【第7回】 「ネット証券、積み立て、ほったらかし」で楽ちんインデックス投資生活を始めよう!
水瀬ケンイチ

インデックス投資の下準備がいろいろ整ったところで、いよいよインデックス投資の実践です。
■「どこ」で投資すればいいのか!?
インターネットで取引をおこなう「ネット証券」です。では、どこのネット証券がいいのか?
証券会社や銀行など、投資信託を買える金融機関は山ほどありますが、実は、第6回のコラムでご紹介したおすすめインデックスファンド(CMAMインデックスファンドeシリーズ、eMAXISシリーズ)がすべて購入できる証券会社はたった3社に限られています。
具体的には、SBI証券、楽天証券、カブドットコム証券の3社です(2011年9月29日現在)。
上記ネット証券のうちどこを選ぶかですが、既に私たちは購入する商品やその割合を自分で決められるので、実は証券会社の役割はそれほど重要ではありません。ネット証券が力を入れている情報配信や投資信託選択ツール、トレーディングツールなどは、インデックス投資の場合、ほとんど使いません。お目当てのインデックスファンドが購入できさえすればいいのです。
しいて言えば、ご自分のメインバンク(給与振込口座等)からの「即時入金サービス」に対応しているかどうかです。
「即時入金サービス」というのは、銀行から証券会社へ、無料かつ即時に入金できるサービスのことです。長い運用期間中、これができるととても快適です。
細かく言えば、ポイントサービスやモバイル対応等いろいろ違いはあるのですが、これはもう趣味の問題かもしれません。調べてみてお好きなところを選んでください。ちなみに、私自身は楽天証券をメイン証券として使っています。
■「いつ」投資すればいいのか!?
それは「毎月」です。
インデックスファンドの購入方法については、当コラムでは「積み立て投資」をおすすめします。
思い出してください。第2回のコラムで、インデックス投資をする前に「生活防衛資金」を生活費の2年分以上確保することがとても重要であるというお話をしました。生活費は人によって違うので金額はまちまちでしょうが、少なくとも何百万円くらいにはなるはずです。
それを別途確保した後、手元に投資資金として大金を自由にできるかたはそうそういないでしょうから、給料など毎月の収入の中から、投資資金を捻出する「積み立て投資」が現実的だと思います。
積み立て投資では、毎月、同じ日に同じ金額の投信を購入します(これを「ドルコスト平均法」と言います)。
「え、毎月同じ日に?もっとタイミングを見計らわなくていいの?」
と思われたかたも多いでしょう。ごもっともです。
適切な投資タイミングが分かるかたは、「毎月同じ日」にこだわる必要はまったくありません。ご自身の信じる適切なタイミングで売買すればよいと思います。
ただし、この適切なタイミングで売買する「タイミング投資」という投資法は、とても難しいということは覚えておいてください。
例えば、アクティブファンドはプロが適切な銘柄を適切なタイミングで売買して、インデックスを上回る収益を目指す運用をしますが、ご存知のとおり、アクティブファンドの7割はインデックスに勝てない(コラム第1回参照)という厳しい事実があります。
そして、人間には、多くの人に共通する傾向(バイアス)があります。
行動経済学の「プロスペクト理論」によると、人は同じ額でも自分の利益と損失では、損失の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動をとる傾向があることが分かっています。
また、損失・利益共に額が大きくなればなるほどその感覚が鈍ってくる傾向があることも分かっています。
これらは、本能のままに投資をすると、わずかな利益で「利益確定」をしてしまう一方で、「損切り」は遅れがちになり、「利小損大」となってしまう傾向があることを示しています。
タイミング投資はプロの実績で見ても、人間の傾向(バイアス)で見ても、かくも難しいということです。
■「積み立て投資」は有利でも不利でもないが、他のどんな投資法よりも楽ちん
では逆に、「積み立て投資」(ドルコスト平均法)は有利なのでしょうか?実は、これも別に有利でも不利でもないと言わざるを得ません。
毎月同じ金額の投信を買うので、相場が高い時には少なめの口数を、相場が安い時には多くの口数を買うことになり、一応、自動的にファンドの買値が平準化されるという効果はあると言われています。
一方で、投資タイミングを無視しているので、相場動向次第では、事後的に見ると投資すべきでなかった時期にも買い続けてしまうということもありえます。
ただ、インデックス投資は投資対象が市場平均(インデックス)です。これは市場全体、ひいては資本主義経済全体に投資することと同義です。
資本主義経済は、人の果てしない欲望を原動力に拡大再生産をしていく仕組みを内包しています。過去の歴史を振り返ると、アップダウンを繰り返しながらも、資本主義経済によって人と社会は大きく発展してきました。
話が大きくなり過ぎて実感がわかないかたは、あなたが会社で毎月、「対前年同月比」でプラスを求め続けられるのは、いったい何故かを考えてみてください。きっと同じ答えにたどり着くはずです。
言うなれば、インデックス投資は、資本主義経済全体が今後も発展していくという期待に賭ける投資法です。そこに納得できるのであれば、細かい投資タイミングを気にせず、長い目で見て少しずつ投資額を積み上げていくという「積み立て投資」はアリなのではないかと思います。
なにより、「積み立て投資」は手間がかからないので、投資が趣味でも仕事でもない大多数の方々にとって、他のどんな投資法よりも「楽ちん」であることは間違いないです。
■「どうやって」投資すればいいのか!?
それは、証券会社の「投信積み立てサービス」を利用します。
このサービスを使えば、毎月、同じ投信を同じ金額だけ、自動的に購入してくれます。
今回ご紹介したおすすめネット証券3社では、投信を1銘柄1000円から積み立てられますので、あなたが自分のリスク許容度に応じて決めたアセットアロケーション(コラム第4回・第5回参照)とほぼ同じ比率で、低コストなおすすめインデックスファンド(コラム第6回参照)を自動的に購入してくれます。
一度積み立てする銘柄と金額を設定すれば、それ以降は、毎月の購入については何の手間もかかりません。株価チャートに張り付く必要もなければ、企業の財務諸表を分析する必要もありません。毎月の購入作業まで自動でやってくれます。
本当に「楽ちん」ですね。
さて、この楽ちんインデックス投資も、年に1回だけ、ぜひやっておきたいことがあります。それが「リバランス」です。
リバランスとは、運用していく中で崩れてきたアセットアロケーション(資産配分)を、所定の比率に戻す作業です。アセットアロケーションが崩れたままだと、知らないうちに過剰なリスクを取ってしまう恐れがあります。
インデックス投資は、基本ほったらかしの楽ちん運用ですが、それができるのは、あくまで自分のリスク許容度の範囲内で運用しているからです。
具体的には、自分が決めたアセットアロケーションと比べて、比率が大きくなり過ぎたアセットクラスのインデックスファンドを売って、比率が小さくなり過ぎたアセットクラスのインデックスファンドを買うという作業をします。
少し手間ですが、なあに、年1回のことです。私は、毎年お正月の暇にまかせてアセットアロケーションを計算して、正月明けにリバランスをしています。
年1回の恒例行事、慣れてしまえばどうということはありません。
■インデックス投資は何もしない時間がほとんど。でも、何もしないのも意外と楽じゃない!?
さて、インデックス投資の方法論は、以上になります。
最初だけ少し手間がかかりますが、いざ始めてしまえば、やることはほとんどありません。資産運用というと、資産を「売買すること」だというイメージをお持ちのかたがいらっしゃるかもしれませんが、基本的には、資産運用は資産を「持っていること」です。
特にインデックス投資では、売買すら自動化でき、投資家としては資産をただ「持っている」だけの時間がほとんどになります。
ただ、分かっちゃいるけど気になる保有資産の損益状態、世界を襲う○○ショック、他人の儲け話……。
「何もしないことを継続するのも楽じゃない」
インデックス投資実践者として、そんな気持ちは痛いほど分かります。実は、インデックス投資を長く続けるためのマインド面の「コツ」があるのですが……それはまた別のお話。
(次回につづく)
P.S
今までのシリーズ記事一覧はこちらのカテゴリーから→インデックス投資の基礎
※本コラムは、ダイヤモンド・オンラインに2011年7月~10月に掲載された水瀬の連載コラム「金融のプロに騙されない等身大の資産作り」を、ダイヤモンド社の許可を受けて転載したものです。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。
「え、毎月同じ日に?もっとタイミングを見計らわなくていいの?」
と思われたかたも多いでしょう。ごもっともです。
適切な投資タイミングが分かるかたは、「毎月同じ日」にこだわる必要はまったくありません。ご自身の信じる適切なタイミングで売買すればよいと思います。
ただし、この適切なタイミングで売買する「タイミング投資」という投資法は、とても難しいということは覚えておいてください。
例えば、アクティブファンドはプロが適切な銘柄を適切なタイミングで売買して、インデックスを上回る収益を目指す運用をしますが、ご存知のとおり、アクティブファンドの7割はインデックスに勝てない(コラム第1回参照)という厳しい事実があります。
そして、人間には、多くの人に共通する傾向(バイアス)があります。
行動経済学の「プロスペクト理論」によると、人は同じ額でも自分の利益と損失では、損失の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動をとる傾向があることが分かっています。
また、損失・利益共に額が大きくなればなるほどその感覚が鈍ってくる傾向があることも分かっています。
これらは、本能のままに投資をすると、わずかな利益で「利益確定」をしてしまう一方で、「損切り」は遅れがちになり、「利小損大」となってしまう傾向があることを示しています。
タイミング投資はプロの実績で見ても、人間の傾向(バイアス)で見ても、かくも難しいということです。
■「積み立て投資」は有利でも不利でもないが、他のどんな投資法よりも楽ちん
では逆に、「積み立て投資」(ドルコスト平均法)は有利なのでしょうか?実は、これも別に有利でも不利でもないと言わざるを得ません。
毎月同じ金額の投信を買うので、相場が高い時には少なめの口数を、相場が安い時には多くの口数を買うことになり、一応、自動的にファンドの買値が平準化されるという効果はあると言われています。
一方で、投資タイミングを無視しているので、相場動向次第では、事後的に見ると投資すべきでなかった時期にも買い続けてしまうということもありえます。
ただ、インデックス投資は投資対象が市場平均(インデックス)です。これは市場全体、ひいては資本主義経済全体に投資することと同義です。
資本主義経済は、人の果てしない欲望を原動力に拡大再生産をしていく仕組みを内包しています。過去の歴史を振り返ると、アップダウンを繰り返しながらも、資本主義経済によって人と社会は大きく発展してきました。
話が大きくなり過ぎて実感がわかないかたは、あなたが会社で毎月、「対前年同月比」でプラスを求め続けられるのは、いったい何故かを考えてみてください。きっと同じ答えにたどり着くはずです。
言うなれば、インデックス投資は、資本主義経済全体が今後も発展していくという期待に賭ける投資法です。そこに納得できるのであれば、細かい投資タイミングを気にせず、長い目で見て少しずつ投資額を積み上げていくという「積み立て投資」はアリなのではないかと思います。
なにより、「積み立て投資」は手間がかからないので、投資が趣味でも仕事でもない大多数の方々にとって、他のどんな投資法よりも「楽ちん」であることは間違いないです。
■「どうやって」投資すればいいのか!?
それは、証券会社の「投信積み立てサービス」を利用します。
このサービスを使えば、毎月、同じ投信を同じ金額だけ、自動的に購入してくれます。
今回ご紹介したおすすめネット証券3社では、投信を1銘柄1000円から積み立てられますので、あなたが自分のリスク許容度に応じて決めたアセットアロケーション(コラム第4回・第5回参照)とほぼ同じ比率で、低コストなおすすめインデックスファンド(コラム第6回参照)を自動的に購入してくれます。
一度積み立てする銘柄と金額を設定すれば、それ以降は、毎月の購入については何の手間もかかりません。株価チャートに張り付く必要もなければ、企業の財務諸表を分析する必要もありません。毎月の購入作業まで自動でやってくれます。
本当に「楽ちん」ですね。
さて、この楽ちんインデックス投資も、年に1回だけ、ぜひやっておきたいことがあります。それが「リバランス」です。
リバランスとは、運用していく中で崩れてきたアセットアロケーション(資産配分)を、所定の比率に戻す作業です。アセットアロケーションが崩れたままだと、知らないうちに過剰なリスクを取ってしまう恐れがあります。
インデックス投資は、基本ほったらかしの楽ちん運用ですが、それができるのは、あくまで自分のリスク許容度の範囲内で運用しているからです。
具体的には、自分が決めたアセットアロケーションと比べて、比率が大きくなり過ぎたアセットクラスのインデックスファンドを売って、比率が小さくなり過ぎたアセットクラスのインデックスファンドを買うという作業をします。
少し手間ですが、なあに、年1回のことです。私は、毎年お正月の暇にまかせてアセットアロケーションを計算して、正月明けにリバランスをしています。
年1回の恒例行事、慣れてしまえばどうということはありません。
■インデックス投資は何もしない時間がほとんど。でも、何もしないのも意外と楽じゃない!?
さて、インデックス投資の方法論は、以上になります。
最初だけ少し手間がかかりますが、いざ始めてしまえば、やることはほとんどありません。資産運用というと、資産を「売買すること」だというイメージをお持ちのかたがいらっしゃるかもしれませんが、基本的には、資産運用は資産を「持っていること」です。
特にインデックス投資では、売買すら自動化でき、投資家としては資産をただ「持っている」だけの時間がほとんどになります。
ただ、分かっちゃいるけど気になる保有資産の損益状態、世界を襲う○○ショック、他人の儲け話……。
「何もしないことを継続するのも楽じゃない」
インデックス投資実践者として、そんな気持ちは痛いほど分かります。実は、インデックス投資を長く続けるためのマインド面の「コツ」があるのですが……それはまた別のお話。
(次回につづく)
P.S
今までのシリーズ記事一覧はこちらのカテゴリーから→インデックス投資の基礎
※本コラムは、ダイヤモンド・オンラインに2011年7月~10月に掲載された水瀬の連載コラム「金融のプロに騙されない等身大の資産作り」を、ダイヤモンド社の許可を受けて転載したものです。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。
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