おかえりなさい、カルパースさん

水瀬ケンイチ

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カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)といえば、コモディティやヘッジファンドなどのオルタナティブ投資を積極的に採用した、先進的な年金基金として有名です。

日本では、公的年金を運用するGPIFの保守的な資産配分と比較され、「カルパースを見習って、もっと積極的な運用を」というような言われ方をされています。(たとえばロイターのこの記事もそうです)

そのカルパースが、コモディティやヘッジファンドなどへの投資をやめるか、大幅に減らすことを考えているそうです。

 米最大の年金基金であるカリフォルニア州公務員退職年金基金(カルパース)は2950億ドル(30兆1500億円)の運用資金の投資を簡素化し、次なる市場の危機的状況下で損失を出さないようにするため、リスクの大きい一部の投資からの劇的な撤退を検討している。関係筋が10日、明らかにした。

 関係筋によると、カルパースはコモディティーやアクティブ運用型企業の株式、ヘッジファンドへの投資をやめるか、大幅に減らすことを考えているという。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2014/8/11より)


なんと! その先進的な運用で世界の年金基金からお手本にされていたカルパースが、コモディティやヘッジファンドなどへの投資をやめるかもしれないとな。

私は自分自身の資産配分は、株式・債券・ちょびっとのREITにしか投資していません。ずっと昔から、コモディティへの投資は、すくなくとも私が採用しているバイ&ホールド戦略には向かないと考えていました。

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また、ヘッジファンドへの投資は、華々しく宣伝で言われてるほど実績がふるわなかったことと、なんと言っても、リーマン・ショックの際に、「資金調達が困難になった」という実にしょぼい理由で、主な7つの戦略(ロング・ショート、アービトラージ、グローバル・マクロなど)のすべてでマイナスになったという事実から、べつに「絶対収益」でもなんでもないと割りきって、投資を見送ってきました。

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長期保有によって価値が上がっていく本質的性質を持っているかどうか、言いかえれば、期待リターンがプラスであるかどうか、という観点から考えて書いたブログ記事でしたが、読者の方々にあまり響きませんでした。

当時は、金(Gold)や原油がグングン値上がりし続けていたり、それこそカルパースのような年金基金にヘッジファンドが採用されはじめていたりした時代だったので、致し方ありません。

カルパースに続けとばかりに、世の中はわれもわれもとオルタナティブ投資に参加してお祭り騒ぎをしてきました。でも、数年たったいま、「先進的」で有名なカルパースが、いち早くそのお祭りから降りたことはなんとも皮肉です。

個人的には、「おかえりなさい」と言いたいです。のんびり歩いているうちに、はるか先を走っていたはずのカルパースがいつのまにか横に並んで歩いているという感じです。一緒にのんびりいきましょうや。ただ、オルタナティブ投資のために金融業界に払ってきたコスト、無駄だったのでは? と思わなくもないですが。

よく言われるように、相関係数の低い資産クラスをポートフォリオに入れると、分散効果でポートフォリオ全体のリスクを下げることができるという説明は事実だと思います。

でも、長期保有によって価値が上がっていく本質的性質を持つ資産クラスの中で分散すればいいのであって、それがコモディティやヘッジファンドである必然性はないと、いまでも考えています。

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Posted by水瀬ケンイチ