NISA(少額投資非課税制度)の口座数が20%増えたとのことですが……
水瀬ケンイチ

NISA(少額投資非課税制度)の口座数が、制度開始から2年で987万口座となり、1年目の14年末時点と比べて20%増えたとのこと。
NISA2年目、口座数987万に 1年で20%増
金融庁は27日、少額投資非課税制度(NISA)の2015年末の利用状況(確報値)を発表した。開設口座数は制度開始から2年で987万口座となり、1年目の14年末時点と比べて20%増えた。
(日本経済新聞 2016/5/27「NISA2年目、口座数987万に 1年で20%増」より)
NISAの利用者が増えたのはよいことだと思います。私も活用させてもらっています。導入から3年目に入って、世の中の認知度も少しずつ上がってきていることでしょう。
ただ、金融庁の調査データを加工して、年代別に口座数をグラフ化してみると……。

年代別では、60歳代がいちばん多く、次に続くのは70歳代です。60歳以上で過半数を占めています。
日本の個人資産は高齢者層に偏っているといわれています。財務省の調査によると、個人金融資産約1,700兆円のうち、60歳代以上が約6割(約1,000兆円)の資産を保有しているそうです(出典:財務省 平成27年10月27日 説明資料 〔相続税・贈与税〕)。
なので、NISAの「金額」で、高齢者層が大きな割合を占めるのなら話はわかります。
しかし、NISAの「口座数」でもこれほど高齢者層に偏っているのは不自然です。人口は、60歳代が30歳代の倍以上いるわけではないからです。
「将来への備えとなる資産づくりの促進」(政府広報オンラインより)というNISA導入目的とは、ややかけ離れた利用実態になっていると思います。
NISAはその名のとおり、少額から非課税で投資ができるものです。主要ネット証券であれば、月500円とか1,000円から投資信託を非課税で積み立てることができます。
それでも20歳代、30歳代の利用が進まない理由のひとつとして、5年の非課税期限があるからだと思います。条件付きでロールオーバーはできるものの、基本的には5年の非課税期限があるので、投資家が長期投資をしようとしても、望まぬタイミングでの損益確定を強いられます。
高齢者層はあまり気にならないのかもしれませんが、若年層にとって「将来への備えとなる資産づくり」には、5年はいささか短すぎます。
もし、NISA導入の際に金融庁がお手本にした英国ISAのように、非課税期限がなければ、投資を始めるのが早ければ早いほど非課税期間を長く取れることになり、若年層のNISA活用メリットがより明確化されます。
若年層のNISA利用促進のためには、非課税期間の恒久化が求められていると思います。
<特に関連が深い過去記事>
「NISAの恒久化」とは、非課税期間の恒久化なのか?時限立法の恒久化なのか? - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
- 関連記事
-
-
「SNSで知り合った女性をかたる人物」って? 2023/09/14
-
【マスコミ調査】公的年金の2023年度第1四半期が絶好調!なのに報道レベルは低下… 2023/08/06
-
【マスコミ調査】公的年金の2022年度運用実績が堅調! マスコミ報道は一定の進歩 2023/07/10
-
株高で含み益20兆円の日銀のETFをどうするか 2023/06/10
-
日本の暗号資産(仮想通貨)が狙われている? 2023/05/15
-
悪質な投資詐欺から自分を守る「ものさし」がある 2023/05/01
-