国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(2018年12月) 許容範囲内に収まるも雲行きが…
水瀬ケンイチ

個人投資家の期待を集めながらも、「市場価格と基準価額の乖離」の大きさが課題と言われてきた国内ETF。
海外資産クラスの主要銘柄の2018年12月末までの乖離率について見てみましょう。

1680 日興 上場MSCIコク株 (信託報酬 年0.25%) 乖離率 +0.80%
1681 日興 上場MSCIエマ株 (信託報酬 年0.25%) 乖離率 +0.60%
1550 MAXIS 海外株ETF (信託報酬 年0.25%) 乖離率 +0.41%
1657 iシェアーズ・コア MSCI 先進国株 (信託報酬 年0.19%) 乖離率 +0.25% ※
1658 iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 (信託報酬 年0.23%) 乖離率 +0.04% ※
※iシェアーズの2銘柄はマーケットメイク制度対象
2018年12月、ウォッチ銘柄の「市場価格と基準価額の乖離」は、個人的許容範囲の±1.0%以内におさまっていました。株価自体は大幅に下がったり、大幅に上がったりと大荒れでしたが、乖離率はひとまず許容範囲内でした。
ただ、マーケットメイク制度対象外の日興のETF(1680・1681)の乖離率が拡大気味で推移していることが気がかりです。足もと、年明け2019年1月4日の日次の乖離率が2%近く割高(プレミアム)方向に乖離しており、予断を許さない状況のように見えます。
年末年始の日米のマーケットの休場日が違うなど、なにかの事情があるのかもしれないので一旦は静観して、いつものように月次平均で評価したいと思います。
マーケットメイク制度は、東証がマーケットメイカーにインセンティブを設定し、常時気配提示を義務付ける制度で、2018年7月から開始されています。
対象銘柄の流動性の向上が観察されています。「市場価格と基準価額の乖離」にもよい影響を与えるではないかと考えてウォッチしていますが、今のところよい感じです。
売買手数料面でも追い風です。2018年6月6日より、楽天証券が「iシェアーズETF」(15銘柄)の売買手数料を0円としたことに続き、2018年11月1日より、「MAXISシリーズETF」(16銘柄)も売買手数料0円とすると発表をしました。買う時も売る時も、現物取引も信用取引も、1万円でも1億円でも、売買手数料が0円です。
上記のウォッチ銘柄であれば、1550、1657、1658が売買手数料0円の対象です。
<ご参考>
2018/06/01 楽天証券、東証上場のすべてのiシェアーズETFが売買手数料0円に!
2018/10/29 楽天証券、「MAXISシリーズETF」全16本の取引手数料を無料化。買いも売りもタダ!
最近はインデックスファンドの低コスト化に押され気味の国内ETFですが、日本株の個別株投資をしているかたは、インデックスファンドよりもETFの方が取引方法がなじみやすいでしょう。
投資家がいつでも安心して国内ETFを売買できるように、国内ETFの関係機関にはがんばってほしいと思います。
マーケットメイク制度の影響を含め、今後も、海外資産クラスの主要国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」に注目していきたいと思います。
<ご参考>
「なぜ乖離するのか?」「ベンチマークが違うものを比較できるのか?」等々、このシリーズ記事に対してよくあるご質問に対する見解は、以下の過去記事参照のこと。
2012/06/02 日興アセット・東証とのETF勉強会に参加。国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」主因が判明!
2014/01/21 ETFの乖離問題についてのよくある誤解
2014/05/22 東京証券取引所「ETF・ETN市場に関する意見交換会」で指定参加者やマーケットメイカーさんのホンネに迫る
2017/03/22 「ETF懇談会」参加レポート
2017/05/30 金融庁と個人投資家の意見交換会で感じた利害の一致
2017/07/29 金融庁による第4回「個人投資家との意見交換会」はしびれる販売会社編。参加レポートと感じたこと
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