【第6回】 インデックス投資に必要な投資信託は3000本以上ある中のたった4本、ズバリこれ!
水瀬ケンイチ

アセットアロケーション(資産配分)が決まったら、いよいよ商品選びになります。
インデックス投資をするための金融商品には、大きく分けて「インデックスファンド」「国内ETF」「海外ETF」の3種類があります。どれを使ってもインデックス投資はできるのですが、本連載が想定している読者は、投資に興味はあるけれど未経験、もしくは投資の初心者です(と編集K氏にきつく言われています…汗)。
私は、インデックス投資初心者のかたには、ズバリ、「インデックスファンド」をおすすめします。なぜなら、利便性が高く手間がかからない、言い換えれば、いちばん楽ちんなインデックス商品だからです。
■インデックスファンドってどんな商品?そもそも投資信託って何!?
そもそも、投資信託とは、多くの投資家から集めた小さな資金をひとつの大きな資金にまとめて、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。株と比較すると、小額から投資可能なうえに、さまざまな銘柄に分散投資できるというメリットがあります(分散投資の効果は第3回参照)。
この投資信託が、「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の二つに分類されます。
市場平均に連動することのみを目指して運用されるのが「インデックスファンド」、それに対して、より大きな投資収益(市場平均を上回る投資収益率)を目指して運用される「アクティブファンド」です。
この説明だけだとイメージ的に、「なんだ、インデックスファンドは儲からなさそうだな」という感じがするかもしれません。
ですが、連載第1回でもご説明したとおり、ウォール街の金融のプロでも市場平均(インデックス)にはなかなか勝てません。アクティブファンドのおよそ7割はインデックスに負けているというのが、知る人ぞ知る金融業界の常識です。
このことは、できれば利幅が大きい(=投資家からしたらコストが高い)アクティブファンドを売りたい金融業界にとって非常に不都合なので、インデックスファンドは意図的に個人投資家の目にあまり触れないような奥深い場所に置かれています。
それを本コラムでは、ぐいぐいと引っ張りあげてきます。
■国内に3000本以上ある投資信託。でも、インデックス投資に必要なのは4本だけ!?
日本に3000本以上ある投資信託の中で、インデックス投資に使う商品は、わずか4本です。
その4本とは、前回のコラムで作ったアセットアロケーション(資産配分)で決めた4つのアセットクラスの市場平均に連動するインデックスファンドです。
すなわち、「日本株式インデックス」「先進国株式インデックス」「新興国株式インデックス」「日本債券インデックス」に連動するインデックスファンドです。
そして、具体的な銘柄の選び方ですが、インデックスファンドの場合、ファンドの優劣は「コスト」でほぼ決まってしまいます。
コストとは、購入する時にかかる「販売手数料」、運用中にかかる「信託報酬」です。
インデックスファンドの販売手数料については、主要なネット証券では0%(ノーロードともいう)のところが主流なので差が付きません。問題は信託報酬であり、これができるだけ低いインデックスファンドが良いということになります。
もったいぶらずに、現時点(2011年9月15日現在)で最も低コストな銘柄をズバリ書きます。ドン!!
日本株式:CMAM 日本株式インデックスe(信託報酬 年率0.3885%)
先進国株式:CMAM 外国株式インデックスe (信託報酬 年率0.525%)
新興国株式:eMAXIS 新興国株式インデックス(信託報酬 年率0.63%)
日本債券:CMAM 日本債券インデックスe (信託報酬 年率0.3885%)
これだけ。
<追記>
上記記事は2011年当時の情報です。最新のインデックスファンド比較を更新した情報はこちらのカテゴリーからご覧いただけます。どうぞ。
→低コストインデックスファンド徹底比較
「え?じゃあ、3000本以上ある他の投資信託って一体何なの?」という思いを抱かれるかたも多いと思います。まったく同感です。と同時に、「しーまむ?いーまくしす?こんな名前の投資信託、聞いたことがない……」と不安になられたかたもいらっしゃるかもしれません。
無理もありません。なにせ、証券会社や銀行はこれらのインデックスファンドを売ってもあまり儲かりません。他に儲かる高コスト商品がいくらでもあるのです。そっちを積極的に広告・宣伝する方が彼らにすれば合理的なのです。
だから、上記4本の投資信託の名前は、私たち個人投資家の目や耳にはほとんど入ってこなくて当然なのです。でも、いずれも、中央三井アセットマネジメント(CMAMインデックスファンドeシリーズ)、三菱UFJ投信(eMAXISシリーズ)という信託銀行系の運用会社がしっかりと運用しているインデックスファンドなので安心してください。
■インデックスファンドを展開する4社の信託報酬と純資産額を比較してみる
いくつか、補足情報を書いておきます。
まず、上記4本のインデックスファンドは信託報酬だけで決めました。それで概ね問題ないのですが、実は、もうひとつ大事な要素があるので、知っておいた方がよいかもしれません。それはインデックスファンドの「純資産額」です。投資信託の規模を表す数字です。
純資産額が大きいと、安定した運用ができる一方、あまりに小さいと運用が不安定になったり、繰上償還(途中で強制的に運用を打ち切られてしまうこと)になったりする可能性があります。繰上償還になっても、別に資産価値が0になるというようなことはないのですが、意に反するタイミングで売却することを強いられたり、新たな商品に乗り換えるという手間がかかったりするので、できれば避けたいところです。
一般的に投資信託は、100億円の純資産額があれば安心だという話があります。
でも、困ったことに、現在の日本の主要なインデックスファンドは、CMAMインデックスファンドeシリーズも、eMAXISシリーズも、設定されてからあまり年月が経っていないため、純資産額が数億円~数十億円とやや少なめなのです。
いずれも「ファミリーファンド方式」(小さなベビーファンドを集めて大きなマザーファンドで運用すること)の投資信託なので、安定運用面では問題ないと思われますが、繰上償還の可能性はなくはないと考えられます。
そこで、上記4本の「ライバルファンド」たちを、信託報酬・純資産額も合わせて一覧表にしてみました。純資産額が気になるかたは、信託報酬に少し目をつぶってライバルファンドを選んでみるのもよいと思います。

信託報酬は小数点以下第3位を四捨五入して表示
ちなみに、「STAM」は略称で正式には「STAMインデックスシリーズ」(住信アセットマネジメント運用)のこと、「eMAXIS」は正式に「eMAXISシリーズ」(三菱UFJ投信運用)のこと、「CMAM」は「CMAMインデックスファンドeシリーズ」(中央三井アセットマネジメント運用)のこと、「Funds-i」は「野村インデックスファンドシリーズ」(野村アセットマネジメント運用)のことです。ネットで調べたりする時には、正式名称を知っておいた方がよいでしょう。
■日本債券クラスを個人向け国債や定期預金で代用した場合の長所と短所
次の補足事項は、日本債券クラスのインデックス商品についてです。
インデックス投資家の中には、ここをインデックスファンドではなく、個人向け国債や定期預金で代用している人たちがいます。そうするとどうなるか?
期限いっぱいまでの持ち切りを前提にすれば、金利の騰落による債券価格の変動がない分、リスク(標準偏差)が下がることになります。同時に、金利も相応に低いので期待リターンも下がることになりますが。
リターンを犠牲にしてもよりリスクを下げたいかた、あるいは将来の日本の金利動向に思うところがあるかたなどは、個人向け国債や定期預金で代用するのもありなのではないかと思います。
さて、アセットアロケーションが決まり、投資するインデックスファンドも決まったら、いよいよインデックス投資開始となります。
気になるのは、いつ、どこで、どうやって投資すればよいのかということですが……それはまた別のお話。
(次回につづく)
P.S
今までのシリーズ記事一覧はこちらのカテゴリーから→インデックス投資の基礎
※本コラムは、ダイヤモンド・オンラインに2011年7月~10月に掲載された水瀬の連載コラム「金融のプロに騙されない等身大の資産作り」を、ダイヤモンド社の許可を受けて転載したものです。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。
<追記>
上記記事は2011年当時の情報です。最新のインデックスファンド比較を更新した情報はこちらのカテゴリーからご覧いただけます。どうぞ。
→低コストインデックスファンド徹底比較
日本に3000本以上ある投資信託の中で、インデックス投資に使う商品は、わずか4本です。
その4本とは、前回のコラムで作ったアセットアロケーション(資産配分)で決めた4つのアセットクラスの市場平均に連動するインデックスファンドです。
すなわち、「日本株式インデックス」「先進国株式インデックス」「新興国株式インデックス」「日本債券インデックス」に連動するインデックスファンドです。
そして、具体的な銘柄の選び方ですが、インデックスファンドの場合、ファンドの優劣は「コスト」でほぼ決まってしまいます。
コストとは、購入する時にかかる「販売手数料」、運用中にかかる「信託報酬」です。
インデックスファンドの販売手数料については、主要なネット証券では0%(ノーロードともいう)のところが主流なので差が付きません。問題は信託報酬であり、これができるだけ低いインデックスファンドが良いということになります。
もったいぶらずに、現時点(2011年9月15日現在)で最も低コストな銘柄をズバリ書きます。ドン!!
日本株式:CMAM 日本株式インデックスe(信託報酬 年率0.3885%)
先進国株式:CMAM 外国株式インデックスe (信託報酬 年率0.525%)
新興国株式:eMAXIS 新興国株式インデックス(信託報酬 年率0.63%)
日本債券:CMAM 日本債券インデックスe (信託報酬 年率0.3885%)
これだけ。
<追記>
上記記事は2011年当時の情報です。最新のインデックスファンド比較を更新した情報はこちらのカテゴリーからご覧いただけます。どうぞ。
→低コストインデックスファンド徹底比較
「え?じゃあ、3000本以上ある他の投資信託って一体何なの?」という思いを抱かれるかたも多いと思います。まったく同感です。と同時に、「しーまむ?いーまくしす?こんな名前の投資信託、聞いたことがない……」と不安になられたかたもいらっしゃるかもしれません。
無理もありません。なにせ、証券会社や銀行はこれらのインデックスファンドを売ってもあまり儲かりません。他に儲かる高コスト商品がいくらでもあるのです。そっちを積極的に広告・宣伝する方が彼らにすれば合理的なのです。
だから、上記4本の投資信託の名前は、私たち個人投資家の目や耳にはほとんど入ってこなくて当然なのです。でも、いずれも、中央三井アセットマネジメント(CMAMインデックスファンドeシリーズ)、三菱UFJ投信(eMAXISシリーズ)という信託銀行系の運用会社がしっかりと運用しているインデックスファンドなので安心してください。
■インデックスファンドを展開する4社の信託報酬と純資産額を比較してみる
いくつか、補足情報を書いておきます。
まず、上記4本のインデックスファンドは信託報酬だけで決めました。それで概ね問題ないのですが、実は、もうひとつ大事な要素があるので、知っておいた方がよいかもしれません。それはインデックスファンドの「純資産額」です。投資信託の規模を表す数字です。
純資産額が大きいと、安定した運用ができる一方、あまりに小さいと運用が不安定になったり、繰上償還(途中で強制的に運用を打ち切られてしまうこと)になったりする可能性があります。繰上償還になっても、別に資産価値が0になるというようなことはないのですが、意に反するタイミングで売却することを強いられたり、新たな商品に乗り換えるという手間がかかったりするので、できれば避けたいところです。
一般的に投資信託は、100億円の純資産額があれば安心だという話があります。
でも、困ったことに、現在の日本の主要なインデックスファンドは、CMAMインデックスファンドeシリーズも、eMAXISシリーズも、設定されてからあまり年月が経っていないため、純資産額が数億円~数十億円とやや少なめなのです。
いずれも「ファミリーファンド方式」(小さなベビーファンドを集めて大きなマザーファンドで運用すること)の投資信託なので、安定運用面では問題ないと思われますが、繰上償還の可能性はなくはないと考えられます。
そこで、上記4本の「ライバルファンド」たちを、信託報酬・純資産額も合わせて一覧表にしてみました。純資産額が気になるかたは、信託報酬に少し目をつぶってライバルファンドを選んでみるのもよいと思います。

信託報酬は小数点以下第3位を四捨五入して表示
ちなみに、「STAM」は略称で正式には「STAMインデックスシリーズ」(住信アセットマネジメント運用)のこと、「eMAXIS」は正式に「eMAXISシリーズ」(三菱UFJ投信運用)のこと、「CMAM」は「CMAMインデックスファンドeシリーズ」(中央三井アセットマネジメント運用)のこと、「Funds-i」は「野村インデックスファンドシリーズ」(野村アセットマネジメント運用)のことです。ネットで調べたりする時には、正式名称を知っておいた方がよいでしょう。
■日本債券クラスを個人向け国債や定期預金で代用した場合の長所と短所
次の補足事項は、日本債券クラスのインデックス商品についてです。
インデックス投資家の中には、ここをインデックスファンドではなく、個人向け国債や定期預金で代用している人たちがいます。そうするとどうなるか?
期限いっぱいまでの持ち切りを前提にすれば、金利の騰落による債券価格の変動がない分、リスク(標準偏差)が下がることになります。同時に、金利も相応に低いので期待リターンも下がることになりますが。
リターンを犠牲にしてもよりリスクを下げたいかた、あるいは将来の日本の金利動向に思うところがあるかたなどは、個人向け国債や定期預金で代用するのもありなのではないかと思います。
さて、アセットアロケーションが決まり、投資するインデックスファンドも決まったら、いよいよインデックス投資開始となります。
気になるのは、いつ、どこで、どうやって投資すればよいのかということですが……それはまた別のお話。
(次回につづく)
P.S
今までのシリーズ記事一覧はこちらのカテゴリーから→インデックス投資の基礎
※本コラムは、ダイヤモンド・オンラインに2011年7月~10月に掲載された水瀬の連載コラム「金融のプロに騙されない等身大の資産作り」を、ダイヤモンド社の許可を受けて転載したものです。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。
<追記>
上記記事は2011年当時の情報です。最新のインデックスファンド比較を更新した情報はこちらのカテゴリーからご覧いただけます。どうぞ。
→低コストインデックスファンド徹底比較
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