「狂信的なインデックス主義者」と言われないための3つのポイント

水瀬ケンイチ

私はこうしてインデックス投資ブログを書いているわけですが、モーニングスターに「えっ」と驚くような記事が出ていました。
米国モーニングスターコラムで、『「狂信的なインデックス主義者」の暴走を止めよ』というタイトルです。

詳しくは上記コラムをご覧いただきたいのですが、米国では、『80-90年代の投資の議論においてインデックス投資業界は理性を保っていたが、現在は正しい方向に議論を前進させるよりも二極化させる主張ばかりが目立ち、信用に値する声がかき消されている。(中略)あるときから多くのインデックス主義者たちは、「インデックス投資は優れている」という誠実かつ有用な主張でなく、「インデックス投資以外はすべて劣っているうえに、道徳的にも疑わしい」という極端に攻撃的な主張を唱えるようになった』とのこと。

インデックス投資は優れているというだけでなく、「それ以外は道徳的にも疑わしい」と周りを攻撃しだすとさすがに行き過ぎという気がします。
個人投資家や運用者が、インデックス超過リターンを目指して運用することや絶対収益を目指して運用すること自体、資本主義経済において至極真っ当な行動であり、道徳的に責められることはなにもありません。

しかし、日本でも掲示板やブログなどで、インデックス投資を信奉するあまり、その他の運用を執拗に攻撃し、論争になっているのを見かけることがあります。
気持ちは分からないでもありませんが、実は、インデックス運用とアクティブ運用は持ちつ持たれつの関係なのです。
意に反して「狂信的なインデックス主義者」と言われないためにも、知っておきたいポイントを3つあげたいと思います。

(1)インデックスを上回る投資家は「必ず」存在することを知る

よく「アクティブファンドの6~7割はインデックスを上回れない」というデータが取り上げられ、インデックス投資の優位性が語られます。
これはインデックス投資家にとって都合がいいデータなのですが、逆に言えば、「アクティブファンドの3~4割はインデックスを上回っている」とも言えます。
そのアクティブファンドを事前に選ぶのが極めて困難なのがミソなのですが、存在として、インデックスを上回る人というものは必ずいるんだということを覚えておきたいところです。
あなたが得意になってインデックス投資の優位性を説いているその相手は、インデックスを越えるパフォーマンスを楽々とあげているかもしれないのです。

(2)インデックス投資家は「フリーライド(タダ乗り)」していることを知る

ご存知のように、インデックス運用は市場平均(指数)に投資するので銘柄選別をしません。それは、アクティブ投資家がコストをかけて発見した価格にフリーライド(タダ乗り)しているとも言えます。
アクティブ投資家からすれば、「そもそも株価というのは、アクティブ投資家が個別企業を一生懸命に調べて、リスクとコストを背負いつつ、売買し勝負するからこそ適正な価格が付くのであって、それにタダ乗りするインデックス投資家はけしからん!」というわけです。
これについては、至極ごもっともなご指摘であり、インデックス投資家としてはゴメンナサイと言うしかなさそうです。

(3)インデックスファンドは赤字で他の事業から「補填」してもらっていることを知る

インデックスファンドはただでさえ信託報酬が低く利幅が少ないのに、日本ではまだ市場規模も小さい(リテール向けは)ため、運用会社としてはまだ赤字事業であると思われます(年金など機関投資家向けは別)。
その赤字を、他のアクティブファンドの利益や機関投資家向け投資顧問料などから補填しているというのが実態ではないでしょうか。
個人のインデックス投資家としては、高いコストを支払うアクティブ投資家や大規模な投資家に支えられて、低コストな運用を享受しているという面があるのです。


以上、3つのポイントを頭に入れておけば、いたずらに「インデックス投資最強!」とばかりに他の投資家を執拗に攻撃するのは得策ではないことが分かると思います。
もちろん、インデックス投資家も、多くの場合積み立て投資により市場に資金を供給している(特に誰も買いたがらない下げ相場の時にも)わけだし、リスクもそれなりに取っています。
アクティブ投資家を含む市場全体にとって役に立っている面もあるのですから、必要以上に萎縮する必要はないとは思います。

ただ、無用な争いをしかけ「狂信的なインデックス主義者」というレッテルを貼られたりしないよう、節度ある振る舞いをして、うまく共存共栄できたらいいなと思います。
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Posted by水瀬ケンイチ