米国バンガード訪問レポート(その4) 全米からインデックス投資家が集まるイベントに参加して考えたこと
水瀬ケンイチ

前回までの記事「米国バンガード訪問レポート(その1)」「米国バンガード訪問レポート(その2)」「米国バンガード訪問レポート(その3)」の続きです。今回で最後のレポートになります。投資家コミュニティのお話です。
私たちが米国バンガード社を訪問した期間に、同じ地で「ボーグルヘッド・カンファレンス」というイベントが開催されていました。
「ボーグルヘッド」というのは、バンガード創設者のジョン・ボーグル氏の教えに賛同し、ボーグルヘッド・フォーラムというコミュニティに情熱的に参加している人たちのことです。メンバーは、金融のニュースや理論を議論し、投資経験の浅い投資家にポートフォリオ構築の手助けとなるアドバイスをしてくれます。
Bogleheads Investing Advice and Info
上記のボーグルヘッド・フォーラムを見ると、サイトの作りはいたってシンプルですが、質問者の様々な質問に対してしっかりとした回答が行われていることがわかります。
ボーグル氏の教えを理解した方々がアドバイスをしてくれるコミュニティは、素晴らしいと思います。日本にもほしい!
私もインデックス投資ブログを運営していると、時折メールフォームから投資相談が寄せられますが、あくまでも個人ブログですので、一般論を答えることはあっても、個別具体的な投資相談には応じていません。
日本でも、ヤフー知恵袋や某巨大掲示板などで投資の質問をすることはできると思います。ただ、世の中に投資法は様々あるなかで、回答者がどのような投資をしているのか(どのような属性を持っているのか)は不明です。ボーグルヘッド・フォーラムのようなインデックス投資に特化したコミュニティがあるといいなと思いました。
そんなボーグルヘッドたちが、年に一回、バンガード本社のあるフィラデルフィアで全米から一堂に会するのが「ボーグルヘッド・カンファレンス」です。
私はバンガードを訪問してみたいと思うと同時に、ボーグルヘッドの方々がどんな人たちなのか見たいと思っていました。
ちょうど私たちが宿泊していたホテルがボーグルヘッド・カンファレンスの会場であり、連日、ホテルのホールでボーグルヘッドたちが何かをやっているのを、バンガード訪問の行き帰りに遠目で見ていました。ただ、参加者の全体像は把握できず、ホールで何をやっているのかも分かりませんでした。
幸運なことに、ボーグルヘッド・カンファレンスの最終日は、バンガード本社でのパネルディスカッションということで、私たちも参加することができました。

200人くらいでしょうか。「この人たちが全米から集まった生粋のインデックス投資家なのか!」と感慨にふけりながら会場を見渡すと、けっこうお歳を召した方々が多いことに気づきます。そして、チノパンにネルシャツなど意外にカジュアルです。いかにもお金持ち然とした人はほとんど見かけません。
しかし、そもそも参加費用が何万円もかかるうえに(しかもすぐにSOLD OUTしたそうです)、旅費や交通費は全額自己負担であり、余程の情熱とお金がなければここまで来ることはないでしょう。
聞くところによると、某国の大富豪がいたりするらしく、名著「となりの億万長者」(トマス・J・スタンリー著)にあるように、本当のお金持ちはシンプルで質素な身なりをしており、見かけによらないのだなと実感しました。
パネルディスカッションはバンガードの経営幹部たちのトークセッションで、資産管理や投資戦略について、スマートフォンでのリアルタイムアンケートで会場を巻き込みつつ、熱く語られていました。(冒頭の写真がバンガード本社でのボーグルヘッド・カンファレンスの会場の様子です)
年齢層が高いからか、なかでも公的年金、401k、IRA、課税口座など複数ある口座のどこから使っていけばよいのかといった「資産の取り崩し方」の話題に会場の関心が集まっていました。
「現在の生活費はどの口座から?」というリアルタイムアンケートに、「401k」や「IRA」をおさえて「課税口座から」という回答がいちばん多かったことに驚きました。
しかし、よく考えたら、お金持ちなのだから401kやIRAの限度額などとっくに超えているであろうことは理解できました。資産の大半がふつうの課税口座にあるというのは、お金持ちのふつうの姿なのかもしれませんね。
「ボーグルヘッドはバンガードに何を教えているか?」といった質問も飛び出し、バンガードの幹部たちが「いつもボーグルヘッドの皆さんに見られていると思うと、しっかりやらなければと緊張します」と汗をかきながら答えているのを見て、これはよい関係だなと感心しました。
かつて、金融機関都合でインデックスファンドの繰り上げ償還や取り扱い廃止などを何度もくらい、散々煮え湯を飲まされてきた日本の個人投資家としては、うらやましい限りでした。でも、それもこれも、これからです。バンガードですら設立当初から順風満帆ではなかったのですから。重要なのはこれから、金融機関と投資家がよい関係を築いていけるかどうかです。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、ボーグルヘッド・カンファレンスは幕を閉じました。
今回、数日でしたが、米国の運用会社と投資家の両方を見ることができて、本当に勉強になりました。
バンガードの Chris Mclsaac 氏が言っていた「フライホイール」を回すこと、すなわち、運用コストを下げ、運用資産が増えることで、さらにまたコストを下げられるといったサイクルを、日本でもなんとか作れないものかと想像をめぐらせました。
また、ボーグルヘッド・フォーラムのような投資家同士の良質な意見交換の場を、日本でもなんとか作れないものかと、想像をめぐらせました。
規模も文化も異なる日本で、そのまま米国の真似をしてもうまくいかないであろうことは想像にかたくありませんが、時間をかければ方法はあるはずです。
インデックス投資ブロガーの方々や、「インデックス投資ナイト」など個人投資家主催の投資イベントに参加する方々と、いっしょに考えていきたいと思いました。
(終わり)
<本シリーズ記事>
米国バンガード訪問レポート(その1) バンガードの低コストなインデックスファンドはどのような環境で生み出されているのか
米国バンガード訪問レポート(その2) バンガードの低コスト運用の秘密に直接迫る
米国バンガード訪問レポート(その3) バンガードで個人アドバイスサービスが伸びている?
米国バンガード訪問レポート(その4) 全米からインデックス投資家が集まるイベントに参加して考えたこと
<ご参考1> 米国バンガード社 公式WEBサイト
Vanguard: Helping you reach your investing goals | Vanguard
<ご参考2> 米国バンガード社のETFが以下のネット証券で買えます。会社名をクリックで口座開設できます(無料)
・楽天証券
・SBI証券
・
マネックス証券
「ボーグルヘッド」というのは、バンガード創設者のジョン・ボーグル氏の教えに賛同し、ボーグルヘッド・フォーラムというコミュニティに情熱的に参加している人たちのことです。メンバーは、金融のニュースや理論を議論し、投資経験の浅い投資家にポートフォリオ構築の手助けとなるアドバイスをしてくれます。
上記のボーグルヘッド・フォーラムを見ると、サイトの作りはいたってシンプルですが、質問者の様々な質問に対してしっかりとした回答が行われていることがわかります。
ボーグル氏の教えを理解した方々がアドバイスをしてくれるコミュニティは、素晴らしいと思います。日本にもほしい!
私もインデックス投資ブログを運営していると、時折メールフォームから投資相談が寄せられますが、あくまでも個人ブログですので、一般論を答えることはあっても、個別具体的な投資相談には応じていません。
日本でも、ヤフー知恵袋や某巨大掲示板などで投資の質問をすることはできると思います。ただ、世の中に投資法は様々あるなかで、回答者がどのような投資をしているのか(どのような属性を持っているのか)は不明です。ボーグルヘッド・フォーラムのようなインデックス投資に特化したコミュニティがあるといいなと思いました。
そんなボーグルヘッドたちが、年に一回、バンガード本社のあるフィラデルフィアで全米から一堂に会するのが「ボーグルヘッド・カンファレンス」です。
私はバンガードを訪問してみたいと思うと同時に、ボーグルヘッドの方々がどんな人たちなのか見たいと思っていました。
ちょうど私たちが宿泊していたホテルがボーグルヘッド・カンファレンスの会場であり、連日、ホテルのホールでボーグルヘッドたちが何かをやっているのを、バンガード訪問の行き帰りに遠目で見ていました。ただ、参加者の全体像は把握できず、ホールで何をやっているのかも分かりませんでした。
幸運なことに、ボーグルヘッド・カンファレンスの最終日は、バンガード本社でのパネルディスカッションということで、私たちも参加することができました。

200人くらいでしょうか。「この人たちが全米から集まった生粋のインデックス投資家なのか!」と感慨にふけりながら会場を見渡すと、けっこうお歳を召した方々が多いことに気づきます。そして、チノパンにネルシャツなど意外にカジュアルです。いかにもお金持ち然とした人はほとんど見かけません。
しかし、そもそも参加費用が何万円もかかるうえに(しかもすぐにSOLD OUTしたそうです)、旅費や交通費は全額自己負担であり、余程の情熱とお金がなければここまで来ることはないでしょう。
聞くところによると、某国の大富豪がいたりするらしく、名著「となりの億万長者」(トマス・J・スタンリー著)にあるように、本当のお金持ちはシンプルで質素な身なりをしており、見かけによらないのだなと実感しました。
パネルディスカッションはバンガードの経営幹部たちのトークセッションで、資産管理や投資戦略について、スマートフォンでのリアルタイムアンケートで会場を巻き込みつつ、熱く語られていました。(冒頭の写真がバンガード本社でのボーグルヘッド・カンファレンスの会場の様子です)
年齢層が高いからか、なかでも公的年金、401k、IRA、課税口座など複数ある口座のどこから使っていけばよいのかといった「資産の取り崩し方」の話題に会場の関心が集まっていました。
「現在の生活費はどの口座から?」というリアルタイムアンケートに、「401k」や「IRA」をおさえて「課税口座から」という回答がいちばん多かったことに驚きました。
しかし、よく考えたら、お金持ちなのだから401kやIRAの限度額などとっくに超えているであろうことは理解できました。資産の大半がふつうの課税口座にあるというのは、お金持ちのふつうの姿なのかもしれませんね。
「ボーグルヘッドはバンガードに何を教えているか?」といった質問も飛び出し、バンガードの幹部たちが「いつもボーグルヘッドの皆さんに見られていると思うと、しっかりやらなければと緊張します」と汗をかきながら答えているのを見て、これはよい関係だなと感心しました。
かつて、金融機関都合でインデックスファンドの繰り上げ償還や取り扱い廃止などを何度もくらい、散々煮え湯を飲まされてきた日本の個人投資家としては、うらやましい限りでした。でも、それもこれも、これからです。バンガードですら設立当初から順風満帆ではなかったのですから。重要なのはこれから、金融機関と投資家がよい関係を築いていけるかどうかです。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、ボーグルヘッド・カンファレンスは幕を閉じました。
今回、数日でしたが、米国の運用会社と投資家の両方を見ることができて、本当に勉強になりました。
バンガードの Chris Mclsaac 氏が言っていた「フライホイール」を回すこと、すなわち、運用コストを下げ、運用資産が増えることで、さらにまたコストを下げられるといったサイクルを、日本でもなんとか作れないものかと想像をめぐらせました。
また、ボーグルヘッド・フォーラムのような投資家同士の良質な意見交換の場を、日本でもなんとか作れないものかと、想像をめぐらせました。
規模も文化も異なる日本で、そのまま米国の真似をしてもうまくいかないであろうことは想像にかたくありませんが、時間をかければ方法はあるはずです。
インデックス投資ブロガーの方々や、「インデックス投資ナイト」など個人投資家主催の投資イベントに参加する方々と、いっしょに考えていきたいと思いました。
(終わり)
<本シリーズ記事>
米国バンガード訪問レポート(その1) バンガードの低コストなインデックスファンドはどのような環境で生み出されているのか
米国バンガード訪問レポート(その2) バンガードの低コスト運用の秘密に直接迫る
米国バンガード訪問レポート(その3) バンガードで個人アドバイスサービスが伸びている?
米国バンガード訪問レポート(その4) 全米からインデックス投資家が集まるイベントに参加して考えたこと
<ご参考1> 米国バンガード社 公式WEBサイト
Vanguard: Helping you reach your investing goals | Vanguard
<ご参考2> 米国バンガード社のETFが以下のネット証券で買えます。会社名をクリックで口座開設できます(無料)
・楽天証券
・SBI証券
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