新シリーズ!「低コストインデックスファンド徹底比較」開始。まずは説明書き
水瀬ケンイチ
ここ数年でインデックスファンドの低コスト化が進み、インデックス個人投資家にとって、どれを選んだらよいかうれしい悩みをかかえるようなよい投資環境になってきました。その一方で、断片的で誤った比較情報も散見されるようになりました。
そこで、新たに「主要な低コストインデックスファンド徹底比較」として、信託報酬、実質コスト、ベンチマークとの差異、実績リターンという複合的な観点で、インデックスファンドを比較してみるシリーズ記事を書いてみることにしました。
これでいいのか日本のインデックスファンド情報
当ブログでは、インデックスファンドの「信託報酬」と、いわゆる“隠れコスト”を加味した「実質コスト」を計算して公開することは以前から行っていました。
今回からは、新しい試みとして、ベンチマークとなるインデックスについて、「配当込み」インデックスと「配当除く」インデックスを明確に分けて、比較することにしました。
今まで、日本の投信慣習だかなんだか分かりませんが、公開情報では、インデックスファンドのベンチマークが、配当を含むのか、もしくは除くのかについて、曖昧なまま表記することがまかり通ってきました。
言うまでもなく、株式インデックスファンドの原資産である株式は、実際には企業から配当が支払われます。なのに、インデックスファンドのベンチマークが「配当除く」インデックス連動だと、どうなるか。
ダラダラと非効率な運用をしていても、昨今は配当利回りが2~3%かそれ以上ありますので、その分お金が余るわけです。そうです、ベンチマークが「配当除く」インデックスのインデックスファンドは、黙っていてもベンチマークから上ブレるものなのです。
信託報酬等の運用コストがべらぼうに高かった10年以上前は、インデックスファンドの比較において、ベンチマークの配当含む/除くをあまり気にしないでもよかったのかもしれません。
しかし、インデックスファンドのコスト競争が進み、更に低コストなETFも登場して、インデックス投資家たちのコスト意識も高くなってきた環境下においては、配当をベンチマークに含むのか除くのかが曖昧なままでは、もはやインデックスファンドやETFを正しく比較・評価できない状況になりました。なので、「配当込み」インデックスと「配当除く」インデックスを明確に分けて、比較することにしました。
インデックス投資家さんも、インデックスファンドの本分を忘れちゃいないか
さらに、「インデックスとの差異」を併記しました。
そもそもインデックスファンドは、「ベンチマークであるインデックスに連動すること」を目的とした商品です。「ベンチマークを上回ることを目指す」のは、アクティブファンドの運用です。
にもかかわらず、ある一定期間でインデックスファンド・ETFをリターンが大きい順にランキングして、いちばんリターンが高いものを、良い商品として評価するインデックス投資家さんが散見されるようになっています。たとえ、ベンチマークとの差異が大きかったとしても。それってどうなんでしょうか。
この話をするとよくいただく、「儲けるために投資しているんだから、投資家として儲かっているファンドを選ぶのは当然だろ!」という趣旨のご意見は、ある意味では至極まっとうなご意見です。
しかしながら、インデックスを上回ることを目指すのであれば、そもそもインデックスファンドではなく、アクティブファンドを選択するのが理にかなっています。
「インデックスとの差異」が大きなインデックスファンド・ETFは、たとえリターンが一時的に良くても、それはインデックスで想定されているリスクよりも、実は大きなリスクを取っている可能性があります。ベンチマークよりも上ブレするインデックスファンドは、同じ程度下ブレする可能性もありえるので、避けるべきものだと私は考えています。
ベンチマークについて、「配当込み」インデックスと「配当除く」インデックスを明確に分けることにより、「インデックスとの差異」を同じカテゴリーのなかで比較しやすくなりました。
ちなみに、「トラッキング・エラー」という用語を、上記の「インデックスとの差異」と同義として使う投資家や投信ブロガーがいますが、厳密には、トラッキング・エラーは、「ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンとの差(アクティブリターン)の標準偏差をとった値」(野村證券 証券用語解説集)なので、値にプラスもマイナスもなく、ブレ幅そのもののことです。
トラッキング・エラーが大きいと、運用会社のインデックスファンド・マネージャーは叱責されたりするそうです。標準偏差なので、上だろうが下だろうが関係ありません。
リターン実績は調査時のスナップショットにすぎない
プラスとマイナスの複数要因が複雑に絡み合った結果としての、「リターン実績」。
インデックスファンドの場合、これだけで判断すると、傾向や再現性の観点から間違いやすいのですが、掲載することにしました。短期的には信託報酬や実質コストやインデックスとの差異から導かれる評価と異なる実績になることもあるでしょうが、ご参考になさってください。
実質コストやインデックスとの差異については、各ファンドの決算時のデータであり、決算期はファンドごとにまちまちであるところ、リターン実績(1年、3年、5年)は、直近時点のデータで各ファンドとも横並びで比較できます。
なお、比較対象銘柄は、「確定拠出年金(DC)専用」「つみたて専用」「○○証券専用」などの制限がなく、誰もが自由に投資できるインデックスファンドとしています。
新シリーズ記事として、「低コストインデックスファンド徹底比較」というカテゴリーを新設しましたので、随時更新していきたいと思います。インデックスファンドの選択の参考になれば幸いです。
※いわずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。
- 関連記事
-
-
【まとめ】低コストインデックスファンド徹底比較(23年6月末)【全部入り】 2023/07/19
-
【日本債券】低コストインデックスファンド徹底比較(23年6月末) 2023/07/17
-
【新興国株式】低コストインデックスファンド徹底比較(23年6月末) 2023/07/16
-
【先進国株式】低コストインデックスファンド徹底比較(23年6月末) 2023/07/15
-
【日本株式】低コストインデックスファンド徹底比較(23年6月末) 2023/07/14
-
【全世界株式】低コストインデックスファンド徹底比較(23年6月末) 2023/07/12
-