SNS全盛時代の「売らずに我慢するテクニック」

水瀬ケンイチ

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初めての下げ相場という方々がいる


2018年1月からはじまった「つみたてNISA」で長期積み立て投資をはじめたかたも多いと思います。20年間という長期間、非課税で運用できる魅力的な制度です。

金融庁が厳選した高品質で低コストな投資信託を、一定期間ごとに購入していく積み立て方式に限定されています。途中で売却することもできますが、一度売却してしまうとその分の非課税枠はもう戻りません。つまり、いやがおうにも「長期投資」になる制度です。

1月から相場は調子よく右肩上がりをしてきましたが、10月になり最近、相場が軟調です。日経平均やNYダウが1日で3~4%下落する日が続くなど、大きめの下落をしています。

個人的には、よく経験する下げ相場という感覚なのですが、「つみたてNISA」で投資をはじめた初心者投資家さんたちからすれば、初めての下げ相場かもしれません。


不安になった時ほど、基本に立ち返る


投資に限らず仕事でもスポーツでもなんでも、うまくいかなかったり、不安になった時ほど、基本に立ち返ることが大切だと思います。

「つみたてNISA」は、金融庁のガイドブックにもあるとおり、安定的な資産形成を目指す、長期・分散・積み立て投資のための制度です。

つみたてNISA早わかりガイドブック : 金融庁 つみたてNISA早わかりガイドブック : 金融庁


Lesson1 つみたてNISAの特徴を学ぼう!
Lesson2 時間の分散(積立投資)について学ぼう!
Lesson3 投資先の分散について学ぼう!
Lesson4 長期投資の効果について学ぼう!
Lesson5 手数料について学ぼう!
Lesson6 分配金の影響について学ぼう!

上記の各レッスンでは、時間の分散、投資先の分散、長期投資の効果、手数料についてなどいろいろと書いてありますが、要するに、「つみたてNISA」対象の投資信託を組み合わせて、長期的に積み立てし続けましょうということです。

「つみたてNISA」口座で投資するということは、そういう投資方法をあなたは選んだことになります。長期投資としてこの投資方法を継続していれば、短期的な出来事で必要以上にあわてたり不安になったりする必要はないはずです。

長期投資をしているのだから、デイトレードなどの短期投資向けの情報をすべてキャッチして何かを考えたり、対策を検討したりする必要もないはずです。

ところが、下げ相場になると、不安な気持ちから、新聞やニュースの悲観的な情報ばかりが目に飛び込んでくるようになってしまいます。特に、ツイッターなどのSNSではリアルタイムで悲観的な情報がどんどん流れてきます。

なかには、ふだん長期投資をしているはずなのに、短期投資向けのトレードツールから取ってきたチャートや、短期投資向けの日々の下落率ランキングのような情報ばかりを、必死にリツイート(フォロワー全員に拡散)している方々が散見されます。

評価期間によって見える景色はぜんぜん違う


たとえば、TOPIXの値動きを表すチャートひとつとっても、短期目線と長期目線では見え方が全然違います。

TOPIXの直近1ヶ月のチャートです。

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(Yahoo!ファイナンスより)

ずっとズルズルと右肩下がりで、「年初来安値」なんて文字まであります。大変だ!!暴落相場が来た!?と見えるかもしれません。

次に、直近10年のチャートです。

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(Yahoo!ファイナンスより)

直近1ヶ月の右肩下がりは、長い目で見れば小さなギザギザのひとつに過ぎず、取り立てて大騒ぎすることもないかも…と見えるかもしれません。

同じ事象でも、評価期間によって、見え方がぜんぜん違います。繰り返しますが、「同じ事象」ですよ。

1日3%の価格変動は、短期投資家(特にレバレッジをかけている投資家)にとっては生死に関わる一大事ですが、長期投資家にとってはまあ時々は起きるよねという価格変動でしかありません。

情報収集の環境が昔とまるでちがう!?


ツイッターなどのSNSには長期投資家も短期投資家も、両方混在しています。そして、情報の発信者は、いちいち「長期投資家向け」とか「短期投資家向け」というラベルをつけて情報を発信しているわけではありません。

だから、これから長期投資をしようという「つみたてNISA」デビューの投資家さんたちは、タイムラインに流れてくる短期的で悲観的な情報まで、すべて収集して反応する必要はないのです。それどころか、短期的で悲観的な情報をリツイートすることで、他の「つみたてNISA」デビューの投資家さんたちまで不安にさせてしまうおそれすらあります。

昔は、長期投資家は新聞やテレビの日々の短期的な情報を気にしなければよかっただけですが、SNS全盛の今は私たちの手元のスマートフォンに、日々の短期的で悲観的な情報がダイレクトにどんどん飛び込んできます。これらを気にしないということはなかなか難しいでしょう。

さらにタチが悪いことに、下げ相場になると、短期投資家でもないのに、悪ふざけで「おはぎゃあああああ」「お金返してっ!」などと騒ぎ立てる連中もいます。当人たちはふざけているだけですが、投資初心者には、それがふざけているのか、投資家の悲痛な心の叫びなのか、わからないかもしれません。

SNS全盛時代、長期積み立て投資家に求められること


手元のスマートフォンから情報が溢れ出すSNS時代、情報の受信者は、昔よりもさらに情報の取捨選択が求められるようになったと感じます。

投資方針が合わない人や悪ふざけが過ぎる人を、無理にSNSでフォローしておく必要はないと思います。場合によっては、思いきってフォローを解除したり、相場が落ち着くまでミュートしたりするなど、距離を置くことも必要かもしれません。

同時に、情報の発信者は、不安な気持ちから短期的で悲観的な情報ばかりをフォロワーさんに送りつけないということを意識すると、お互いが穏やかに過ごせると私は思います。

なんだか世知辛い気もしますが、これもSNSが大きなパワーを持っていて、個人投資家に与える影響が大きいからだと思います。

投資を継続するためには、たとえ泥臭いことでも、なんでも試す価値はあります。SNS全盛時代の「売らずに我慢するテクニック」のひとつと言えるかもしれませんね。



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※本記事は、長期積み立て投資家に向けたものです。短期投資家にとっては、必ずしもあてはまらないと思います。言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。

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Posted by水瀬ケンイチ