日経新聞にもリスク・コントロール型の分散投資が紹介されるこんな世の中じゃ
水瀬ケンイチ
本日の日経新聞に、リスク・コントロール型の分散投資が注目されはじめたと報道されています。

【日本経済新聞2012年11月14日朝刊19面より引用】
リスク一定 新・分散投資 資産比率を機敏に変更
資産運用で「リスク・コントロール型」と呼ぶ新しい分散投資の手法が注目され始めた。リターンの獲得よりも過大なリスクの回避を優先。市場の変化に合わせて資産の配分比率を機動的に見直し、安定した投資成果が得られる運用を目指している。
ここ数年、機関投資家などの間で「リスク」に焦点を当てた投資手法が関心を集めている。リーマン危機時に株式や債券など多くの資産が同時に急落し、「下げに強い」といわれた伝統的な分散投資が大きな痛手を受けたのがきっかけだ。バランス型投資信託などで運用してきた個人投資家も事情は同じだろう。
【引用終わり】
日経新聞が「リスク・コントロール型」と言っているのは、今までの分散投資のようにアセットアロケーション(資産配分)を一定水準に保つのではなく、リスクが常に一定水準になるような運用を目指す手法のことのようです。似たような運用法を、以前から当ブログでも「リスク・バジェッティング」「リスク・パリティ」として取り上げてきました。
<関連記事>
2009/03/10 野村総研の分散投資の評価
過去をさかのぼってシミュレーションすれば、リーマン・ショックでもダメージを受けなかった手法ということで、当時から注目されていました。

【日本経済新聞2012年11月14日朝刊19面より引用】
リスク一定 新・分散投資 資産比率を機敏に変更
資産運用で「リスク・コントロール型」と呼ぶ新しい分散投資の手法が注目され始めた。リターンの獲得よりも過大なリスクの回避を優先。市場の変化に合わせて資産の配分比率を機動的に見直し、安定した投資成果が得られる運用を目指している。
ここ数年、機関投資家などの間で「リスク」に焦点を当てた投資手法が関心を集めている。リーマン危機時に株式や債券など多くの資産が同時に急落し、「下げに強い」といわれた伝統的な分散投資が大きな痛手を受けたのがきっかけだ。バランス型投資信託などで運用してきた個人投資家も事情は同じだろう。
【引用終わり】
日経新聞が「リスク・コントロール型」と言っているのは、今までの分散投資のようにアセットアロケーション(資産配分)を一定水準に保つのではなく、リスクが常に一定水準になるような運用を目指す手法のことのようです。似たような運用法を、以前から当ブログでも「リスク・バジェッティング」「リスク・パリティ」として取り上げてきました。
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2009/03/10 野村総研の分散投資の評価
過去をさかのぼってシミュレーションすれば、リーマン・ショックでもダメージを受けなかった手法ということで、当時から注目されていました。
そんなリスク・コントロール型運用ですが、記事の最後の段落には、『国内で一般投資家が買える「リスク・コントロール型」の運用商品はまだほとんどない』と書かれています。しかしながら、アセットクラスを限定すれば、一般投資家が買えるリスク・コントロール型の商品は既に存在しています。
たとえば、国内ETFの「MAXIS トピックスリスクコントロール(5%)上場投信」(1567)や「MAXIS トピックスリスクコントロール(10%)上場投信」(1574)です。これは、リスクが5%・10%になるように日本株式(TOPIX)と現金の比率を勝手に調整してくれるETFです。特に、TOPIXリスクコントロール指数5%は、なんと、失われた20年を通じてパフォーマンスがプラスです。
<関連記事>
2012/07/23 「MAXIS トピックスリスクコントロール(10%)上場投信」上場と一般投資家のリスク・バジェッティング
***
こういう新聞記事やレポートを見て、「もう下落リスクはたくさんだ!TOPIXを売却してすべてリスク・コントロール型に乗り換えよう!」とお考えになるかたがいらっしゃると思います。そのお気持ちも分かりますし、それが正しい選択である可能性も大いにあります。
ただ、メリットだけでなくデメリットもきちんと見ておかなければ、事実を確認したとは言えないと思います。ここでは、私が考える注意点も提示しておきたいと思います。
ひとことで言うと、
・下げ相場に最適化されたポートフォリオは上げ相場でシンプルなインデックスに劣後する
ということです。
ここ何年かのような下げ相場(かつ日本ではデフレ環境)では、資産が減らないことにフォーカスされた様々な運用法が注目を集めます。投資対象にフルインベストメントせずに現金をいくらか持つ運用のファンド、たとえば、先ほどの1567や1574のようなリスク・コントロール型のETFや、ひふみ投信・鎌倉投信などのアクティブファンドなどです。
現在の相場にマッチしているとも言えますが、今後も下げ相場が続くとは限りません。リスクとは、下方リスクだけでなく上方リスクと「対」であるので、リスクを限定するとリターンも限定されます。つまり、上げ相場ではシンプルなインデックスに乗り遅れる可能性と隣あわせであることは、ひとつ覚えておいた方がいいと思います。
また、比較的新しい商品なので、短期間で相場が大きく変動した際に、本当にリスク量を一定水準に保つことができるのかどうかは、「時の洗礼」を受けていないという意味で、まだ十分な検証がなされていないように思います。
それらをふまえた上で、新聞記事にあるようなリスク・コントロール型の商品を検討するのであれば、アリだと思います。
ただ、もし私なら、投資するとしても、既存のアセットクラスのすべてを一気に乗り換えるのではなく、一部をリスク・コントロール型にして分散すると思います。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。
たとえば、国内ETFの「MAXIS トピックスリスクコントロール(5%)上場投信」(1567)や「MAXIS トピックスリスクコントロール(10%)上場投信」(1574)です。これは、リスクが5%・10%になるように日本株式(TOPIX)と現金の比率を勝手に調整してくれるETFです。特に、TOPIXリスクコントロール指数5%は、なんと、失われた20年を通じてパフォーマンスがプラスです。
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ただ、メリットだけでなくデメリットもきちんと見ておかなければ、事実を確認したとは言えないと思います。ここでは、私が考える注意点も提示しておきたいと思います。
ひとことで言うと、
・下げ相場に最適化されたポートフォリオは上げ相場でシンプルなインデックスに劣後する
ということです。
ここ何年かのような下げ相場(かつ日本ではデフレ環境)では、資産が減らないことにフォーカスされた様々な運用法が注目を集めます。投資対象にフルインベストメントせずに現金をいくらか持つ運用のファンド、たとえば、先ほどの1567や1574のようなリスク・コントロール型のETFや、ひふみ投信・鎌倉投信などのアクティブファンドなどです。
現在の相場にマッチしているとも言えますが、今後も下げ相場が続くとは限りません。リスクとは、下方リスクだけでなく上方リスクと「対」であるので、リスクを限定するとリターンも限定されます。つまり、上げ相場ではシンプルなインデックスに乗り遅れる可能性と隣あわせであることは、ひとつ覚えておいた方がいいと思います。
また、比較的新しい商品なので、短期間で相場が大きく変動した際に、本当にリスク量を一定水準に保つことができるのかどうかは、「時の洗礼」を受けていないという意味で、まだ十分な検証がなされていないように思います。
それらをふまえた上で、新聞記事にあるようなリスク・コントロール型の商品を検討するのであれば、アリだと思います。
ただ、もし私なら、投資するとしても、既存のアセットクラスのすべてを一気に乗り換えるのではなく、一部をリスク・コントロール型にして分散すると思います。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。
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