知っておくべき日本の投資信託の黒歴史
水瀬ケンイチ
インデックスファンドは投資信託の一種ですが、日本の投資信託にはその生い立ちに黒歴史があります。
(もっと言ったら証券市場そのものに黒歴史があるのですが)
現在、それが表に出てくることはほとんどないのですが、日本の投資信託を活用する上で、過去の暗黒歴史を知っておくことは大切なことだと思います。
ちょうどよい記事がありましたのでご紹介します。
東洋経済オンライン 角川総一の投資つれづれ草
2011/01/21 (第17回)日本の投資信託の多くは政策遂行の道具として利用されてきた(1)
詳しくは、上記記事(長文)をご覧いただきたいのですが、ざくっとまとめると以下のような感じです。
(もっと言ったら証券市場そのものに黒歴史があるのですが)
現在、それが表に出てくることはほとんどないのですが、日本の投資信託を活用する上で、過去の暗黒歴史を知っておくことは大切なことだと思います。
ちょうどよい記事がありましたのでご紹介します。
東洋経済オンライン 角川総一の投資つれづれ草
2011/01/21 (第17回)日本の投資信託の多くは政策遂行の道具として利用されてきた(1)
詳しくは、上記記事(長文)をご覧いただきたいのですが、ざくっとまとめると以下のような感じです。
・戦後、GHQの指令による財閥解体や財産税徴収などにより、大量の株式が市場に供給されるに至ったため株価は急落。これに対処するため、大蔵省(当時)は生命保険会社への買い出動要請や、信用取引制度の確立、株式担保金融の実施促進などを行なったが、そのほか株式保有組合の設立と並んで出てきた構想が「証券投資信託」だった
・戦後の投資信託への期待は、業界サイドというよりも“国家的要請”の要素のほうが強かった。産業復興資金が欲しかったため
(水瀬注:戦後、GHQが財閥持ち株会社を解体し、持ち株を一般投資家に売らせた。しかしGHQの占領が終わるとすぐに、財閥系企業の経営陣が官僚と手を組んで、一般株主から強制的に株式を取り返した、という経緯があった。出典:「日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?」R.ターガート マーフィー エリック ガワー著)
・欧米の投資信託の発生が、投資リスクの分散や小口資金の集中化による資金力強化など、国民サイドまたは業界サイドからの自然な経済的欲求から生まれたのに対し、日本の証券投資信託は“官製の義勇軍”といったニュアンスが強かった
・その後に登場した数多くの投資信託も、多かれ少なかれ、「証券市場対策のための道具立て」「経済対策の一環としての投資信託の活用」という構図の中で誕生した(長期公社債投信、中期国債ファンドなど)
・ETFも、政府が2001年の絶不況期に策定した「緊急経済対策」に端を発し、銀行などの株式持ち合い解消による影響を阻止する仕掛けとして登場した
(水瀬注:関連記事に当時の様子が出ています。国内ETFで、長らく日本株式クラスのものばかりで他のアセットクラスがなかなか登場してこなかったのも、おそらくそういう理由が関連していたものと思われます)
・REITも、証券以外の資産も組み入れできるよう法改正したうえで2001年に登場したが、低迷長引く不動産市況をテコ入れする手段という側面が強かった
要するに、かつて日本の証券市場が「官製市場」だったことで、投資信託も商品そのものの意義を期待されて登場したというより、国策として値崩れを防ぐための手段として登場したという黒歴史があったということだと思います。
現在では、長期公社債投信や中期国債ファンドはその役割を概ね終え、MRFやMMFにとって代わられつつありますし、インデックスファンドを含む投資信託も投資家のニーズを汲んだ商品が登場し始めていますし(おかげで通貨選択型など妙な商品が跋扈するという副作用もありますが…)、国内ETFも遅ればせながら先進国株式や新興国株式に広く分散する、個人投資家の資産運用のコアになり得るような商品も登場しはじめています。
かつての「官製市場」からはずいぶんと姿を変えてきていると思います。
しかし、いまだに、複利効果を活かすための無分配型投資信託はお上の意向で作りづらいとか、401kなどにかかる特別法人税がいつまでたっても廃止されないなど、投資信託における「官製市場」の影響は残っていると思われます。
「何で欧米では当たり前の商品が日本にはないのだろう?」
こういう素朴な疑問を私たちが抱く時、日本の投資信託に黒歴史があったことを知っているのと知らないでいるのとでは問題の捉え方が違ってくると思います。
私は日本の投資信託がダメだと言っている訳ではありません。
最近は、証券取引所も証券会社も運用会社も、個人投資家の要望を聞き入れようという動きが見られるようになってきました。
より良い投資環境を目指して個人投資家としてどんどん要望を上げていくことで、日本の投資信託事情も良くなっていくと信じていますし、また、その時には過去の黒歴史を踏まえて、国や業界の痛いところをピンポイントで指摘するような賢さがあった方がより効果的だと思っております。
<追記>2011/01/30
続編の記事がありますので、ご興味がありましたらどうぞ。
2011/01/29 続・知っておくべき日本の投資信託の黒歴史
・戦後の投資信託への期待は、業界サイドというよりも“国家的要請”の要素のほうが強かった。産業復興資金が欲しかったため
(水瀬注:戦後、GHQが財閥持ち株会社を解体し、持ち株を一般投資家に売らせた。しかしGHQの占領が終わるとすぐに、財閥系企業の経営陣が官僚と手を組んで、一般株主から強制的に株式を取り返した、という経緯があった。出典:「日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?」R.ターガート マーフィー エリック ガワー著)
・欧米の投資信託の発生が、投資リスクの分散や小口資金の集中化による資金力強化など、国民サイドまたは業界サイドからの自然な経済的欲求から生まれたのに対し、日本の証券投資信託は“官製の義勇軍”といったニュアンスが強かった
・その後に登場した数多くの投資信託も、多かれ少なかれ、「証券市場対策のための道具立て」「経済対策の一環としての投資信託の活用」という構図の中で誕生した(長期公社債投信、中期国債ファンドなど)
・ETFも、政府が2001年の絶不況期に策定した「緊急経済対策」に端を発し、銀行などの株式持ち合い解消による影響を阻止する仕掛けとして登場した
(水瀬注:関連記事に当時の様子が出ています。国内ETFで、長らく日本株式クラスのものばかりで他のアセットクラスがなかなか登場してこなかったのも、おそらくそういう理由が関連していたものと思われます)
・REITも、証券以外の資産も組み入れできるよう法改正したうえで2001年に登場したが、低迷長引く不動産市況をテコ入れする手段という側面が強かった
要するに、かつて日本の証券市場が「官製市場」だったことで、投資信託も商品そのものの意義を期待されて登場したというより、国策として値崩れを防ぐための手段として登場したという黒歴史があったということだと思います。
現在では、長期公社債投信や中期国債ファンドはその役割を概ね終え、MRFやMMFにとって代わられつつありますし、インデックスファンドを含む投資信託も投資家のニーズを汲んだ商品が登場し始めていますし(おかげで通貨選択型など妙な商品が跋扈するという副作用もありますが…)、国内ETFも遅ればせながら先進国株式や新興国株式に広く分散する、個人投資家の資産運用のコアになり得るような商品も登場しはじめています。
かつての「官製市場」からはずいぶんと姿を変えてきていると思います。
しかし、いまだに、複利効果を活かすための無分配型投資信託はお上の意向で作りづらいとか、401kなどにかかる特別法人税がいつまでたっても廃止されないなど、投資信託における「官製市場」の影響は残っていると思われます。
「何で欧米では当たり前の商品が日本にはないのだろう?」
こういう素朴な疑問を私たちが抱く時、日本の投資信託に黒歴史があったことを知っているのと知らないでいるのとでは問題の捉え方が違ってくると思います。
私は日本の投資信託がダメだと言っている訳ではありません。
最近は、証券取引所も証券会社も運用会社も、個人投資家の要望を聞き入れようという動きが見られるようになってきました。
より良い投資環境を目指して個人投資家としてどんどん要望を上げていくことで、日本の投資信託事情も良くなっていくと信じていますし、また、その時には過去の黒歴史を踏まえて、国や業界の痛いところをピンポイントで指摘するような賢さがあった方がより効果的だと思っております。
<追記>2011/01/30
続編の記事がありますので、ご興味がありましたらどうぞ。
2011/01/29 続・知っておくべき日本の投資信託の黒歴史
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