「投信おまかせ革命」でロボアドバイザーにおまかせしてよいことと、おまかせしちゃダメなこと
水瀬ケンイチ

日経新聞にいわゆる「ロボアドバイザー」について書かれたコラムがありました。
人ぞれぞれの適切な資産配分を、低コストで構築できる ...
「人ぞれぞれの適切な資産配分を、低コストで構築できる」(上記コラムより)というロボアドバイザーが、若い世代を中心に広がりはじめているという内容です。
専門事業者や証券会社など各社からロボアドバイザーのサービスが提供されています。アルゴリズムは各社で違うのでしょうから、十把一絡げにどうこう言い難いものがありますが、運用コストはだんだん下がってきているようです。
上記コラムでも、大手金融機関のラップ口座では年間の総コストが2%を超えてしまっていたが、ここ1~2年のロボアドバイザーの普及で、年間の総コストは年0.5~1%程度で済むことが多くなっていると取り上げています。
ただ、ロボアドバイザーにまかせて適切な資産配分を決めてもらうにしても、私たち個人投資家側がなんの知識もなくてもよいというものではないと思います。
古今東西の様々な調査で明らかになっている知見によれば、「資産配分で投資成果(時系列変動)の9割が説明できる」と言われています。資産運用の意思決定において、資産配分はまさにキモ中のキモです。
資産配分に関する知識がないまま、ロボアドバイザーに資産配分を「おまかせ」してしまうのは果たしてよいことなのか。
資産配分に関する知識といっても、分厚い本を何冊も読まなければならないような難しい話ではなく、エッセンスはせいぜいWEBサイトやブログ記事1~2本分くらいの知識です。たとえば、当ブログの該当記事では、下記の記事くらいのものです。
資産配分によって、1年後に最大でいくら(何%)損することがあり得て、最大でいくら(何%)儲かることがあり得るのか。そのイメージをしっかりと持ったうえで、ロボアドバイザーの資産配分を受け入れないと、将来、何度も直面するであろう下げ相場で、「こんなはずではなかった…」ということなりかねないと思います。
これは、金融機関にとってもよい話ではありません。
期待リターンやリスク(ボラティリティ)の知識がない人でも、ロボアドバイザーのおまかせ資産配分で、投資を始めること自体は可能になります。顧客も増えるかもしれません。
しかし、将来、何度も訪れるであろう下げ相場で、損失を他人のせいにする「無責任クレーマー」を量産することになったら、金融機関は自分で自分の首をしめることになりかねないと思います。資産配分を決めるのはロボでも、クレーム応対するのは人だからです。
本ブログ記事は、ロボアドバイザーを全否定するものではありません。優れたアルゴリズムや無難なアルゴリズムを持つロボアドバイザーであれば、投資のハードルを下げることは可能になると思っています。自動でリバランスしてくれる機能も便利でしょう。
ただ、「投信おまかせ革命」であってもおまかせしてよいことと、おまかせしちゃダメなことがあるということです。ロボアドバイザーを使って損失が出ても、誰も責任を取ってくれません。アドバイスは所詮アドバイスであり、最終的な意思決定は投資家自身が下さなければなりません。
ロボを使おうが使うまいが、結局、「投資は自己責任」であることには変わりはないのですから。
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