セゾン投信ブロガーズミーティング2018に参加した雑感
水瀬ケンイチ

先日、セゾン投信ブロガーズミーティングに呼ばれて参加してきました。
全体的な内容については、他の参加ブロガーさんが記事をアップされると思いますのでそちらに譲りますが、個人的に印象に残った点を記事に残しておきます。
まず、セゾン投信が、昨今の「eMAXIS Slim」シリーズや「購入・換金手数料なし」シリーズと同等の低コスト化競争には、どうあがいても太刀打ちできないということを十二分に承知しているということです。これは、低コスト競争に太刀打ちできない他の運用会社も同じ立場にあると思われます。
にもかかわらず、セゾン投信の顧客は順調に増え続けており、今後もさらなる付加価値の提供が求められています。
直販投信会社について、低コスト競争以外の付加価値とは何か?について、参加ブロガーからも様々な意見が寄せられました。
私が申し上げたのは、「直販のメリット」とよく言われる「ダイレクト・コミュニケーション」とか「顔が見える運用」というのは、必ずしも直販投信会社にしかできないことではなく(運用報告会をやったり、動画でファンドマネージャーが運用を語る運用会社も他にある)、あくまでも運用会社側のメリットだということです。
むしろ、投資家側から見たら、直販投信会社の商品の選択肢の少なさや、ラインナップにはない低リスク商品を資産配分(アセット・アロケーション)に組み入れるために、他の証券会社にも口座開設せざるを得ず口座数が増えてしまうことになり、必ずしもメリットではないということです。
(これは、10年前から各直販投信会社の方々とお話してきても、なかなかご理解いただけない「謎」課題のひとつです)
ほんとうの意味の直販投信会社が減ってきたなか、セゾン投信には、この発想を変えていただかないと、いつまでたっても、見当違いのアピールをし続けることになりかねないということを申し伝えました。
ふつうの投信運用会社は、通常は販売会社(証券会社・銀行など)から、投資家の氏名・住所・年齢・職業・年収等の個人情報がもらえないところ、直販投信会社であれば、それらの情報もすべて把握できる立場にあります。これは、直販投信会社側から見たらメリットです。
でも、投資家側から見ると申込書に書いた内容が、販売会社でとどまるか、その向こうの運用会社まで届いているかなどあまり関係ないという構図が、どうもご理解いただけないのです。
そして、直販投信会社のメリットとしてよく言われる、「全国での頻繁なセミナー開催」とか「運用会社の顔が見える」とかいう話は、別に、直販でなくても、運用会社さえその気になればできる活動です。(やる気がない運用会社が大半であることはいったん横においておいて)
昔、直販投信会社として、セゾン投信、ひふみ投信、コモンズ投信がタッグを組んで、「草食投資隊」として全国でセミナー活動等を積極的に行っていた時期がありました。今回のセミナーでも当時の活発な活動を懐かしく振り返る参加者がいました。
私も何度か参加しましたが、前述のとおり、「直販投信会社のメリット」を「投資家のメリット」と結びつける無理やりなロジックが展開され、居心地が悪かったことを思い出します。
いま一度、スキームとしての直販投信会社のメリットというのを再定義していただき、ダイレクトコミュニケーション云々という独りよがりなメリットにしがみつくのはそろそろ止めたらどうかといった提言をしました。
その上で、セゾン投信の商品の平均保有期間が10年(投信全体では3~4年)を超えるという点に着目して、セゾン投信の長期投資経験者に成功体験を語っていただき、長期投資の重要性を具体的に訴求するというアイディア(水瀬発案)とか、顧客属性にもっと特化した今までなかったようなセミナー、例えば小さな子どもを持つお母さん達を対象とした床に直座りのアットホームな勉強会を開催するといったアイディア(参加者のスバルさん発案)が提案されました。
こういう提案は、顧客の属性を把握している直販投信会社でなくてはできないうえに、顧客側にもメリットがある(自分が投資する商品に長く投資している先輩の生の声を聞ける、今まで参加できなかった人が参加できるなど)と思います。
セゾン投信の長期・分散・低コストという考え方や投資哲学は、とてもシンプルで、私たち個人投資家に寄り添ったものであることは昔から何ら変わっていません。今後とも頑張ってほしいと思います。
その後、出口戦略についての議論が行われましたが、「積み立ても取り崩しもコツコツと」「ボケでも管理しやすい商品1本化への提案」といったキャッチフレーズの話が多く(悪くないけれど)、なかなか本質的なお話にならなかったかなとの印象です。
ミーティング参加者やセゾン投信顧客にとっては、遠い将来の話で、まだ想像の域を出ないという感じ。これは仕方ないことだと思います。
ただ、インデックスファンドを定時定額でコツコツ積み立ててきたような穏やかな投資家が、出口だけはなぜかタイミングを見はからった一発勝負の全額売却ギャンブルに打って出ようとする傾向(文化?)が投資家に染み付いており、今後の情報発信と啓発に期待がかかります。
セゾン投信は顧客層が若手に集中しているので、今後の継続課題といったフェーズなのだと理解しました。
最後に、セゾン投信と言えば、中野社長の熱いトークが売りになっている部分が大きいと思っていたのですが、後進の社員たちが着々と育っていることを確認しました。
郵便局から出向で勉強中の社員さんや、銀行の営業を辞めてセゾン投信に転職した熱い想いの社員さんとも直接お話ができて、セゾン投信の今後に期待が高まりました。
この会社は生き残ると期待しています。そのためには、相手にとって耳が痛い事でも毎年提言していきたいと思いますし、それを聞き入れてくれる土壌がこの運用会社にはある。そう感じた次第です。
長くなりましたが、セゾン投信ブロガーズミーティング2018の感想でした。参加ブロガーも多く、異論・反論はあろうかと思いますので、それらをあわせて読んでいただき、本質の理解の一助にしていただけたらと思っております。
<参加ブロガーの記事>
まず、セゾン投信が、昨今の「eMAXIS Slim」シリーズや「購入・換金手数料なし」シリーズと同等の低コスト化競争には、どうあがいても太刀打ちできないということを十二分に承知しているということです。これは、低コスト競争に太刀打ちできない他の運用会社も同じ立場にあると思われます。
にもかかわらず、セゾン投信の顧客は順調に増え続けており、今後もさらなる付加価値の提供が求められています。
直販投信会社について、低コスト競争以外の付加価値とは何か?について、参加ブロガーからも様々な意見が寄せられました。
私が申し上げたのは、「直販のメリット」とよく言われる「ダイレクト・コミュニケーション」とか「顔が見える運用」というのは、必ずしも直販投信会社にしかできないことではなく(運用報告会をやったり、動画でファンドマネージャーが運用を語る運用会社も他にある)、あくまでも運用会社側のメリットだということです。
むしろ、投資家側から見たら、直販投信会社の商品の選択肢の少なさや、ラインナップにはない低リスク商品を資産配分(アセット・アロケーション)に組み入れるために、他の証券会社にも口座開設せざるを得ず口座数が増えてしまうことになり、必ずしもメリットではないということです。
(これは、10年前から各直販投信会社の方々とお話してきても、なかなかご理解いただけない「謎」課題のひとつです)
ほんとうの意味の直販投信会社が減ってきたなか、セゾン投信には、この発想を変えていただかないと、いつまでたっても、見当違いのアピールをし続けることになりかねないということを申し伝えました。
ふつうの投信運用会社は、通常は販売会社(証券会社・銀行など)から、投資家の氏名・住所・年齢・職業・年収等の個人情報がもらえないところ、直販投信会社であれば、それらの情報もすべて把握できる立場にあります。これは、直販投信会社側から見たらメリットです。
でも、投資家側から見ると申込書に書いた内容が、販売会社でとどまるか、その向こうの運用会社まで届いているかなどあまり関係ないという構図が、どうもご理解いただけないのです。
そして、直販投信会社のメリットとしてよく言われる、「全国での頻繁なセミナー開催」とか「運用会社の顔が見える」とかいう話は、別に、直販でなくても、運用会社さえその気になればできる活動です。(やる気がない運用会社が大半であることはいったん横においておいて)
昔、直販投信会社として、セゾン投信、ひふみ投信、コモンズ投信がタッグを組んで、「草食投資隊」として全国でセミナー活動等を積極的に行っていた時期がありました。今回のセミナーでも当時の活発な活動を懐かしく振り返る参加者がいました。
私も何度か参加しましたが、前述のとおり、「直販投信会社のメリット」を「投資家のメリット」と結びつける無理やりなロジックが展開され、居心地が悪かったことを思い出します。
いま一度、スキームとしての直販投信会社のメリットというのを再定義していただき、ダイレクトコミュニケーション云々という独りよがりなメリットにしがみつくのはそろそろ止めたらどうかといった提言をしました。
その上で、セゾン投信の商品の平均保有期間が10年(投信全体では3~4年)を超えるという点に着目して、セゾン投信の長期投資経験者に成功体験を語っていただき、長期投資の重要性を具体的に訴求するというアイディア(水瀬発案)とか、顧客属性にもっと特化した今までなかったようなセミナー、例えば小さな子どもを持つお母さん達を対象とした床に直座りのアットホームな勉強会を開催するといったアイディア(参加者のスバルさん発案)が提案されました。
こういう提案は、顧客の属性を把握している直販投信会社でなくてはできないうえに、顧客側にもメリットがある(自分が投資する商品に長く投資している先輩の生の声を聞ける、今まで参加できなかった人が参加できるなど)と思います。
セゾン投信の長期・分散・低コストという考え方や投資哲学は、とてもシンプルで、私たち個人投資家に寄り添ったものであることは昔から何ら変わっていません。今後とも頑張ってほしいと思います。
その後、出口戦略についての議論が行われましたが、「積み立ても取り崩しもコツコツと」「ボケでも管理しやすい商品1本化への提案」といったキャッチフレーズの話が多く(悪くないけれど)、なかなか本質的なお話にならなかったかなとの印象です。
ミーティング参加者やセゾン投信顧客にとっては、遠い将来の話で、まだ想像の域を出ないという感じ。これは仕方ないことだと思います。
ただ、インデックスファンドを定時定額でコツコツ積み立ててきたような穏やかな投資家が、出口だけはなぜかタイミングを見はからった一発勝負の全額売却ギャンブルに打って出ようとする傾向(文化?)が投資家に染み付いており、今後の情報発信と啓発に期待がかかります。
セゾン投信は顧客層が若手に集中しているので、今後の継続課題といったフェーズなのだと理解しました。
最後に、セゾン投信と言えば、中野社長の熱いトークが売りになっている部分が大きいと思っていたのですが、後進の社員たちが着々と育っていることを確認しました。
郵便局から出向で勉強中の社員さんや、銀行の営業を辞めてセゾン投信に転職した熱い想いの社員さんとも直接お話ができて、セゾン投信の今後に期待が高まりました。
この会社は生き残ると期待しています。そのためには、相手にとって耳が痛い事でも毎年提言していきたいと思いますし、それを聞き入れてくれる土壌がこの運用会社にはある。そう感じた次第です。
長くなりましたが、セゾン投信ブロガーズミーティング2018の感想でした。参加ブロガーも多く、異論・反論はあろうかと思いますので、それらをあわせて読んでいただき、本質の理解の一助にしていただけたらと思っております。
<参加ブロガーの記事>
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