「公的・企業年金運用会社の元社長が教える波乱相場を〈黄金のシナリオ〉に変える資産運用法 かんたんすぎてすみません。」(岡本和久著)

水瀬ケンイチ

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「公的・企業年金運用会社の元社長が教える波乱相場を〈黄金のシナリオ〉に変える資産運用法 かんたんすぎてすみません。」(岡本和久著)を読みました。

本書は表紙のキャッチーな印象とは裏腹に、中身は非常に真面目で骨太な投資本でした。他書との違いは、将来の資産の「取り崩し方」の詳細と「バリュー平均法」が詳しく書かれているところです。

いわゆるインデックス投資本の宿命でもあるのですが、投資手法自体はシンプルで簡単(インデックスファンドの積み立て)、でも、何故その投資法がよいのかをきちんと説明しようとすると、会計や数学の知識が登場してきて、途端に難解になるものです。

本書はその難解になりがちな部分からも目を背けず、パン屋の資金調達をトリガーに「株式とは?債券とは?」から始まり、「株式市場の仕組み」「リスクとリターンとは?」といった本質的な部分について、「こういうものなの!」と結論だけを押し付けるのではなく、理屈が理解できるように、表やグラフ、イメージ図を多用してできるだけわかりやすく解説しようとしています。

そのうえで、「資産運用のプロセス」「購買力の維持」「アセット・アロケーション」「アセット・ロケーション」「投資商品」「ドルコスト平均法」「モニタリングとリバランス」といった、王道のインデックス投資法を、図版を用いて丁寧に説明しています。

そして、冒頭にも書いたとおり、「将来の資産の取り崩し方」について、定額がよいのか定率がよいのか、またハイブリッドという考え方を説明しています。

後半のステップアップ編では、「コア&サテライト戦略」や、岡本氏の近著の特徴でもある「バリュー平均法」についても、詳しく解説されています。最後は、「資産運用耐久力」やそれを身につけるための考え方が紹介されています。

個人の資産運用について、省略されがちな難しい(でも大切な)部分も含めて、包括的にまとめあげた良心的な良書だと思いました。

ただ、私見ですが、バリュー平均法については、市場動向によっては(特に暴落相場では)目の前で資産が溶けていくのを見ながら、まとまった大金を突っ込むという「超・逆張り」の形になり、定額積立のドルコスト平均法以上に、強靭な精神力が求められるので、その辺に対するフォローがあったらより良いだろうなと思いました。(だからこそ、ステップアップ編にあるのだと思いますが)

本書をおすすめしたいのは、中堅以上のサラリーマンです。本書は資金調達の話から入るなど、お金のことについて本当に何も知らない初心者にはすこし難しい内容が含まれており、ある程度ビジネスを経験したかたの方がすんなり頭に入ると思います。

また、資産運用を体系的に学べるので、資産運用に関する新書やムック本など、かんたんな本をさらっと1冊読んだ後の2冊目としても、おすすめです。





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Posted by水瀬ケンイチ