国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(2019年2月)、久々の凪(なぎ)状態でよきかな
水瀬ケンイチ

個人投資家の期待を集めながらも、「市場価格と基準価額の乖離」の大きさが課題と言われてきた国内ETF。
海外資産クラスの主要銘柄の2019年2月末までの乖離率について見てみましょう。

1680 日興 上場MSCIコク株 (信託報酬 年0.25%) 乖離率 -0.55%
1681 日興 上場MSCIエマ株 (信託報酬 年0.25%) 乖離率 +0.48%
1550 MAXIS 海外株ETF (信託報酬 年0.25%) 乖離率 -0.59%
1657 iシェアーズ・コア MSCI 先進国株 (信託報酬 年0.19%) 乖離率 +0.16% ※
1658 iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 (信託報酬 年0.23%) 乖離率 -0.21% ※
※iシェアーズの2銘柄はマーケットメイク制度対象
2019年2月、ウォッチ銘柄の「市場価格と基準価額の乖離」は、個人的許容範囲の±1.0%の範囲内におさまり、凪(なぎ)の状態でした。
よいことです。
ただ、最近、国内ETFは、インデックスファンドの低コスト化(低信託報酬化)に押され気味です。
インデックスファンドは投資信託であり、「1万円ピッタリで購入」など金額指定で注文できたり、分配金再投資が可能であったり、販売手数料がかからない(ノーロード)商品を選べたりと、利便性が高いです。
一方で、国内ETFは、個別企業の株式と同様に、口数(株数)指定での売買しかできなかったり、分配金再投資は手動でやるしかなかったり、基本的に売買手数料がかかるなど、利便性がインデックスファンドに劣ります。
低コストという強みが失われている今、国内ETFの生き残る道は、だんだんと狭くなってきたように感じます。
たとえば、インデックスファンドを振り切る圧倒的低コスト(低信託報酬)な国内ETFを作るとか、指値・成行など注文方法が日本株の個別株の売買と同じであることを売りにして個別株投資家を取り込むなど、新たなアプローチが必要になってきていると思います。
そのためにも、まずは、市場価格と基準価額が大幅に乖離しないのは大前提になるでしょう。
投資家がいつでも安心して国内ETFを売買できるように、国内ETFの関係機関にはがんばってほしいと思います。
マーケットメイク制度の影響を含め、今後も、海外資産クラスの主要国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」に注目していきたいと思います。
<ご参考>
「なぜ乖離するのか?」「ベンチマークが違うものを比較できるのか?」等々、このシリーズ記事に対してよくあるご質問に対する見解は、以下の過去記事参照のこと。
2012/06/02 日興アセット・東証とのETF勉強会に参加。国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」主因が判明!
2014/01/21 ETFの乖離問題についてのよくある誤解
2014/05/22 東京証券取引所「ETF・ETN市場に関する意見交換会」で指定参加者やマーケットメイカーさんのホンネに迫る
2017/03/22 「ETF懇談会」参加レポート
2017/05/30 金融庁と個人投資家の意見交換会で感じた利害の一致
2017/07/29 金融庁による第4回「個人投資家との意見交換会」はしびれる販売会社編。参加レポートと感じたこと
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