投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2010 表彰式

【出演(敬称略)】
・山崎元 (経済評論家 楽天証券経済研究所客員研究員)
・カン・チュンド (晋陽FPオフィス代表 インデックス投資アドバイザー)
・内藤忍 (マネックス・ユニバーシティ 社長)
・竹川美奈子(ファイナンシャルジャーナリスト)
・朝倉智也 (モーニングスター 代表取締役COO)
・司会:イーノ・ジュンイチ (投資信託のブログ|ファンドの海 ブロガー)

チケットは発売早々にSOLD OUTして、当日の会場は満員御礼(123名)でした。
東京カルチャーカルチャーはお酒を飲みながらイベント鑑賞できる面白い場所です。観客も登壇者も飲み食いしながら参加します。
イベントにちなんだオリジナルカクテルが作られるのですが、今年は、「お台場のランダムウォッカ」と「マル・キール」(ちなみにマル・キールは私の思い付きが採用されたみたい^^)。皆さん思い思いのドリンクを頼んでいました。

冒頭に、インデックス投資ナイト幹事のえんどうやすゆきさんとイーノ・ジュンイチさんからご挨拶があり、軽快なBGMとともに出演者が登壇、開始です。
まずは、出演者が軽く自己紹介。内藤氏とカン氏の「会場に女性が少ないので盛り上がらないけど頑張ります」の言葉に会場から野太い笑い声。
観客の属性確認の挙手によると、「インデックス投資ナイト初参加」が半分弱、「既にインデックス投資を始めている」が7割程度、「投資自体未経験者」がほとんどなし。

(水瀬コメント:ということは、観客のほぼ全員が投資経験者で、そのうち7割がインデックス投資家、残り3割がアクティブ投資家と「恥ずかしがりやさん」ということになると思います)

イーノ氏
「まず基本的なところから。カンさん、インデックス投資って何ですか?」

カン氏
「ひと言で言うと「選ばない投資」。夜空を見るとたくさん星が瞬いている。今までは、あの星がいいなとか選ぶ投資だった。ひとそれぞれ好みがありますよね?でも、インデックス投資は星空全部買っちゃえばいいという投資!満点の星空理論と呼んでいる。ここ笑うとこ(会場笑い)。何の星空買うの?ということでは、株式・債券・不動産など全部買っちゃう。国も全部買っちゃう。選ばず全部買っちゃうのがインデックス投資。これはコストが低く、管理がしやすい」

イーノ氏
「全部買うということだが、何かしら商品を買わなくてはいけないはず。商品について朝倉さん、インデックスファンドって何ですか?」

朝倉氏
「カンさんが言うように、星を選ばないのがインデックスファンドだが、その星に評価の星をつけてるのが私たちモーニングスター(会場笑い)。投資信託は大きく分けるとアクティブファンドとインデックスファンドに分けられる。市場平均でいいというのがインデックスファンド。それに対して投資対象を選ぶのがアクティブファンド。その分コストがかかる。過去10年の実績を見ると、TOPIXを上回った年は3年しかなかった」

イーノ氏
「平均の方が良かったと」

朝倉氏
「もっと言うと、継続してインデックスを上回るアクティブファンドはあまりない。2000年にTOPIXを上回ったアクティブファンドは21本しかなかったが、それが毎年減っていき、8年目に2本だけ。9年目にゼロになった。継続してインデックスを上回り続けるのがいかに難しいかということ」

(水瀬注:モーニングスターのこちらのイベント動画で更に詳しく解説されていますのでご興味があればご覧ください。資料を含め、とても良い出来だと思います)

イーノ氏
「朝倉さんの講演をネットで見たが、アメリカではインデックスファンドが売れているらしい?」

朝倉氏
「純資産トップ10で、インデックスファンドが4本入っている。4本ともひとつの資産規模が10兆円を超えている。日本では一番売れているグローバル・ソブリンが3兆円程度」

イーノ氏
「インデックスファンドの良さについての話だったが、他の方で補足ありますか?」

山崎氏
「過去にアクティブファンドを運用していたこともあり、生来アクティブファンドが嫌いというわけではないが、事実の問題とすると、“運用業界の不都合な真実”と呼んでいるが、①アクティブの平均はインデックスに負ける、②よいアクティブファンドを事前に選ぶことはできない。お金をふやすという目的を考えると、アクティブファンドに投資するということは論理的には正しくないということになってしまう。そうなると、アクティブファンドを評価するっていう商売はどんなもんですか?朝倉さん。モーニングスターの星は黄金の星なのか、それとも印刷の染みみたいなものなのか?(会場笑い)」

(水瀬注:ここで山崎氏のキラーパス!)

朝倉氏
「我々はあくまでも過去の実績で評価をしている。将来も5つ星のファンドが良いかは分からない。ただ、5年、10年と継続して評価を続けてきて、他のファンドと比べて評価が高いものは、将来につながる“可能性がある”ということで、“保証する”ことではない」

(水瀬注:朝倉氏、定型文で軽やかにいなす!)

内藤氏
「アクティブファンド vs インデックスファンドの話になるとよく出てくるのが、ウォーレン・バフェットはどうなんだ?という話とピーター・リンチはどうなんだ?という個別の反証。バフェットさんはたしかに過去のトラックレコードを見ると30年間S&P500を上回っている。これを“ウォール街のランダム・ウォーカー”著者のバートン・マルキールさんに聞いてみた。答えは、“彼は投資家ではない。外部経営者だ。彼は例外だ”と言っていた。ピーター・リンチは?と聞いたら“彼は素晴らしい。12~13年で早く辞めたから”(会場笑い)アクティブファンドのファンドマネージャーはどうも分が悪い。しかし、何でそういう人たちが年収2000万円近くもらって、夕方6時には帰れて、ゴールドマンやメリルのレポートもらってささっとレポートを書くだけで高待遇なんでしょうね?山崎さん」

(水瀬注:詳しくは、「内藤忍 お金の話をしませんか」(内藤忍著)のP.80のマルキール・内藤対談に出ています。書評はこちら。ご興味があればご覧ください。しかし、すごく価値ある対談だよなぁこれ)

山崎氏
「実は、バンガードの日本代表のかたに聞いてみたことがある。“インデックスファンドが素晴らしいのは賛成する。しかし米国バンガードにはアクティブファンドもあるではないか”。断っておくと、米国バンガードのアクティブファンドは信託報酬が年率0.3%ラインであり、日本の1.5%も取るような下品なアクティブファンドとは違う良心的なものを出しているとは思う。“何でアクティブファンドを出しているんだ?”と聞いたら、“それは客が望むからだ”と言っていた。客が望む物を出すのが商売といわれればそうだが、米国ハイイールド債をブラジルレアルでヘッジするようなものも客が望めば出していくというように、どんどん商品の質が悪くなっていく。業界としての節度が求められる」

(水瀬注:米国バンガードのアクティブファンドのくだりは、おそらく、セゾン投信・バンガード共催のこちらのセミナーのことだと思われます。私も参加していたのでご興味があればレポートをご覧ください)

山崎氏
「アクティブファンドマネージャーとインデックスファンドマネージャーの日常を考えると、インデックスファンドで資金が入ってきた時に千何百銘柄も買わなければならないことによるシステム負荷は相当大きい。しかし、アクティブファンドファンドマネージャーは割とのんびりしていて、たしかに気が向いたら時々売り買いをして、相場が終わってしまえば会社訪問だといって茶飲み話をするのもいいし、せっかく日本にはいい文化があるんだからと言って明るいうちから蕎麦屋で酒を飲む。そういう意味では、アクティブ運用にはコストがかかるというのはウソだと思う」

(水瀬注:もちろん夜遅くまで真剣に銘柄選定や投資タイミングを検討しているファンドマネージャーさんもいることでしょうから、茶化しているだけだと思われますが、要するに、インデックス運用にも稼動とコストが意外にかかっていて、アクティブ運用だからコストが高いというのは正当化できないと言っているのだと思われます)

内藤氏
「人件費ですね?」

山崎氏
「アナリストチームの人件費ということもあるが、要するにビジネスモデルとしては宗教みたいなもので、あれはお布施が高い。霊感の坪のでかいのを買っているというのがアクティブファンドだと、例えばそんな風に思ってもらえればいいのではないか」

内藤氏
「どこか特定の教祖がいるファンドのことか?」(会場笑い)

山崎氏
「いやいや、ほとんど全てのアクティブファンドがそうだということ」

イーノ氏
「竹川さん、マイクを取られていましたがどうぞ!!」

(水瀬注:司会のイーノ氏、ヤバそうな方向に向かっている話題を鮮やかにカット!)

竹川氏
「最近、アクティブファンドについてよく言われているのが、日本を含めて成熟経済になっていくと経済成長自体が危ぶまれているので、アクティブファンドの方が良いのではないかということ。でも、例えば米国S&P社が、アクティブファンドがインデックスをどれだけ上回っているかを調査している。3ヶ月、半年、1年、3年、5年と出しているが、米国・欧州・豪州、各地域のどのデータを見ても、やっぱりインデックスが勝っている。大型株・中型株・小型株も全部インデックスが勝っている」

イーノ氏
「カンさん何かありますか?」

カン氏
「これはイーノさんがブログで書いていたことだが、インデックスファンドを買ってもアクティブに売買していると、それはインデックス投資にはならないと思う。逆に、アクティブファンドでも回転率が低くバイ&ホールド型のものを保有していれば、マインドとしてはインデックス投資に近いのではないか」

竹川氏
「バイ&ホールド型のアクティブファンドってあるんですか?」

カン氏
「いや、私は知らないけど」(会場笑い)


のっけから、出演者のきわどい話がどんどん出てきて面白いです。
司会のイーノ氏も話をうまくさばいていました。このイベントも3回目なので熟練の域でしょうか。
また、会場には、舞台の後ろに大きなスクリーンがあり、ツイッター画面が映し出されていました。
そこには、話の展開に応じて、ハッシュタグ「#idxnght」が付いた中継ツイートが流れ、また「ダジャレ絶好調」とか「すげー、みんなむちゃくちゃ言ってるわw」とかいった感想・ツッコミツイートがリアルタイムに表示され、出演者の話に華を添えていました。

記事は、まだまだ続きます。

(次回に続く)

<追記>シリーズ記事リンク
第3回インデックス投資ナイト体験記 その1
第3回インデックス投資ナイト体験記 その2
第3回インデックス投資ナイト体験記 その3
第3回インデックス投資ナイト体験記 その4
第3回インデックス投資ナイト体験記 その5
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Posted by水瀬ケンイチ