「債券王」として君臨したビル・グロース氏がインデックスファンドについて語ったら…
水瀬ケンイチ

かつてピムコで数十年にわたり「債券王」として君臨したビル・グロース氏が、インデックスファンドについて語っている動画がありましたので取り上げます。
ビル・グロース氏:インデックスファンドを語る(Bloomberg) - Yahoo!ニュース
かつてパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)で数十年にわたり「債券王」として君臨したビル・グロース氏が、インデックスファンドについて語る。ブルームバーグTVのインタビュー。 - Yahoo!ニュース(Bloomberg)
引退を決めたビル・グロース氏ですが、上記のインタビューでは、冒頭、「インデックスファンドに関する議論はまやかしだ」と気を吐きます。
「インデックスが良いのか、アクティブが良いのか」という問題ではないと言いたいのだと推測します。
「議論すべきは手数料だ!」と言った後、いろいろな話をはじめた彼の声のトーンはだんだんと下がっていきます。
それはそうです。
彼がピムコにいた頃の旗艦ファンド「トータル・リターン・ファンド」は、債券のアクティブファンドで、ピーク時の運用資産額が2929億ドルに達するなど世界最大の債券ファンドでしたが、その運用コスト(エクスペンス・レシオ)は年率0.83%と債券ファンドとしては高過ぎるものです。
「議論すべきは手数料」であるとするならば、自分が運用していた高コストなファンドはダメだったという結論に向かって、必然的に話が収束していきます。それは声のトーンも下がります。
ビル・グロース氏は、リターンが年10~15%あった時のコスト1%なら投資家はあきらめるだろうが、現在のようにリターンが2~3%、あるいはマイナスな時には、コスト1%を投資家はあきらめられないだろうとふりかえります。
それをジョン・ボーグル(世界最大級の低コストインデックスファンドの運用会社バンガード社の創始者)はわかっていたとも語ります。
ちなみに、「トータル・リターン・ファンド」は昔の華やかなパフォーマンスは見る影もなくなり、パフォーマンスは下がり、ビル・グロースが退任した後は大量の資金流出に見舞われ、現在はボロボロです。
ピムコには「BOND」というアクティブ運用ETFがありますが、これとてエクスペンス・レシオは年率0.55%と安くはありません。ブラックロックの同カテゴリETFのエクスペンス・レシオが年0.05%ですから10倍以上高いことになります。
インタビューの最後に、ビル・グロース氏は、寂しそうに「つまり問題は手数料なのです」と繰り返しました。
高パフォーマンスのアクティブファンドを運用し「債券王」として長年君臨してきた男が、最後にたどり着いた結論が「低コスト」だというのは、なんとも興味深いものがありますね。
ここから、私たち個人投資家が学べることは多いと思います。
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