老舗インデックスブロガーが海外ETF派から国内ETF派へ。さて自分はどうするか?(その2)
水瀬ケンイチ

前回の記事、「老舗インデックスブロガーが海外ETF派から国内ETF派へ。さて自分はどうするか?(その1)」の続きです。
海外ETFで運用していたインデックス投資家で、国内ETFに乗り換えるかたが散見される中、私は当面海外ETFのままいくと思います、と書きました。その理由について書いてみたいと思います。
それでは、私が国内ETFではなく海外ETFのままいこうと考えた理由、スタート。
(1) 海外ETFの方が運用コストが低いから
私のコア資産は現在、IVV、EFA、VWOの3本の海外ETFで構成されています。これらの年率信託報酬(厳密にはエクスペンス・レシオ)はIVVが 0.09%、EFAが 0.35%、VWOが 0.20%で、私の目標アセットアロケーションで加重平均すると、年率0.22%です。
これを国内ETFで構成すると、例えば、1306、1680、1681の3本になろうかと思います。これらの年率信託報酬は1306が 0.1155%、1680が 0.2625%、1681が 0.2625%で、同じアロケーションで加重平均すると、年率0.25%です。
どちらも十分に低コストではありますが、海外ETFの方がより低コストです。私はインデックス商品の評価においてコストを重要視しているので、海外ETFの方をより評価します。
余談ですが、現在、日本では消費税アップが盛んに議論され、その実現可能性が高まっていると言われています。もし、消費税がアップした場合、国内ETFの信託報酬にも消費税がかかるので運用コストがアップしてしまいます。なお、海外ETFの信託報酬(エクスペンス・レシオ)には日本の消費税はかかりません。
<関連記事>
2012/01/29 消費税増税が投資信託・ETFのコストに与える影響
(2) 将来の「基準価額と市場価格の乖離」はまだまだ不透明だから
当ブログでは、主要な国内ETFの「基準価額と市場価格の乖離」について毎月ウォッチしています(直近の記事)。これを見ると、この2~3年の間、乖離率は縮小傾向にあります。

個人的には、プラスマイナス1%以内の乖離に収まっていれば、まぁ使える水準ではないかと考えています。ここ数か月はその範囲内なので、直近の「購入」に関してはほぼ問題ない状態になっています。
しかし問題は、「購入」する時だけでなく、将来これを「売却」する時はどうかということです。例えば、20~30年後という遠い将来の時点で、乖離の状況がどうなっているのかはまだまだ不透明です。わずか数か月乖離が安定しているからといって、将来もそうとは言い切れません。乖離が低位安定した状態が「継続」するかどうかをもう少しウォッチしたいと私は考えています。
また、ひとつ気になっているのが、乖離が起きる主な要因です。2~3年前に国内ETFが登場したての頃は、+3~5%と大きくプラス(プレミアム)方向に乖離していました。主な要因は、インデックス投資家の間でいろいろな憶測を呼んでいましたが、結論としては単純で、「投資家の買いが多いから」でした。
<関連記事>
2012/06/02 日興アセット・東証とのETF勉強会に参加。国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」主因が判明!
私事ですが、私の世代は「団塊ジュニア世代」と呼ばれており、比較的世代人口が多い。現在、団塊世代が一斉にリタイアして世の中に大きな影響を与えているように、団塊ジュニア世代が一斉にリタイアするであろう時にも、大きな影響があると見ています。
国内ETFがこれから盛り上がり、多くの投資家が活用するようになったとして、私が売却する頃に団塊ジュニア世代が一斉に売り始めたら、今度は逆にマイナス(ディスカウント)方向に乖離していくのではないか、という不安を抱いています。当然、売却時にマイナス乖離だと、安く売ってしまうことになり、投資家は無用な損をします。
個人だけでなく、機関投資家など様々なプレーヤーによって国内ETFが盛んに売買されるような状況になれば、そんなことは関係なくなるので、今後に期待しています。
(3) リーサルウェポン“VT”は国内ETFでは実現不可能
今後私が投資したい海外ETF銘柄として、VT があります。これ1本で日本・先進国・新興国を含めた全世界の株式に投資できます。しかも、大型株だけでなく中小型株にも投資できます。インデックス投資家の間では、「リーサルウェポン」とも呼ばれています。
同じことを国内ETFでやろうとしても、該当商品がありません。何本か組み合わせようとしても、実現不可能です。しかも、VTの年率信託報酬は 0.22%とこれまた超低コストです。理由(1)で書いた私のコア資産の平均信託報酬と同等なので、国内ETFではコスト的にも実現不可能です。
<関連記事>
2011/12/22 「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」 (VT)が更にパワーアップ
2012/02/29 全世界株式ETFの信託報酬が0.22%へ!
以上の3点が、私が国内ETFではなく海外ETFのままいこうと考えた主な理由です。やはり、コスト面のお話ががいちばん大きいですね。
もちろん、国内ETFにも海外ETFにもメリットとデメリットの両面があります。それらを評価する時に、何を重視するかは、人それぞれだと思います。これはあくまで私水瀬が置かれた環境を前提にした個人的な考え方なので、万人に共通の内容ではありません。決して、国内ETFを選択される方々の意思決定を批判するつもりではないことをご理解いただけたら幸いです。
(つづく)
<ご参考>
2012/12/06 老舗インデックスブロガーが海外ETF派から国内ETF派へ。さて自分はどうするか?(その1)
2012/12/08 老舗インデックスブロガーが海外ETF派から国内ETF派へ。さて自分はどうするか?(その2)
2012/12/09 老舗インデックスブロガーが海外ETF派から国内ETF派へ。さて自分はどうするか?(その3)
- 関連記事
-
-
国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(23年5月末)、乖離率は定位安定で順調 2023/06/03
-
国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(23年4月末)、乖離は小さく特に米国株式が優秀 2023/04/30
-
国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(23年3月末)、乖離はまあまあ小さい状態 2023/04/02
-
国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(23年2月末)、全般的に乖離率は小さくいい感じ。2559の異常値もおさまる 2023/02/28
-
国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(23年1月末)、どうしたMAXIS全世界株式? 2023/02/01
-
国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(22年12月末)、ピッタリ賞が出た一方で大幅乖離もあり明暗分かれる 2023/01/02
-