バンガードのレポートでは、リバランスなしの方がリターンが高い!?
水瀬ケンイチ

バンガードから、リバランスに関するレポートが出ています。ちょっとおもしろいのは、リバランスありよりも、リバランスなしの方が年間平均リターンが高くなっています。
2016/5/27 投資バランスを見極め、維持すること
世界株式:世界債券=50:50の比率でスタート。1926年~2014年まで運用した結果が、以下のグラフです。

(バンガード・インベストメンツ・ジャパンより)
んんん?
リバランスなしのポートフォリオの方が、年間平均リターンが高くなっています。もちろん、年率ボラティリティの方も大幅に高くなっているのですが、過去に自分が見たデータでは、リバランスなしのリターンは低かったものが多かったので、少し違和感を感じました。
たとえば、以下の記事。
リバランスの有効性を示すデータ - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
過去のデータで見ると、リバランスによるパフォーマンス改善が見られます。
「しぶとい分散投資術―世界金融危機でわかった!」(田村正之著)に、そのデータが掲載されています。
伝統的4資産(日本株式・外国株式・日本債券・外国債券)の均等配分で、1969年12月末に100円投資したとして2007年12月末まで続けたとします。
期間は38年間です。
リバランスの方法により、結果は以下のとおりです。
リバランスなし: 1,145円
5%乖離時にリバランス: 1,308円
10%乖離時にリバランス: 1,371円
1年ごとにリバランス: 1,404円
3年ごとにリバランス: 1,509円
この条件だと、3年ごとにリバランスがいちばん高パフォーマンス、その次に1年ごとでした。
ちなみに上記データの出所は、イボットソンでした。
「しぶとい分散投資術―世界金融危機でわかった!」(田村正之著)のデータです。リバランスなしのリターンがいちばん低い結果になっています。
たしか、田村氏が執筆した同時期の日本経済新聞にも、類似のデータが掲載されていたように記憶しています。
最近のSTAMのコラムに、リバランスのデータが出ていたので、さっそくチェックしました。
住信アセットマネジメント コラム&レポート
2011/09/22 STAM投資ゼミナール 第3回「リバランスの効果~長期分散投資には定期的なリバランスが効果的~」
上記コラムからの引用です。
こちらも伝統的4資産の均等配分で、運用期間は1984年12月末~2011年8月末です。
期間は約27年間ながら、直近の2011年8月末まで入っているのがいいですね。
数値は出ていませんが、グラフの目測でリスクあたりのリターンを推計すると、やはり3年ごとのリバランスがいちばん高パフォーマンスのようです。1年ごともまあまあです。
ちなみに上記データの出所はBloombergでした。
こちらは、旧住信アセットマネジメントのレポートです。やはり、リバランスなしのリターンがいちばん低い結果になっています。
「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール著)でも、株式60%:債券40%で1996年~2013年の17年間で調査した結果、
年1回リバランス 年平均リターン 8.41% リスク 11.55%
リバランスなし 年平均リターン 8.14% リスク 13.26%
となっており、やはり、リバランスなしのリターンが低くなっています。
これはどういうことなのかなぁ?と考えながら、バンガードのレポートをもう一度読み返すと、大きなヒントが隠されていました。
予想通り、このような長期では株式が債券のパフォーマンスを上回り、リバランスを実施しなかったポートフォリオは徐々に目標水準から外れ、株式のアロケーション比率は最終的には97%に達しました。
「株式のアロケーション比率は最終的には97%」とな!?
株式:債券=50%:50%でスタートした比率は、株式:債券=97%:3%にまで株式比率が拡大していたのです。もうほとんど株式100%みたいなものです。
バンガードの調査は89年間という長い運用期間であったため、株式の比率が非常に大きくなり、ほとんど株式100%に近いポートフォリオにまでなってしまいました。
ここまでくると、リバランスの効果云々ではなく、もはや資産クラスそのものが全然別モノです。そりゃあ、株式:債券=50%:50%(リバランスあり)よりも、ほぼ株式100%(リバランスなし)のポートフォリオのリターンの方が高くなるでしょう。
リバランスの効果を測るデータも、調査期間が89年と非常に長期になると、またひと味違った結果になるもんですね。勉強になります。
なお、バンガードのレポートにもあるように、リバランスなしの方がリターンが高くなるならリバランスは不要だ、と考えるのは禁物です。リターンの差以上に、リスク(ボラティリティ)も拡大してしまっているからです。
そもそも、リバランスの主目的は、自分のリスク許容度の範囲内にポートフォリオのリスクを抑える「リスクの調整」です。「リターン向上」はあくまでも副次的なもので、いわばオマケみたいなものです。
そこを、ゆめゆめお忘れになりませんように。。。
P.S
リバランスの調査では課税は考慮されていませんが、現実には課税によるロスが出ますので、できるだけノーセル・リバランス(買い足しのみで資産配分を調整)をおすすめします。私もそうしてます。
- 関連記事
-
-
DIME(ダイム)にインデックスファンドの生みの親にしてバンガードの創始者ジョン・ボーグル氏について書かれた記事が掲載 2023/09/27
-
「投資信託で為替ヘッジなしを選ぶべきと言えるこれだけの理由」とは何か確認して自分の考えと比較する 2023/09/25
-
下げ相場で「おはぎゃああ!」「お金返して!」などと大騒ぎする「自称」コツコツ投資家へ 2023/09/25
-
新しいNISAをキッカケに新しい投資戦略をやってみようという勧めが危険な理由 2023/09/23
-
新しいNISAの成長投資枠対象投信1,616本中、2本だけを理由もなく突然詳しく説明されても…? 2023/09/18
-
積み立て投資をはじめてイライラしてしまう理由 2023/09/15
-