20代、30代の若者が投資を生活の中にとりこんでいる姿は頼もしい
水瀬ケンイチ

ヤフーニュースに若者の投資に関する記事がありました。
「おっ」と思いましたが、図版が小さく読みにくい上に、どこからどこまでが引用で、どこまでが執筆者の意見なのかハッキリしていませんでした。出典元の BUSINESS INSIDER JAPAN で見たところ、引用部分がハッキリしていて、なるほどと思ったので取り上げてみたいと思います。
月17万の手取りから株・投信に6万。「ふつうの暮らし」が貯金じゃ無理…
年金は本当にもらえるの?ウチの会社はいつまであるの……?「まじめに働き、ちゃんと貯金していれば一生安泰」と多くの人が信じられた昭和も今は昔。「失わ...
詳しくは上記の BUSINESS INSIDER JAPAN の記事をご覧いただきたいのですが、このなかに登場している2人の個人のかたは、投資を人生にとりこんで活用しています。
おひとりは、年収300万円で貯金ゼロだったところ、「体調に不安があり、万一働けなくなったら自己防衛の手段がない」との考えから、30歳を目前にパチンコの回数を減らして投資を始めたとのこと。投資信託の積み立て投資を始め、すぐに個別株の売買も手がけるようになったそうです。
「仮想通貨やFX(外国為替証拠金取引)はリスクが高すぎる。そこまでの冒険はしたくない。もちろん株や投信にもリスクはありますが、長い目で見て年2、3%くらいの利回りは確保したいので。
お金がかかる趣味もないし、自分の家があって、心配することなくふつうの暮らしができれば、それで十分なんです」
(月17万の手取りから株・投信に6万。「ふつうの暮らし」が貯金じゃ無理… | BUSINESS INSIDER JAPANより)
働けなくなった時の自己防衛は、本当は誰もが考えなくてはならない大切なことです。でも、ほとんどの人は考えていないのではないでしょうか。
30歳を前に備え始めたのは立派だと思います。パチンコという中毒性のある浪費の回数を自ら減らして、投資の資金を捻出するというのも、強い意志の力を感じて立派だと思います。
知識として知っていていただきたいだけですが、万一の備えとして、公的年金もあります。長生きリスクに備える老齢年金だけでなく、ケガや病気で働けなくなるリスクには障害年金、一家の大黒柱がなくなった時のリスクには遺族年金があります。
もちろん、年金の給付には諸条件がありますが、公的年金の内容を一度しっかり押さえておくことも、将来の不安をやわらげる一助になると思います。
マスコミが「若者は払い損だ、払い損だ」と喧伝するので、若者にすこぶる評判が悪いことも知っていますが、公的年金は終身であり、民間では同じ条件の保険はとても作れないほど実は手厚く、そこまで悪いものではありません。
公的年金の内容を知り、「それでも足りない分を貯蓄や投資で備える」と考えると、少し楽になるのではないかと思いました。
「人生100年時代の年金戦略」(田村正之著)は公的年金を徹底的に調べ上げて至れり尽くせりで解説してくれる「ザ・年金本」
「人生100年時代の年金戦略」(田村正之著)を読みました。本書は日本経済新聞社編集委員兼紙面解説委員で、ファイナンシャル・プランナー(CFP®)でもある田村正之氏が、公的年金を徹底的に調べ上げて至れり尽くせりで解説してくれる「ザ・年金本」でした。私自身、初めて知ることがたくさんあり、手元に置いておきたい一冊となりました。...
また、投資の期待リターンが「長い目で見て年2、3%くらいの利回り」でよいのであれば、無理にリスクが高い個別株投資までやらなくても、当初、投資を始めた際にやっていた投資信託の積み立てでも十分狙える控えめなリターンだと思います。
さらに、投資信託であれば、「つみたてNISA」(少額投資非課税制度)」や「iDeCo」(個人型確定拠出年金)の対象になっているものもあるので、活用すれば節税にもなります。
BUSINESS INSIDER JAPAN で紹介されていたもうひとりの個人のかたは、「45歳でアーリーリタイア」を目指して投資をしている30代前半のかたでした。
「アーリーリタイア」というと突拍子もない目標のように見えるかも知れませんが、このかたはアーリーリタイアしてぜいたくな悠々自適の暮らしをするためではなく、趣味のサーフィンさえ楽しめればよく、あとはふつうにご飯が食べられれば満足と控えめな考えをもっているとのこと。
「お金持ちの世界というのがあるのかもしれませんが、魅力は全然感じません。僕の友達は高いお店には誘いにくいですし。
お金はあるに越したことはないですが、自分が楽しいと思う暮らしを実現するための手段にすぎません。単なる手段が目的になってしまうと、おかしな方向へ行ってしまいますからね」
(月17万の手取りから株・投信に6万。「ふつうの暮らし」が貯金じゃ無理… | BUSINESS INSIDER JAPANより)
生活費以外のすべてを個別株投資に回しているということですので、比較的リスクの高い運用をしているとは思いますが、信用取引でレバレッジを掛けているわけではありません。
万一、投資で大失敗しても、借金を抱えるわけではないため、定年まで今の会社で働き、後は退職金や年金で質素に暮らせばいい。そう割り切っているそうです。
投資がうまくいけば、早期リタイア。たとえ投資がうまくいかなかったとしても、その時はその時で、大半の人と同じように定年まで働けばよい。
じつに現実的です。私の早期リタイア計画の考えに近く、親近感を勝手にいだきました。
ただ、私がやりたいことはサーフィンではなく、生活の心配をすることなく、ある分野で思い切り社会貢献がしたいということで目的がちょっと違いますが。
世の中では、いまだに投資=ギャンブルだという偏見が幅を利かせており、この記事に対しても眉をひそめる方々が多いと思います。
たしかに、投資にはリスクがあり、資産が元本割れしてしまう可能性は避けられません。
しかし、セーフティーネットのこともしっかりと考えた上で、無理をしない範囲で投資をしていくことは、自分の人生の可能性を広げてくれるものだと私は考えます。
個人資産に占める株や投信の割合が、欧米に比べて著しく低く、預貯金偏重の日本において、20代、30代の若者が自分で考えて、投資を生活の中にとりこんでいる姿は頼もしいと思いました。

(資金循環の日米欧比較 2018年8月14日 日本銀行調査統計局 より)
消費税増税(やめてほしい)や社会保険料の値上げ(やめてほしい)など、世知辛い世の中ですが、一部の投資には、国による非課税制度という後押しがあります。
「つみたてNISA」は、特に少額からの長期・積立・分散投資を国が支援するための非課税制度です。少額から生活に取り入れてみたら、自分の人生の可能性が広がる本格的な投資へのキッカケになるかもしれませんよ。
ただし、どんな投資にも、元本割れするリスクは必ずあります。億万長者を夢見て、一気にハイリスクな投資をして一発退場になり生活が立ち行かなくなるような事のないように、自分が許容できる(←ここ超大事)金額や資産配分で、慎重に、慎重に。
前出の彼のように、たとえ投資がうまくいかなかったとしても、その時はその時で生活できる範囲内でやることが、山あり谷ありの投資を継続できるポイントだったりしますので。
<ご参考>
金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」へのリンクになっています。
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