東日本大震災でわかった「生活防衛資金」の必要額と最適商品
水瀬ケンイチ
投資に当たっては、投資資金とは別に、リストラや長期入院など非常時のための「生活防衛資金」を確保しておくことが必要だということを、当ブログではしつこいくらいに言ってきました。
マネー誌などに取材された時にも、誌面にはポートフォリオやファンド名などだけでなく、生活防衛資金を別途確保しておくことを小さい文字でもいいから必ず記載してもらうように毎回無理を言ってお願いしてきました。
山崎元氏との共著「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」でも生活防衛資金の必要性について書きました。
そして、生活防衛資金は「生活費の2年分」を預貯金で確保することが望ましいと言ってきました。
これは、「投資戦略の発想法―ゆっくり確実に金持ちになろう」(木村剛著)で述べられていた、「世の中で何が起きようが、会社が倒産しようが、クビになろうが、絶対に自分と家族の生活を守るという一点をベースにして、投資戦略を考えるべきなのです」という考え方に強く賛同するとともに、「職を失うというリスクに対しては、最低2年はみておきたい」という目安を妥当だと考えたため、自分の投資戦略として採用したものです。
今回の東日本大震災の状況を見て、改めて、生活防衛資金の必要性を再認識しました。
そして、更に二つのことが見えてきたように思います。
マネー誌などに取材された時にも、誌面にはポートフォリオやファンド名などだけでなく、生活防衛資金を別途確保しておくことを小さい文字でもいいから必ず記載してもらうように毎回無理を言ってお願いしてきました。
山崎元氏との共著「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」でも生活防衛資金の必要性について書きました。
そして、生活防衛資金は「生活費の2年分」を預貯金で確保することが望ましいと言ってきました。
これは、「投資戦略の発想法―ゆっくり確実に金持ちになろう」(木村剛著)で述べられていた、「世の中で何が起きようが、会社が倒産しようが、クビになろうが、絶対に自分と家族の生活を守るという一点をベースにして、投資戦略を考えるべきなのです」という考え方に強く賛同するとともに、「職を失うというリスクに対しては、最低2年はみておきたい」という目安を妥当だと考えたため、自分の投資戦略として採用したものです。
今回の東日本大震災の状況を見て、改めて、生活防衛資金の必要性を再認識しました。
そして、更に二つのことが見えてきたように思います。
一つ目は、『どのくらいの金額が適切か?』という問題です。
これにはかねてよりいろいろな意見がありました。給料の3か月分でよいとするものから、生活費の半年分、1年分、そして2年分あたりまでがよく言われる目安の範囲ではないかと思います。
これは、やはり2年分は必要だったと思います。
上記「投資戦略の発想法」では、失職のリスクに対して2年という目安が示されていましたが、被災というリスクに対しては2年分でも足らないかもしれません。
今回の震災を考えると、避難所生活から生活を再建するには、食料の確保に始まり、けがの治療、居住地の確保、仕事への復帰など、いろいろな段階を踏む必要があり、1年を超える長期化を余儀なくされる場合も容易に想像できます。
もちろん、国や自治体などのサポートもあるでしょうし、状況は人それぞれでしょうから、一概には言えないとは思いますが、もし自分だったらと考えると、自分と家族の生活を立て直すのに、少なくとも給料の3か月分や半年分では少々心もとないと感じます。
また、少な目の生活防衛資金でよいという意見には、「いざという時は投資商品を躊躇なく売却して生活費に充てれば済むこと」という理由が付いている場合があります。
これはリストラや長期入院など個人的問題には有効だと思います。
でも、今回のような大災害の場合、着の身着のまま避難所に逃げてきた方々にとって、証券会社の株や投資信託を売却してその資金を銀行口座に送金してそれを引き出すというのは、通信などの環境面から現実的ではないことが分かります。
ネット証券では被災地の顧客に対して「可能な限りの便宜を図る」という表明をしているところが多いです。
しかし、電話がつながらないことには、便宜の図りようがありません。
仮に電話がつながったとしても、混乱の中、限られた本人性の確認手段で、何十万円や何百万円という投資資金の売却や資金移動をどこまで対応してもらえるか未知数です。
二つ目は、『どんな金融商品で確保しておくか?』という問題です。
これにもいろいろ意見があり、預貯金、定期預金、証券会社のMRF、MMF、日本債券投信、個人向け国債など、低リスク(ボラティリティ)で流動性が高いものがよいだろうとされていました。
これも、やはり預貯金がいちばんよさそうだということが分かりました。
もしくは半分を預貯金へ、残りをその他の低リスク商品に入れておくのがよさそうです。
一つ目の最後にも書きましたが、証券会社に売却注文を出し、銀行口座に送金するような金融商品は、着の身着のまま避難してきたような方々には、非常時の備えにならないということが分かりました。
一方で、今回の震災では、いくつもの銀行で通帳がなくても身分証明ができれば一時的にある程度の引き出しができる措置が取られていました。
例えば、郵貯銀行と郵便局では、通帳や印章、カード等をなくした被災地の顧客に対し貯金等の非常取扱い(通帳・証書等や印章をなくした顧客に対する、ひとり20万円を限度とした通常貯金の払戻しなど)を実施しています。(出典:ゆうちょ銀行WEBサイト)
また、福島の第一地方銀行8行では「代理現金払戻し」を行なっています。これも、通帳や印章をなくした顧客に対して、ひとり10万円まで、当座預金、普通預金(カードローン口座含む)、貯蓄預金、納税準備預金、定期預金、定期積金、通知預金が対象になっています。(出典:東邦銀行WEBサイト)
いずれにしても、本人性確認に必要な物が揃わない個人が緊急に引き出せるのは、普通預金、もしくは定期預金あたりまでが対象のようです。
生活防衛資金には、利便性と投資効率のトレードオフ関係があります。
大きなお金を、すずめの涙程度しか利息の付かない預貯金に眠らせておくことはもったいないという意見も分かります。
どこまで備えるかは人によって考え方が違うのは当然だと思いますが、史上最大の震災を目の当たりにして、もしも自分が同じように被災していたらと想定して考えてみた結果、あらためて安全サイドで備えたいと思いました。
<参考記事>
2010/07/24 生活防衛資金が役立った例
P.S
被災地ではまだ苦しんでいる方々がたくさんいるのにお金の話ばかりで不謹慎だ、というお叱りがあるかもしれません。ごもっともだと思います。震災に対する当ブログのスタンスは以下にまとめていますので、よろしければご覧いただけたら幸いです。
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-1682.html
これにはかねてよりいろいろな意見がありました。給料の3か月分でよいとするものから、生活費の半年分、1年分、そして2年分あたりまでがよく言われる目安の範囲ではないかと思います。
これは、やはり2年分は必要だったと思います。
上記「投資戦略の発想法」では、失職のリスクに対して2年という目安が示されていましたが、被災というリスクに対しては2年分でも足らないかもしれません。
今回の震災を考えると、避難所生活から生活を再建するには、食料の確保に始まり、けがの治療、居住地の確保、仕事への復帰など、いろいろな段階を踏む必要があり、1年を超える長期化を余儀なくされる場合も容易に想像できます。
もちろん、国や自治体などのサポートもあるでしょうし、状況は人それぞれでしょうから、一概には言えないとは思いますが、もし自分だったらと考えると、自分と家族の生活を立て直すのに、少なくとも給料の3か月分や半年分では少々心もとないと感じます。
また、少な目の生活防衛資金でよいという意見には、「いざという時は投資商品を躊躇なく売却して生活費に充てれば済むこと」という理由が付いている場合があります。
これはリストラや長期入院など個人的問題には有効だと思います。
でも、今回のような大災害の場合、着の身着のまま避難所に逃げてきた方々にとって、証券会社の株や投資信託を売却してその資金を銀行口座に送金してそれを引き出すというのは、通信などの環境面から現実的ではないことが分かります。
ネット証券では被災地の顧客に対して「可能な限りの便宜を図る」という表明をしているところが多いです。
しかし、電話がつながらないことには、便宜の図りようがありません。
仮に電話がつながったとしても、混乱の中、限られた本人性の確認手段で、何十万円や何百万円という投資資金の売却や資金移動をどこまで対応してもらえるか未知数です。
二つ目は、『どんな金融商品で確保しておくか?』という問題です。
これにもいろいろ意見があり、預貯金、定期預金、証券会社のMRF、MMF、日本債券投信、個人向け国債など、低リスク(ボラティリティ)で流動性が高いものがよいだろうとされていました。
これも、やはり預貯金がいちばんよさそうだということが分かりました。
もしくは半分を預貯金へ、残りをその他の低リスク商品に入れておくのがよさそうです。
一つ目の最後にも書きましたが、証券会社に売却注文を出し、銀行口座に送金するような金融商品は、着の身着のまま避難してきたような方々には、非常時の備えにならないということが分かりました。
一方で、今回の震災では、いくつもの銀行で通帳がなくても身分証明ができれば一時的にある程度の引き出しができる措置が取られていました。
例えば、郵貯銀行と郵便局では、通帳や印章、カード等をなくした被災地の顧客に対し貯金等の非常取扱い(通帳・証書等や印章をなくした顧客に対する、ひとり20万円を限度とした通常貯金の払戻しなど)を実施しています。(出典:ゆうちょ銀行WEBサイト)
また、福島の第一地方銀行8行では「代理現金払戻し」を行なっています。これも、通帳や印章をなくした顧客に対して、ひとり10万円まで、当座預金、普通預金(カードローン口座含む)、貯蓄預金、納税準備預金、定期預金、定期積金、通知預金が対象になっています。(出典:東邦銀行WEBサイト)
いずれにしても、本人性確認に必要な物が揃わない個人が緊急に引き出せるのは、普通預金、もしくは定期預金あたりまでが対象のようです。
生活防衛資金には、利便性と投資効率のトレードオフ関係があります。
大きなお金を、すずめの涙程度しか利息の付かない預貯金に眠らせておくことはもったいないという意見も分かります。
どこまで備えるかは人によって考え方が違うのは当然だと思いますが、史上最大の震災を目の当たりにして、もしも自分が同じように被災していたらと想定して考えてみた結果、あらためて安全サイドで備えたいと思いました。
<参考記事>
2010/07/24 生活防衛資金が役立った例
P.S
被災地ではまだ苦しんでいる方々がたくさんいるのにお金の話ばかりで不謹慎だ、というお叱りがあるかもしれません。ごもっともだと思います。震災に対する当ブログのスタンスは以下にまとめていますので、よろしければご覧いただけたら幸いです。
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-1682.html
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