投信保有期間がいちばん長い、手軽で便利な○○ファンド。でも、最低限これだけは把握しておこう
水瀬ケンイチ

モーニングスターに、「投信保有期間一段と伸びる、“長期投資派”注目のタイプは?」という記事が掲載されています。
詳しくは上記モーニングスターの記事をご覧いただきたいのですが、結論からいえば、この4年間で投信保有期間がいちばん伸びたのは、「バランスファンド」でした。
全ファンドの平均保有期間は、2014年10月末で2.3年。全体で見れば2年ちょっとしか投信を保有していなかったんですね。それが、2018年10月末にはようやく3.0年まで伸びています。
そのなかで、バランスファンドは、2014年10月末の3.3年から、2018年10月末には4.6年まで伸びています。やはり、分散が効いているのでバイ&ホールドしやすいし、リバランスも不要という便利さがあるのでしょうね。

(モーニングスター [ アナリストの視点(ファンド) 投信保有期間一段と伸びる、“長期投資派”注目のタイプは? 2018-12-10]より引用)
ただ、バランスファンドが手軽で便利なのは良いことですが、ひとつ話をつけ加えさせてください。
それは最低限、自分が投資しているバランスファンドの期待リターンとリスク(標準偏差)、特にリスク(標準偏差)だけでもしっかりと「数字」で把握しておくことです。
なぜなら、暴落相場が来た時の最大下落率の目安になり、投資を継続するのに役立つからです。
暴落相場が来た時の最大下落率の目安は、
年率の最大下落率=期待リターン-(2×標準偏差)
で求められます。
あくまでも統計的な目安ですが、上記の計算式で求められる年率の最大下落率を超えるような大きな値動きの確率は 4.6% 程度となります。逆に言えば、95.4% の確率でその範囲を超えることはないと期待できます※。
(これでも心配なら、標準偏差の3倍を見ておくと、99.7%の確率でその範囲に収まることになります)
もし自分が投資しているバランスファンドが8資産均等型など、たくさんのアセットクラスに分散投資していて、期待リターンのデータが入手しづらい場合は、せめてリスク(標準偏差)のデータだけでも把握して、その2倍のマイナスを年率の最大下落率の目安とすることをおすすめします。
ポートフォリオのリスク計算に便利なのが「myINDEX(わたしのインデックス)」さんです。過去に起きた2008年のリーマン・ショックや2000年のITバブル崩壊といった大暴落時の最大下落のパフォーマンス分析が可能です
『myINDEX 資産配分ツール』
ただし、上記ツールで計算される「リターン」は過去20年のリターンの単純平均であり、「期待リターン」ではないことに注意。リスク(標準偏差)はそのまま使えると考えます。
上記は市場をシンプルにモデル化した目安。あくまでも目安です。損失の絶対防衛ラインではありません。しかし、ひとつのモノサシとして暴落の「程度」を捉えることはできるようになると思います。
手軽に分散投資できまったく手間がかからないバランスファンドでも、本当に何も知らいないままでずっとバイ&ホールドできるほど、市場はおとなしくありません。
少し大きな下落相場が来た時には、バランスファンドでも値下がりしてマイナスになることが当然ありえます。
その時に、なんの目安も持たない「丸腰」状態だと、いったいどこまで値下がりするのか怖くなってしまい、投資が継続できなくなってしまいかねません。
というわけで、バランスファンドの長期保有はすばらしい。でも、リスク(標準偏差)は数字で把握しておきましょうというお話でした。
※ 表現を少し変更しました。正規分布が前提の標準偏差は下落と上昇の確率は同じと考えるので、2標準偏差を超える「下落だけに特化した確率」は半分の 2.3% になるのですが、見慣れない謎の数字ですし、そのような大きな値動きの確率という表現に変えて 4.6% の数字を残しました。
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