日本株式ETFで震災復興を応援、でもその前にちょっと点検
水瀬ケンイチ
東日本大震災復興の応援で、日本株式へ投資しようという個人投資家の動きがあるようです。
とても素晴らしいことだと思います。
でも、個別銘柄は怖いとか、どの銘柄を選択すればよいか分からないという方もいらっしゃると思います。そういうかたは、ETFに投資するというのもひとつの方法です。
しかしながら、ETFには一部、市場価格(取引される価格)と基準価額(資産価値を表す価格)に乖離があるものがあります。
誰だって、割高な価格で買ったり、割安な価格で売ったりするのは避けたいはずです。
そこで、先週末(2011年3月18日)の時点で、全ての日本株式ETFの乖離率を調べてみました。
結論から申しあげると、ほとんどのETF銘柄は売買に問題ないレベルと思われるものの、ごく少数ですが異常値と思われるETFがありました。
以下にデータで示します。(データ出典:モーニングスター)
とても素晴らしいことだと思います。
でも、個別銘柄は怖いとか、どの銘柄を選択すればよいか分からないという方もいらっしゃると思います。そういうかたは、ETFに投資するというのもひとつの方法です。
しかしながら、ETFには一部、市場価格(取引される価格)と基準価額(資産価値を表す価格)に乖離があるものがあります。
誰だって、割高な価格で買ったり、割安な価格で売ったりするのは避けたいはずです。
そこで、先週末(2011年3月18日)の時点で、全ての日本株式ETFの乖離率を調べてみました。
結論から申しあげると、ほとんどのETF銘柄は売買に問題ないレベルと思われるものの、ごく少数ですが異常値と思われるETFがありました。
以下にデータで示します。(データ出典:モーニングスター)
<TOPIX・日経225連動ETFの市場価格と基準価額の乖離率>
まずは、日本株投資の基本であるTOPIXと日経225連動のETFについてです。
いずれも、市場価格と基準価額の乖離率は、プラスマイナス0.1~0.3%程度です。
この程度の乖離率であれば、投資するのに特に問題は内容に思います。
さすがにメジャーなETF銘柄は安定感があります。
<日本株業種別ETFの市場価格と基準価額の乖離率>
次に、業種別ETFです。
業種別ETFは、取扱高が少ない銘柄も多く、乖離が結構あります。
それでも、ほとんどの銘柄はプラスマイナス1~2%以内の乖離です。
しかし、「野村 建設資材ETF」(1619)はプラス9.26%と、大きなプレミアムが付いているようです。
日別の乖離率の推移を見てみると、2011年3月15日までは乖離率はプラスマイナス1%以内でしたが、3月17日に一気にプラス9%以上に跳ね上がっています。
理由は分かりませんが、跳ね上がったタイミングを見ると、東日本大震災の復興需要を見越した買いが集まっているのかもしれません。
明らかに割高なので、すぐに投資するのは避けた方がいいかもしれません。
他には、「野村 不動産ETF」(1633)の乖離率が、プラス4.31%とやや高くなっています。
日別の乖離率の推移を見てみると、3月17日まではプラスマイナス0.5%以内だったのが、3月18日に一気に4%以上に上がっています。
これも東日本大震災の影響があるのかもしれません。注意してください。
<日本株その他ETFの市場価格と基準価額の乖離率>
最後に、その他のETFです。
このカテゴリーには、サイズ型とかテーマ型とかREIT型といった様々なETFがラインナップされています。
ほとんどのETFの乖離率がプラスマイナス1%以内です。
しかし、1銘柄だけぶっちぎりで異常値を示している銘柄があります。
「日経300上場投信」(1319)です。実にマイナス20.92%という乖離率を示しています。
これはとんでもないディスカウントです。
「こんな割安ETFは滅多にないから買ってみよう!」と思われるかたがいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
過去の乖離率の推移を見ると、1年以上ずっとこのレベルの乖離が続いているのです。
ETFの乖離率が何かの要因で一時的に上がることはよくあることだと思いますが、20%内外というレベルの大きな乖離が1年以上続いているのは、何かが決定的におかしいのではないかと疑った方がいいかもしれません。
運用会社である野村アセットマネジメントのWEBサイトで調べてみると、ベンチマークである日経300と基準価額の乖離はほとんどなく、ETFの運用自体に大きな問題は見つけられませんでした。
でも、市場価格だけがずっと低いままということは、需給の問題なのかもしれませんが、出来高も多くはないもののそれなりにはあり(もっと少ない銘柄はいくらでもある)、何が問題なのかよく分かりませんでした(力不足で申し訳ない…)。
日経新聞社のWEBサイトによると、『日経株価指数300(日経300)は、1993年10月に「より少ない銘柄で市場の実勢を的確に表す」ことを目的に開発、公表を開始した指数です。(中略)構成銘柄は、東京証券取引所第1部上場銘柄から、流動性、業績などを考慮の上、市場代表性、業種代表性に基づいて選定しています』とのことです。
東証1部の実勢に連動させるという目的なら、オーソドックスなTOPIX連動型ETFの方が安心ではないかと、個人的には思います。
もちろん、このデイスカウントがいつか適正値に修正され、超過リターンが得られる可能性もあります。
(「ウォール街のランダム・ウォーカー」で紹介されていた「マルキール・ステップ」のように)
もしかしたら、千載一遇のチャンスなのかもしれませんが、いちインデックス投資家としてはそういう価格の鞘取りみたいな売買はあまりオススメしません。
以上、ETFで日本を応援しようという高い志を持ったかたの、何かのお役に立てば幸いです。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。
コード | ETF名 | 乖離率 |
1305 | 上場トピックス | -0.20% |
1306 | TOPIX上場 | -0.15% |
1308 | 日興 上場TOPIX | -0.35% |
1320 | 上場225 | 0.04% |
1321 | 225上場 | -0.07% |
1329 | 日経225 | 0.02% |
1330 | 上場225 | 0.00% |
1346 | MAXIS 日経225 | 0.02% |
1348 | MAXIS トピックス | 0.01% |
まずは、日本株投資の基本であるTOPIXと日経225連動のETFについてです。
いずれも、市場価格と基準価額の乖離率は、プラスマイナス0.1~0.3%程度です。
この程度の乖離率であれば、投資するのに特に問題は内容に思います。
さすがにメジャーなETF銘柄は安定感があります。
<日本株業種別ETFの市場価格と基準価額の乖離率>
コード | ETF名 | 乖離率 |
1610 | 上場投信電機 | -0.75% |
1612 | 上場投信銀行 | -1.07% |
1613 | 電気上場投信 | -0.96% |
1615 | 銀行上場投信 | -1.39% |
1617 | 野村 食品ETF | -0.77% |
1618 | 野村 エネ資源ETF | 0.82% |
1619 | 野村 建設資材ETF | 9.26% |
1620 | 野村 素材化学ETF | -1.63% |
1621 | 野村 医薬品ETF | 0.01% |
1622 | 野村 自動車ETF | 0.11% |
1623 | 野村 鉄鋼非鉄ETF | -0.28% |
1624 | 野村 機械ETF | -0.17% |
1625 | 野村 電機精密ETF | 0.16% |
1626 | 野村 情通サ他ETF | -0.53% |
1627 | 野村 電力ガスETF | -0.61% |
1628 | 野村 運輸物流ETF | 0.07% |
1629 | 野村 商社卸売ETF | -0.76% |
1630 | 野村 小売ETF | 0.24% |
1631 | 野村 銀行ETF | 0.03% |
1632 | 野村 金融ETF | -0.50% |
1633 | 野村 不動産ETF | 4.31% |
1634 | 大和 食品ETF | 0.02% |
1635 | 大和 エネ資源ETF | -0.38% |
1636 | 大和 建設資材ETF | 0.71% |
1637 | 大和 素材化学ETF | -1.30% |
1638 | 大和 医薬品ETF | -0.57% |
1639 | 大和 自動車輸送機ETF | 0.43% |
1640 | 大和 鉄鋼非鉄ETF | -0.17% |
1641 | 大和 機械ETF | -1.00% |
1642 | 大和 電機精密ETF | -0.32% |
1643 | 大和 情通サ他ETF | -1.74% |
1644 | 大和 電力ガスETF | -0.28% |
1645 | 大和 運輸物流ETF | 0.00% |
1646 | 大和 商社・卸売ETF | 0.07% |
1647 | 大和 小売ETF | 0.24% |
1648 | 大和 銀行ETF | -0.03% |
1649 | 大和 金融ETF | -2.13% |
1650 | 大和 不動産ETF | -0.52% |
次に、業種別ETFです。
業種別ETFは、取扱高が少ない銘柄も多く、乖離が結構あります。
それでも、ほとんどの銘柄はプラスマイナス1~2%以内の乖離です。
しかし、「野村 建設資材ETF」(1619)はプラス9.26%と、大きなプレミアムが付いているようです。
日別の乖離率の推移を見てみると、2011年3月15日までは乖離率はプラスマイナス1%以内でしたが、3月17日に一気にプラス9%以上に跳ね上がっています。
理由は分かりませんが、跳ね上がったタイミングを見ると、東日本大震災の復興需要を見越した買いが集まっているのかもしれません。
明らかに割高なので、すぐに投資するのは避けた方がいいかもしれません。
他には、「野村 不動産ETF」(1633)の乖離率が、プラス4.31%とやや高くなっています。
日別の乖離率の推移を見てみると、3月17日まではプラスマイナス0.5%以内だったのが、3月18日に一気に4%以上に上がっています。
これも東日本大震災の影響があるのかもしれません。注意してください。
<日本株その他ETFの市場価格と基準価額の乖離率>
コード | ETF名 | 乖離率 |
1310 | 上場コア30 | 1.00% |
1311 | コア30上場投信 | -0.37% |
1312 | 野村 ラッセル上投 | 0.60% |
1314 | 日興 上場新興 | -0.01% |
1316 | 日興 上場大型 | -0.88% |
1317 | 日興 上場中型 | -0.55% |
1318 | 日興 上場小型 | 0.42% |
1319 | 日経300上場投信 | -20.92% |
1343 | 野村 東証REITETF | -0.77% |
1344 | MAXIS TOPIX Core30 | 0.00% |
1345 | 日興 上場Jリート隔月 | -0.48% |
1347 | 日興 上場グリチ35 | 0.15% |
1544 | 日興 上場MSCIJ株 | -0.80% |
1551 | SAM JASDAQ-TOP20ETF | -0.88% |
1553 | MAXIS S&P東海ETF | 0.44% |
1556 | 日興 上場中国関株50 | -0.36% |
1670 | MAXIS S&P三菱系 | 0.06% |
1698 | 日興 上場高配当 | 0.70% |
最後に、その他のETFです。
このカテゴリーには、サイズ型とかテーマ型とかREIT型といった様々なETFがラインナップされています。
ほとんどのETFの乖離率がプラスマイナス1%以内です。
しかし、1銘柄だけぶっちぎりで異常値を示している銘柄があります。
「日経300上場投信」(1319)です。実にマイナス20.92%という乖離率を示しています。
これはとんでもないディスカウントです。
「こんな割安ETFは滅多にないから買ってみよう!」と思われるかたがいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
過去の乖離率の推移を見ると、1年以上ずっとこのレベルの乖離が続いているのです。
ETFの乖離率が何かの要因で一時的に上がることはよくあることだと思いますが、20%内外というレベルの大きな乖離が1年以上続いているのは、何かが決定的におかしいのではないかと疑った方がいいかもしれません。
運用会社である野村アセットマネジメントのWEBサイトで調べてみると、ベンチマークである日経300と基準価額の乖離はほとんどなく、ETFの運用自体に大きな問題は見つけられませんでした。
でも、市場価格だけがずっと低いままということは、需給の問題なのかもしれませんが、出来高も多くはないもののそれなりにはあり(もっと少ない銘柄はいくらでもある)、何が問題なのかよく分かりませんでした(力不足で申し訳ない…)。
日経新聞社のWEBサイトによると、『日経株価指数300(日経300)は、1993年10月に「より少ない銘柄で市場の実勢を的確に表す」ことを目的に開発、公表を開始した指数です。(中略)構成銘柄は、東京証券取引所第1部上場銘柄から、流動性、業績などを考慮の上、市場代表性、業種代表性に基づいて選定しています』とのことです。
東証1部の実勢に連動させるという目的なら、オーソドックスなTOPIX連動型ETFの方が安心ではないかと、個人的には思います。
もちろん、このデイスカウントがいつか適正値に修正され、超過リターンが得られる可能性もあります。
(「ウォール街のランダム・ウォーカー」で紹介されていた「マルキール・ステップ」のように)
もしかしたら、千載一遇のチャンスなのかもしれませんが、いちインデックス投資家としてはそういう価格の鞘取りみたいな売買はあまりオススメしません。
以上、ETFで日本を応援しようという高い志を持ったかたの、何かのお役に立てば幸いです。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。
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