お金があっても不満感が減少するだけで、満足感が増加するわけではない?

水瀬ケンイチ

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ゴールデンウィークはまとまった時間があるので、いつもは忙しくて考えられなかったことを考えることができます。私にとっては、「早期リタイア」がそうです。

早期リタイア実践者の情報が得られるように


10数年前はそういったロールモデルが身近にほとんどおらず、早期リタイアと言えば、芸能人の故大橋巨泉氏とか元首相の細川護煕氏のような著名人の情報しか見つけられませんでした。

それが近年、ひと財産を築き、早期リタイア(もしくは、セミリタイア)を実践されるかたがけっこういます。しかも、ブログやツイッターで情報発信をしてくれるようになっています。ありがたいです。

情報発信されている内容を熟読したり、実際に話をうかがいに行ったりして(「あなたも早く辞めたらいいのに」と言われながら)、私も理想と現実の間を行ったり来たりしながら、準備をしています。


お金があっても不満感が減少するだけで、満足感が増加するわけではない


書籍も参考にしています。まだ海外の翻訳ものが多いですが、早期リタイアに関して、私がいちばん参考にしている熟読本「働かないって、ワクワクしない?」(アニー・J・ゼリンスキー著)もそのひとつです。

本書には、たくさんの知見が詰まっていますが、そのうちのひとつで「なるほど」と感じている話があります。

それは、「お金があっても不満感が減少するだけで、満足感が増加するわけではない」ということです。

言うまでもなく、お金は大事です。満足感が増加するわけではないなんてこと、ありえるのでしょうか?


ハーツバーグの二要因理論の結果になるほど!


いくつかの業界の労働者を面接調査したハーツバーグは、不満足の原因と満足の原因がかなり違うことに気づきます。

労働者が不満を感じるのは、賃金・雇用の安定・労働条件・地位といった要因(環境[衛生]要因)であり、満足を感じるのは別の、認知・達成・成長・責任といった要因(モチベーション[動機づけ]要因)だというのです。これはハーツバーグの二要因理論と呼ばれています。

文章だとよくわからないと思いますので、同書から図解を引用させていただきます。

ハーツバーグの二要因理論
働かないって、ワクワクしない?」(アニー・J・ゼリンスキー著) P.359より引用

これによると、賃金(お金)があっても不満足ではない中立状態になるのがやっとで、大きな満足を得るためには、認知されたり、何かを達成したりすることなどが必要だということになります。

これは自分が会社で働いている時の実感に近いものがあります。

そりゃ年収は高いに越したことはないと思っているものの、常にお金のことを考えているわけではありませんし、年収が上がらないのなら何をやっても無駄だと思っているわけでもありません。

仕事をしていてうれしいと感じるのは、やはり目標を達成した時や、それが他者から認められた時でした。逆に、昇給はすぐに慣れてしまい「当たり前」になってしまいました。

実感をもってハーツバーグの二要因理論に「なるほど」と思ったのです。「これは自分の今後の生き方に役立てられそうだな」とも思いました。


詳細データも見てさらに納得


とはいえ、上記の図解はざっくりとし過ぎていて、データとしてどうなのという疑問も抱いていました。ものごとには「程度」の問題があるのです。お金が満足にまったく寄与していないとも思えません。

そこで、当ブログ記事を書くにあたって、ハーツバーグの二要因理論をあらためて調べていたところ、もっと詳細なデータがありました。

満足と不満足の要因差
やる気のない部下をエース社員に変えるには? | プレジデントオンライン | PRESIDENT Onlineより引用)

こちらの方が詳しく、データとして程度問題がよくわかります。

賃金(お金)などの衛生(環境)要因は、不満足の69%、満足の19%に寄与する。
達成などの動機づけ(モチベーション)要因は、不満足の31%、満足の81%に寄与する。

動機づけ要因の81%に寄与することをやることが、満足感を高めるという結果になっています。


早期リタイアにお金の準備だけで大丈夫?


翻って、早期リタイアの話に戻ります。

人は誰でもいつかは仕事をリタイアします(稀に一生現役のかたもいらっしゃいますが例外的でしょう)。その際に、お金さえ貯めておけば、リタイア後の準備としては十分と思ってしまいがちです。もちろん、リタイアにお金は必要です。

しかし、仕事をリタイアした後は、仕事で得ていた動機づけ(モチベーション)要因を一気に失うことになります。お金の必要性に対して、動機づけ(モチベーション)要因の必要性は軽視されがちだと思います。

「定年退職すると男は心身共に不健康になる」という研究データもあります(該当記事)。お金はあって不満ではなくても、満足ではない人が多いということなのかもしれません。

早期リタイアした先輩たちに話を聞いていると、地域活動やボランティア活動、スモールビジネスなどをはじめたかたが多いです(そのような方々が目立つだけかもしれませんが)。そうしたアクティブな活動でなくても、絵や俳句などで、発表会などちょっとした目標をもってこつこつ活動している方々もいます。

いつもでなくても、生活のなかで、ゆったりと過ごす日と、活動する日のメリハリをつけているかたは、数多くおられました。


自分の場合はどうなのか


もちろん、全員が全員そうだというわけではないと思いますが、少なくとも私自身は、毎日ぼーっとしていてもすぐに飽きてしまうでしょう。

何かを表現したいとか、発信したいとか、そういった欲求が強い人間なのです。いい歳こいてかっこ悪いですが、どんな些細なことでもいいので何かで認められたいという気持ちも強いと思います。

そういう意味では、ブログを書き続けるというのも、早期リタイア後に自分のモチベーション要因を満たすささやかな行動のひとつだと思います。

それだけではなく、リタイアしないとできないこともあるのです。それは……と、お話できるのはここまでです。

これ以上は恥ずかしくてとてもお話できません。将来、目指したい在り様は、人それぞれ違うと思いますし。

ただ、早期リタイア後にやろうとしていることに、会社の仕事以外の動機づけ(モチベーション)要因を、うまく組み込んでおこうとはしています。そのための準備も、先輩方に学びながら、進めているところです。


リタイアしなくても役立つかも


最後に、ハーツバーグの二要因理論は、もともと仕事の生産性を上げるための研究から生まれたものです。リタイア後と言わず、現在働いている方々にとっても、日々の仕事を楽しくするために活用できるものだと思います。

人や自分がどういう状態になるとうれしいと感じるのか。満足だと感じるのか。それを知ることは、世知辛い世の中を少しでも楽しく生きていくコツなのかもしれません。


※現在の日本において、早期リタイアは一般的ではなく賛否が分かれるところだと思います。快く思わない方がいらっしゃるかもしれませんが、「こんなバカなことを考えている奴もいるんだな」くらいの取るに足らない意見としてご笑覧ください。



<早期リタイア関係の過去記事>
「人生後半戦のポートフォリオ」(水木楊著)に納得
ゴールデンウィーク早期リタイア考(その1) リタイア修行と目指す生活
ゴールデンウィーク早期リタイア考(その2) 地に足の着いた早期リタイア本
ゴールデンウィーク早期リタイア考(その3) リタイアの先輩、女性に学ぶ
ゴールデンウィーク早期リタイア考(その4) 早期リタイア実践者たちに学ぶ
ゴールデンウィーク早期リタイア考(その5) 自分の早期リタイア計画
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Posted by水瀬ケンイチ