チャールズ・エリス氏セミナーレポート(その4)
水瀬ケンイチ
「チャールズ・エリス氏セミナーレポート(その1)」
「チャールズ・エリス氏セミナーレポート(その2)」
「チャールズ・エリス氏セミナーレポート(その3)」
の続きです。今回が最後のレポートです。
繰り返しになりますが、内容については、水瀬の主観による省略やまとめが含まれますことをご了承ください。
講演のあとは質疑応答がありました。
セミナー応募の際にあわせて募集していた質問の中から代表的なものを司会のかたが質問し、それにエリス氏が答えるという形でした。
とはいっても、エリス氏は事前に質問を聞かされていない感じでしたが。
Q1.円高や、世界各国の相関が高まっているが、今後も日本人にとって国際分散投資は有効か?
A1.難しい2つの問いが含まれていると思う。
1つめは、分散の重要性だがこれはYesだ。分散は素晴らしい強みだ。ニュージーランド・スイス・オランダ・スペイン・カナダ等ほとんどの国では、投資家は自国に集中して投資している。しかしパフォーマンスにはプラスではない。より広く分散すべきで、たとえ特定の国や地域がよいという思いがあっても、特定の資産クラスに集中させるのはよくない。
2つめは、各国の通貨がどうなるかという問いが含まれていると思う。真に効率的な市場があるとすればそれは為替市場だ。今は円は上昇しているかもしれないが反転するかもしれない。為替予測はプロにも無理。ベストな選択は円だという考えは一見分かりやすいが、為替の賭けは大抵うまくいかないものだ。
(水瀬コメント)
こういう質問、増えましたね。私もエリス氏の主張に賛成です。
全アセットクラスの相関係数が1に揃わない限り、分散効果は存在しますし、相関係数は時間の経過と共に変動するので、仮に1に揃ったとしてもそれが続くことはあり得ないでしょう。
分散効果というのは、株式などひとつの銘柄を保有するよりも複数銘柄を組み合わせることで期待リターンをあまり下げずにリスクを下げられるというものです。分散投資をすればパフォーマンスがマイナスにならないものだと質問者が思っていたなら、それはそもそも過剰期待です。
為替予測は不能というのも、私と同意見です。
Q2.世界経済全体に不安を感じている。アセットアロケーションを保守的に変更した方がよいか?
A2.どのくらい保守的にしたいのかが知りたい。既に保守的なら変える必要はない。
世界経済は、過剰借り入れ、過剰消費から回復する必要があり、5~15年くらいかかるかもしれない。その間、期待リターンも低くなるだろう。サプライズがあるとすれば、ネガティブなものになるかもしれない。
(水瀬コメント)
エリス氏は、今後5~15年くらいは低リターンになるという悲観的な予測をしているようです。
そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。
さすがのエリス氏でも、将来の相場動向が分かるわけではないでしょうから。
セミナーレポート(その3)にあったように、自分自身の「不確実性に対する許容度」と相談するということではないかと思います。
「チャールズ・エリス氏セミナーレポート(その2)」
「チャールズ・エリス氏セミナーレポート(その3)」
の続きです。今回が最後のレポートです。
繰り返しになりますが、内容については、水瀬の主観による省略やまとめが含まれますことをご了承ください。
講演のあとは質疑応答がありました。
セミナー応募の際にあわせて募集していた質問の中から代表的なものを司会のかたが質問し、それにエリス氏が答えるという形でした。
とはいっても、エリス氏は事前に質問を聞かされていない感じでしたが。
Q1.円高や、世界各国の相関が高まっているが、今後も日本人にとって国際分散投資は有効か?
A1.難しい2つの問いが含まれていると思う。
1つめは、分散の重要性だがこれはYesだ。分散は素晴らしい強みだ。ニュージーランド・スイス・オランダ・スペイン・カナダ等ほとんどの国では、投資家は自国に集中して投資している。しかしパフォーマンスにはプラスではない。より広く分散すべきで、たとえ特定の国や地域がよいという思いがあっても、特定の資産クラスに集中させるのはよくない。
2つめは、各国の通貨がどうなるかという問いが含まれていると思う。真に効率的な市場があるとすればそれは為替市場だ。今は円は上昇しているかもしれないが反転するかもしれない。為替予測はプロにも無理。ベストな選択は円だという考えは一見分かりやすいが、為替の賭けは大抵うまくいかないものだ。
(水瀬コメント)
こういう質問、増えましたね。私もエリス氏の主張に賛成です。
全アセットクラスの相関係数が1に揃わない限り、分散効果は存在しますし、相関係数は時間の経過と共に変動するので、仮に1に揃ったとしてもそれが続くことはあり得ないでしょう。
分散効果というのは、株式などひとつの銘柄を保有するよりも複数銘柄を組み合わせることで期待リターンをあまり下げずにリスクを下げられるというものです。分散投資をすればパフォーマンスがマイナスにならないものだと質問者が思っていたなら、それはそもそも過剰期待です。
為替予測は不能というのも、私と同意見です。
Q2.世界経済全体に不安を感じている。アセットアロケーションを保守的に変更した方がよいか?
A2.どのくらい保守的にしたいのかが知りたい。既に保守的なら変える必要はない。
世界経済は、過剰借り入れ、過剰消費から回復する必要があり、5~15年くらいかかるかもしれない。その間、期待リターンも低くなるだろう。サプライズがあるとすれば、ネガティブなものになるかもしれない。
(水瀬コメント)
エリス氏は、今後5~15年くらいは低リターンになるという悲観的な予測をしているようです。
そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。
さすがのエリス氏でも、将来の相場動向が分かるわけではないでしょうから。
セミナーレポート(その3)にあったように、自分自身の「不確実性に対する許容度」と相談するということではないかと思います。
Q3.初心者です。まずは何から始めればよいでしょうか?
A3.もしあなたが若ければ、残りの人生は長い。50~70年の期間投資できるので、株式に集中するべきだ。
もし50~60代であれば、慎重になるべきだ。投資の目的をよく考え、平常時は、株式:債券=50:50くらいでいいのではないか。
しかし、世界的な金融緩和で超低金利の現在は、自然な状態ではない。債券、特に長期債を買うのはリスクが高い。難しいところだが高配当の株式がよいのではないか。
(水瀬コメント)
エリス氏の回答は、まずアセットアロケーションの話でした。セミナーレポート(その2)にも重要なのは「レベルA:長期の目標とアセットミックス」とあったのでそのとおりの話だと思いました。
エリス氏は、現在は平常時ではないので、債券投資のリスクも高いと言っています。
ここは非常に悩ましいです。
エリス氏は消去法的に高配当株式をすすめていましたが、高配当とはいえ株式なのでボラティリティは債券より全然高いです。
個人的には、短期債に投資するMMFと変動金利債である個人向け国債「変動10」に投資することで、将来の金利上昇にも備えているつもりですが、うまくいくかはわかりません。
Q4.今後、何に注目したらよいか?
A4.将来の経済動向の見通しについて、エコノミストたちと話す時には、いっぱいいっぱい予測しろと言っている。そうすればどれか当たるでしょ?と(会場笑)
たしかに、困難が様々な国に存在しているが、有能な人材がなんとかしようとしていることと、国際協力的な調整がなされている。重大な問題に目を向け解決しようとしている。もし、これらがなければ、もっと深刻な危機に見舞われていたかもしれない。
自分たちが作り出した混乱を解決するのには時間がかかる。生きてはいるが、長期のリハビリが必要な状態である。
しかし、幸運なことにスキルある人たちが仕事をしている。問題を徐々に解決し、数年以内によりよくしてくれるだろう。
次の質問で最後。ぜひ楽しい気分になる質問をよろしく!
Q5.最もおすすめな商品は?
A5.やはり、インデックスファンド、グローバルに分散できるインデックスファンドがいい。
特にバンガードのインデックスファンドは、投資家自身が株主になる構造になっており、コストもバリューもベスト。
また、個人的にはバークシャー・ハサウェイにも投資してきた。ずっと保有していたい銘柄だ。1銘柄で様々な銘柄に分散投資できる異例な銘柄だからだ。
(水瀬コメント)
やっぱり、バンガードのインデックスファンドがいいって言いますよね、そりゃ(笑)
エリス氏がバークシャー・ハサウェイ(BRKa/BRKb)に投資しているとはちょっと意外でした。
バークシャー・ハサウェイは、ご存知「オマハの賢人」ウォーレン・バフェット氏が率いる世界最大の投資持株会社です。
一種のアクティブファンドと考えることもできます。コア&サテライト戦略ということかもしれません。
そういえば、2年前に同じ会場で行なわれたバートン・マルキール来日セミナーでも、マルキール氏はコア&サテライト戦略でアクティブファンドにも投資していると言っていました。
ちなみに、私もアクティブファンドにも投資しています。
質疑応答は以上になります。
最後にエリス氏は、「今まで6~70回日本に来ているが、今回がベストだったよ」と言い残して会場を去りました。
何十回も読んだ本の著者の話を、目の前で聞くことができて、よい刺激を受けましたし、とてもうれしかったです。
この後、第2部として、モーニングスター朝倉氏・ファイナンシャルジャーナリスト竹川氏・セゾン投信中野氏・バンガード加藤氏によりパネルデスカッションがありましたが、そこは他のブロガーさんにお任せしたいと思います。
ひとことだけ、中野氏の熱いメッセージには自然に涙がこぼれてしまいました。不覚(笑)
私のレポートは以上になりますが、実は前日にも青山学院大学でエリス氏のセミナーがあり、そこに参加された相互リンクブロガーのイーノ・ジュンイチさんがエリス氏と直接話をされたそうです。
そこでイーノさんが個人投資家のコミュニティとして「インデックス投資ナイト」を運営していることを話したところ、「それはすばらしいですね」と言って握手してくれたそうです(該当記事)。
エリス氏の頭に、日本のインデックス投資ナイトのことがインプットされたかもしれません。
イーノさんグッジョブ!(^^)b
それでは、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
いまいちまとまりのないレポートになってしまいましたが、皆さまの何かのお役に立てば幸いです。
(おわり)
<追伸> 2011/10/20
第2部の写真入りレポートがダイヤモンド・オンラインに掲載されていたので、ご紹介しておきます。ご興味があればご覧ください。
http://diamond.jp/articles/-/14469
A3.もしあなたが若ければ、残りの人生は長い。50~70年の期間投資できるので、株式に集中するべきだ。
もし50~60代であれば、慎重になるべきだ。投資の目的をよく考え、平常時は、株式:債券=50:50くらいでいいのではないか。
しかし、世界的な金融緩和で超低金利の現在は、自然な状態ではない。債券、特に長期債を買うのはリスクが高い。難しいところだが高配当の株式がよいのではないか。
(水瀬コメント)
エリス氏の回答は、まずアセットアロケーションの話でした。セミナーレポート(その2)にも重要なのは「レベルA:長期の目標とアセットミックス」とあったのでそのとおりの話だと思いました。
エリス氏は、現在は平常時ではないので、債券投資のリスクも高いと言っています。
ここは非常に悩ましいです。
エリス氏は消去法的に高配当株式をすすめていましたが、高配当とはいえ株式なのでボラティリティは債券より全然高いです。
個人的には、短期債に投資するMMFと変動金利債である個人向け国債「変動10」に投資することで、将来の金利上昇にも備えているつもりですが、うまくいくかはわかりません。
Q4.今後、何に注目したらよいか?
A4.将来の経済動向の見通しについて、エコノミストたちと話す時には、いっぱいいっぱい予測しろと言っている。そうすればどれか当たるでしょ?と(会場笑)
たしかに、困難が様々な国に存在しているが、有能な人材がなんとかしようとしていることと、国際協力的な調整がなされている。重大な問題に目を向け解決しようとしている。もし、これらがなければ、もっと深刻な危機に見舞われていたかもしれない。
自分たちが作り出した混乱を解決するのには時間がかかる。生きてはいるが、長期のリハビリが必要な状態である。
しかし、幸運なことにスキルある人たちが仕事をしている。問題を徐々に解決し、数年以内によりよくしてくれるだろう。
次の質問で最後。ぜひ楽しい気分になる質問をよろしく!
Q5.最もおすすめな商品は?
A5.やはり、インデックスファンド、グローバルに分散できるインデックスファンドがいい。
特にバンガードのインデックスファンドは、投資家自身が株主になる構造になっており、コストもバリューもベスト。
また、個人的にはバークシャー・ハサウェイにも投資してきた。ずっと保有していたい銘柄だ。1銘柄で様々な銘柄に分散投資できる異例な銘柄だからだ。
(水瀬コメント)
やっぱり、バンガードのインデックスファンドがいいって言いますよね、そりゃ(笑)
エリス氏がバークシャー・ハサウェイ(BRKa/BRKb)に投資しているとはちょっと意外でした。
バークシャー・ハサウェイは、ご存知「オマハの賢人」ウォーレン・バフェット氏が率いる世界最大の投資持株会社です。
一種のアクティブファンドと考えることもできます。コア&サテライト戦略ということかもしれません。
そういえば、2年前に同じ会場で行なわれたバートン・マルキール来日セミナーでも、マルキール氏はコア&サテライト戦略でアクティブファンドにも投資していると言っていました。
ちなみに、私もアクティブファンドにも投資しています。
質疑応答は以上になります。
最後にエリス氏は、「今まで6~70回日本に来ているが、今回がベストだったよ」と言い残して会場を去りました。
何十回も読んだ本の著者の話を、目の前で聞くことができて、よい刺激を受けましたし、とてもうれしかったです。
この後、第2部として、モーニングスター朝倉氏・ファイナンシャルジャーナリスト竹川氏・セゾン投信中野氏・バンガード加藤氏によりパネルデスカッションがありましたが、そこは他のブロガーさんにお任せしたいと思います。
ひとことだけ、中野氏の熱いメッセージには自然に涙がこぼれてしまいました。不覚(笑)
私のレポートは以上になりますが、実は前日にも青山学院大学でエリス氏のセミナーがあり、そこに参加された相互リンクブロガーのイーノ・ジュンイチさんがエリス氏と直接話をされたそうです。
そこでイーノさんが個人投資家のコミュニティとして「インデックス投資ナイト」を運営していることを話したところ、「それはすばらしいですね」と言って握手してくれたそうです(該当記事)。
エリス氏の頭に、日本のインデックス投資ナイトのことがインプットされたかもしれません。
イーノさんグッジョブ!(^^)b
それでは、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
いまいちまとまりのないレポートになってしまいましたが、皆さまの何かのお役に立てば幸いです。
(おわり)
<追伸> 2011/10/20
第2部の写真入りレポートがダイヤモンド・オンラインに掲載されていたので、ご紹介しておきます。ご興味があればご覧ください。
http://diamond.jp/articles/-/14469
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