リタイア後の資産運用法について その2

水瀬ケンイチ

前回の記事「リタイア後の資産運用法について その1」の続きです。

日経新聞に掲載されていたリタイア資金の運用法について、思うところを備忘録代わりに書きました。
記事では、「総資産の利回り3%を目指す資産配分」というポートフォリオが2つ提案されていました。

まずは、深野康彦氏の提案は以下のとおり。

深野康彦氏の提案
(日経新聞2011年6月6日朝刊17面より筆者がmyINDEXを使って作成)

安全資産(運用しないお金) 45%
日本株 10%
先進国株 10%
新興国株 8%
日本債券10%
外国債券14%
金 3%

なかなか手堅いアセットアロケーションだと思います。
リタイア後の運用の参考にさせていただきます。
続いて、神戸孝氏の提案は以下のとおり。(グラフが少し切れてしまっていて申し訳ありません…)
神戸孝氏の提案
(日経新聞2011年6月6日朝刊17面より筆者がmyINDEXを使って作成)

安全資産(運用しないお金) 50%
日本株 5%
先進国株 5%
新興国株 5%
先進国債券 25%
先進国REIT 5%
コモディティ 5%

幅広いアセットクラスに分散されていますが、自分ではこういうアロケーションは組まないなという感じです。
先進国債券の比率が妙に高いのが気になります。
日本債券と外国債券の期待リターンは同じで、リスクは外国債券の方が高い……というお話はブログで散々議論してきたのでここでは割愛させていただきます。
この辺の好みは人それぞれあると思います。

2つの提案ともに、安全資産(運用しないお金)を5割近く設定しています。
期待リターンは3%ということです。
似たようなポートフォリオなので、リタイア後の運用はこういうイメージなんでしょうね。
いかにも保守的なポートフォリオに見えるかたが多いのではないででしょうか。

しかし、この日経記事もそうですが、マネー誌などでよく見かけるアセットアロケーション例は、どうしていつも期待リターンだけ書いてリスク(標準偏差)を書かないのでしょう。
この記事だけ見ると、このようなアセットアロケーションを組めば、毎年3%前後の利回りが安定して得られるようなイメージを読者が持ってしまいかねません。

あくまでリターンは正規分布するという仮定のうえではありますが、リスクは標準偏差として数字で表すことができます。
絶対的な尺度ではありませんが、損得の可能性を見積もる「目安」にはなります。
日経の記事には書いていないので、私が勝手に補足しておきます。
データの出所は前出のmyINDEX、各アセットクラスの運用商品はインデックス運用されると仮定します。

深野康彦氏の提案ポートフォリオのリスク(標準偏差)は、6.0%です。
期待リターン=3.0%
標準偏差=6.0%
ということなので、1年間運用すると、約68%の確率でリターンが+9%から-3%の間に収まり、約95%の確率で+15%から-9%の間に収まることが予想されます。

神戸孝氏の提案ポートフォリオのリスク(標準偏差)は、6.1%です。
期待リターン=3.0%
標準偏差=6.1%
ということなので、1年間運用すると、約68%の確率でリターンが+9.1%から-3.1%の間に収まり、約95%の確率で+15.2%から-9.2%の間に収まることが予想されます。

あくまで「目安」ではありますが、「利回り3%を目指す資産配分」という語感とは、かなりイメージが違うのではないでしょうか。
もしかしたら、「リタイア後は幸運な場合でもプラス9%はいらないのでマイナスになる可能性をもっと下げたい」とお感じになるかたもいらっしゃるかと思います。そういう場合は、更にリスク(標準偏差)を下げたアセットアロケーションに組み直した方がよいと思います。
ちなみに、私自身はリタイア後は現金および日本債券の比率を7割程度まで高めようと考えています。

というわけで、日経新聞の記事をネタにリタイア後の運用法について、思うところを書いてみました。
何かのご参考になれば幸いです。

※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。

(おわり)
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Posted by水瀬ケンイチ