第3回インデックス投資ナイト体験記 その4

水瀬ケンイチ

第3回インデックス投資ナイト体験記 その1
第3回インデックス投資ナイト体験記 その2
第3回インデックス投資ナイト体験記 その3
の続きです。

なお、繰り返しになりますが、本記事は水瀬の個人的解釈でまとめていますので、誤解・曲解があるかもしれないことを予めご了承ください。

質疑応答は、会場からあらかじめ集めておいた質問に、登壇者が答える形式でした。
私は開場から開始までの1時間、控え室で、山崎さんからの全来場者プレゼントの「ほったらかし投資術」に、山崎さんと黙々とサインしていたので、質問を集めていたことは知りませんでした。
くそう、バトルになる燃料投下しようと思ってたのに!(^^;

イーノ氏
「会場からこんな質問が来ています。山崎さんどうぞ」

山崎氏(山崎氏への質問を自分で読みあげる)
「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドは投資対象としてどうでしょうか?山崎さんが勧めるポートフォリオとは大分違うようですが」

山崎氏
「どうでしょうかって、まぁ好きなら買えばっていうことです(開場笑い)。私はセゾン投信のような独立系投信会社にはとても期待しているので、それぞれの独立系投信会社が商売をやっていけるような形になってくれればさぞかし気持ちがいいのではないかと思っている。ただ、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドを個人的に買うかということになると、一つはファンドオブファンズであること。各アセットクラスを個別に買った方が分かりやすいしコストも低い。もう一つは、アセットアロケーションに外債が結構入っているということ。為替リスクは外株に割り当てたい。だから自分では買わないと思うが、外から見て中野さん頑張ってねと応援はしたい」

(水瀬注:第1回インデックス投資ナイトでも、同じような質問が山崎さんあてに出ていました(関連記事)。セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドファンは、なんとか山崎さんに認めさせたいと思うのでしょうか?^^;)

イーノ氏
「次の質問。国債の大量発行はもう限界が近いように思います。日本国債をアセットアロケーションに組み込むことをどう考えればよいか?」

朝倉氏
「まずアセットアロケーションについては、明確な一つの基準やルールはないので、それぞれが自分の納得するやり方でいいという前提で申しあげる。公的年金のポートフォリオが日本国債と日本株で8割、企業年金も日本国債と日本株が中心であることを考えると、自分のアセットアロケーションでは日本国債はゼロでもいいのではないかと個人的には考えている。公的年金にも企業年金にもホームカントリーバイアスがあるので、自分の運用は海外投資でいいと思う。もう一つは、質問者が仰るように、日本の財政がギリシャやアイルランドと比べても非常に厳しい状態になっているということ。どこで金利が跳ね上がるかは誰にも分からないが、薄氷を踏むような現状であるとは言える。この二つを考えると日本国債はゼロでいいと思う。ただし、これはあくまで私の考えなので皆さん方が個人の考えで判断してほしい」

(水瀬注:ホームカントリーバイアスについてはこちらのブログ記事で詳しく考察していますのでご興味があればご覧ください)

イーノ氏
「暗黙のうちに日本国債を持っているのだから、わざわざ自分でも買わなくていいだろうと、そういうことか?」

朝倉氏
「そうです」

イーノ氏
「もう一人ご意見を聞きたい。内藤さんはどう思われるか?」

内藤氏
「預金もしてるし、保険も入ってるし、年金もちゃんと払っているし、だから安心だという人は、全部国債という状態になっている。リスクを取らないつもりがリスクが国債に集中していて安心ではない。ではどうすれば安心なのかを考えるわけだが、それが難しい。それはアメリカか?中国か?ベトナムか?それともヨーロッパか?というのは、それはまぁ…不条理ですよね人生って」(開場爆笑)

(水瀬注:前回や前々回の記事でもそうですが、今回の内藤さんは妙にアセットアロケーションについて明言を避けているような気がします。なにか不条理な出来事でもあったのでしょうか??^^;)

山崎氏
「日本が財政破綻するかしないかという問題はなかなか興味深い問題。国債がどんどん増えていった時に何が起こるかということを考えると、一般に思われているのと違う像が出てくる。債務が大きすぎて破綻するかもしれない国の債券があるとすると、これは金利が上がる。円というもののベースにあるのは国の債務であるから、円はもっと下がるはずだ。そういう意味では、まず一つは国債とか政府がいい加減で信用できないというのは日本だけではないということだ。例えば、ギリシャショックがあった時にユーロが下がった。ではドルに行くかというとそうではなく円に行った。それは諸々の要素を考えた時に、日本円・日本の債務が相対的にまだマシだということかもしれないということ。財務学者はいきなり金利が上がると思っている。インフレにもならずに昔のように金利が4%とか6%とかになると思っている。そういう金利で金を借りる奴がどこにいるんだ?ということが問題。もう一つは、日本国債はまだ海外の投資家があまり持っていない。財務省的に言うと、月収40万円の家庭が80万とか90万とか支出して不足分を借金しているのと同じだと。でも、これは家計が外から借金をしているのではなく、サザエさん家で言うと、マスオさんがサザエさんから金を借りてカツオに払っているというようなこと。そこで金が回っているという状況。現在の国債は、世の中で言われてるほど簡単に破綻するような性質のものではない。もし、そういう性質のものであれば、金利も為替ももっと違うはずじゃない」

(水瀬注:日本だけ見ていると(特に日本のメディアで)絶望的になりがちですが、実際諸外国を見ると、悪いなりに「なんだ日本ってまだマシな方じゃん」と思うことは多いです。日本が財政破綻するのならもっと先に財政破綻する国々がありそうな気はします。もっとも、ダメさ比べなので、勝ってもうれしくありませんが)

イーノ氏
「関連する質問が来ている。引き続き山崎さん、続いてカンさんにお願いしたい。日本経済や政治の低迷により、長期的には円安になると言われているが、そうした時にどんな資産を組み入れたらいいか?」

山崎氏
「長期的に円安になると言われているという根拠は何でしょうか?ということが一番問題。みんながそう思っているなら何故今円高なんでしょうか?円高になるか円安になるかは、正直に言って「為替予測はエコノミストの墓場」と言われているくらいでこれをやり続けて幸せになった人はあまりいない(開場笑い)。そういう不条理とかパッションとかを全て反映しているのが現在のレートだということだから、そこは決め付けない方がいい。ただ、将来払う金を円建てで払うのだとすると、ライアビリティとアセットのバランスを考えて、運用をしなければいけない。為替リスクはあまりとらない方がいいが、取るなら外国株に割り当てた方が得ではないか」

(水瀬注:仮に将来的に円安になるのが「確実」なら、一番シンプルで良い方法は、FXでレバレッジをかけて円売りすることだと思います。実際には「確実」ではないのでしょうから、そんなことはしない方がいいとは思いますが)

内藤氏
「今の山崎さんの話を簡単に言うと、ALM(Asset Liability Management)といって資産と負債のバランスさせましょうという考え方。将来皆さんが使うお金と同じ比率に資産も合わせていったら為替リスクはゼロ。例えば、将来オージービーフを100万円食べるのなら、100万円分の豪ドルをもっておけば、為替リスクは完全にヘッジされているということ。皆さんが将来使う円と外貨の比率が正確に分かるのであれば、その比率のとおり円と外貨を持っていれば為替リスクはヘッジされる。それから、例えば人民元が将来強くなるという相場観があるなら、将来100万円分しか使わないけど200万円分持っておこうかということはできる」

カン氏
「さっき山崎さんが仰られたとおり、円高になるのか円安になるのかはニュートラルで分からないというのが正論だと思う。皆さんがインデックスファンドの積み立てをして解約するのはいつなのか?多分60歳くらいでよーいスタート。その時に1000万円とか2000万円とかを一気に解約したりしないと思う。おそらく、1年に100万円を解約するとして80歳、90歳まで、20~30年かけて少しずつ解約する。何十年にわたって円と外貨をそれぞれ異なったレートで少しずつ交換していく行為そのものが、為替リスクを分散できるのではないかと思う。円安とか円高とかではなくて、宇宙人が地球を見てどういう風に投資するかを考えると、時価総額ベースでできるだけ広い世界から収益の機会を求めればいいと思う。結果として、日本株は組み入れ割合は小さくなる。そういうシンプルな考え方」

(水瀬注:カンさんは為替予測はしない方針のようです。私も為替予測は不可能と割り切って、ノーガード戦法です。ただし、今年はポートフォリオの為替リスクを減らす方向に投資方針を若干修正しました(関連記事))

イーノ氏
「ちょうどそれにも関連する質問が来ているので、カンさんと竹川さんにお答えいただきたい。バイ&ホールドは棺桶まで持っていくということか?いつかは解約すると思うがそれはいつか?」

(水瀬注:こういう屁理屈こねるやつ、爆発しろ!)

カン氏
「バイ&ホールドというが、アセットアロケーションで資産を管理し定期的にリバランスしていれば、実はそれはバイ&ホールドではない。自動的に、定期的に高くなった資産を売って、安くなった資産を買っている。解約は、積み立てしたときと同じように売っていけばいい。例えば、毎月定額で積み立てていれば、毎月定額で解約する。それもアセットアロケーションの比率どおりに」

(水瀬注:カンさんは定額解約方式を支持しているようです)

イーノ氏
「非常に具体的な話だった。竹川さん同じようにお願いします」

竹川氏
「墓場まで持っていく必要はない。一つはリバランスで必然的に解約する。もう一つは、リタイヤ用資金ならリタイアしたら解約して使っていけばいい。もう一つは、ある程度目標は設定したほうがいい。確定拠出年金でも上がって上がってリタイア前にリーマン・ショックでやられてしまったかたがいる。これはリカバリーが難しい。リタイア前でも、バブルが来てある程度目標に達したら解約して利益確定する方がいい。もう一つは、解約方法について、日本では「定額」積み立てサービスは進んでいるが、米国では解約時の「定率」解約サービスがある。定額解約をしてしまうと、ドルコスト平均法の逆をしてしまうので、下げ相場で多くの口数を解約してしまい、思ったより早く資産が尽きてしまいかねない。証券会社・運用会社の方には定率解約サービスを用意してほしいと思う」

(水瀬注:カンさんの定額解約方式に対して、竹川さんは定率解約方式を支持しているようです。私も基本的には定率解約方式にしようと思っています(関連記事))

山崎氏
「必要なら解約すればいいし、その時その時で最適化すればいいというだけ。それをプログラムで解約するというのは、投資ができてる人にとってはおそらく大きなお世話ではないか。その時その時を最適にハンドリングする、そして何も動かす必要がなければ結果としてバイ&ホールドになるし、概ねそういうことが多いだろうというのがインデックス投資の実態。これをどうルール化するのがいいのかというのは、将来の相場も何も見ないで事前にどうするかを決めるということになるので、そろそろそのレベルを卒業した方がいいのではないか」

竹川氏
「なかなか山崎さんのように合理的にできる人ばかりじゃないんですって」

(水瀬注:定率が選べる投信自動解約サービスは大手証券で既に始まっています。野村證券(名称:定時受取りサービス)、日興コーディアル証券(名称:定期引出サービス)。ただ、あまり盛り上がっていないようですが…)

イーノ氏
「そろそろ最後の質問で、朝倉さんへの質問。上昇相場での適切な運用方法はどんなものか?それでもコツコツ積み立てなのか?」

朝倉氏
「やはり、ポートフォリオを崩さないということになる。さっきも裏で話していたのだが、例えば、中国株が大きく上がっても大丈夫だと思うが、低迷している日本株が本当に上がってきた場合、インデックスファンドからアクティブファンドに乗り換えてしまう、あるいはポートフォリオを崩してまで日本株100%にしてしまうことは十分にありえる。例えば、1999年~2000年のインターネット・バブルの頃は、カリスマファンドマネージャーというのがいて、年率で100~150%上げていた。まぁその後どうなったかは皆さんご存知だとは思うが。インデックスファンドでコツコツ行くことはいいことなんだという思いを持つことが大切で、これが先ほど申しあげた「タフな精神力と忍耐力」だ」

イーノ氏
「他のかたで何か付け加えることはありますか?」

竹川氏
「どこかの地域や日本が上がってくると、また単行本で「これで1億円儲けた」とか、雑誌のかたが来ているのであんまり言うのも申し訳ないが、「○○が次来る!」みたいな特集が多く組まれたりする。それで20%とか30%とか上昇する中でインデックスはたった6~7%じゃないかと思うかたが増えてくると思うが、そういう本や特集が出た時にいかに自分を抑えることができるかどうかだと思う」

(水瀬注:いずれそういう「うれしい悩み」を持ちたいものですね~)

イーノ氏
「全部の質問に答えられず申し訳ありませんが、以上で座談会を終了します。ありがとうございました!」(会場大きな拍手)


これで座談会は終了です。
今回、司会のイーノさんのマイクさばきがうまくて、登壇者全員の発言をうまく引き出していました。
それぞれ良い話が聞けたので大きな収穫がありました。
ただ、一人ひとりの発言が長く、必然的に登壇者同士の掛け合いにあまりならなかったのが少し寂しい気もしました。かつてのバランスファンド論争や外債論争のような、バトルもなかったしなぁ(^^;

この後、登壇者それぞれ3分間のPRタイムが与えられ、思い思いのことをPRしていました。
ひとつだけ、山崎氏がサイン入り「ほったらかし投資術」を全員にプレゼントすることと、既に持ってる人は誰かにあげてほしいと言っていました。
サインするのがすごく大変だったので、捨てないで、どうかよろしくお願いします。

(次回に続く)


<追記>シリーズ記事リンク
第3回インデックス投資ナイト体験記 その1
第3回インデックス投資ナイト体験記 その2
第3回インデックス投資ナイト体験記 その3
第3回インデックス投資ナイト体験記 その4
第3回インデックス投資ナイト体験記 その5
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Posted by水瀬ケンイチ