GDP比率と株式時価総額比率、今から投資するならどちらがよいのか
水瀬ケンイチ

東証マネ部!に、GDPの国別比率が、30年でどう変わったかがわかるデータが掲載されていたので見てみました。

(令和を勝ち抜くために学ぶべき「平成マーケットの歴史」 | 東証マネ部!より)
引用元の東証マネ部!の記事によると、「変わらないのは米国の1位だけで、様変わりしていると言っていいだろう。日本の2割強の経済規模でしかなかった中国経済が2位へと躍進したことに代表されるように新興国経済の存在感が大きく増している」という評価です。
たしかに、この30年間で、中国などの新興国のGDP比率が大幅に上がっています。
特に2008年リーマン・ショックで、大打撃を受けた世界経済に対して、それまでのG7(日・米・英・独・仏・伊・カナダ)に代わり、ロシア・中国・インド・ブラジル・メキシコ・南アフリカなど新興国を多数含めた「G20」が、財政政策の協調で大きな役割を果たしてきました。世界経済における存在感も大きくなってきました。
ところで、上記のグラフを見て、「あれ? 米国小さすぎない?」と思う方がいらっしゃるかもしれません。
直近2019年における米国の比率が25%というのは、世界経済の4分の1に過ぎません。よく米国は世界の株式時価総額の「半分」を占める超大国と言われてますし。
その違いは、GDP比率と株式時価総額の違いだと考えます。
少し前のデータですが、2014年当時のGDP比率と株式時価総額を並べた円グラフがありました。

(りそな銀行 プレミアムセミナー | モーニングスター 特集より)
同じ時期ですが、GDPで見ると米国は世界の4分の1程度ですが、株式時価総額で見ると米国は世界の約半分を占めます。
株式時価総額で見ると米国の比率が大きくなり、中国などの新興国がとても小さくなるのは、株式時価総額が「浮動株調整」をするためです。
浮動株調整とは、「対象マーケットに上場されている各銘柄の浮動株のみを指数の評価対象にする株価指数の算出方法」(Wikipediaより)のこと。
株式の多くが創業者一族など一部の大株主に握られていて、株式市場で自由に取引できる株数が少ない企業があります。いわゆる浮動株比率が低い企業です。新興国には特に多いです。
企業のごくごく一部の株数(極端な話、1%だけ)しか市場に流通していないのに、それをこぞって取引されてついた株価が、企業全体の株式に(残り99%の株式にも)反映される時価総額って、大半の株数を市場で売買できるふつうの企業の時価総額と比べて、割高かもしれません。
ある読者の方から、「それって、ドーピングみたいなもんじゃん?」 と言われたことがありますが、自然な発想だと思います。
特に機関投資家のパッシブ運用や、インデックスファンドによる売買で、浮動株比率が低い企業の株価が乱高下し、問題になります。そこで、上場されている各銘柄の浮動株のみを指数の評価対象にする株価指数が、パッシブ運用やインデックスファンドの主要なベンチマークになりました。
東証株価指数(TOPIX)も2006年までに浮動株指数に移行しました。
国際分散投資するインデックス投資家にとっては、株式の資産配分は、GDP比率と株式時価総額比率のどちらがよいのかが、気になります。
私は新興国のみならずインデックスの浮動株調整は、投資家を守るための措置だと考えています。浮動株調整後の株式時価総額比率には、大半の株式が「市場の評価」という洗礼を受けているという意味で、一定の合理性があると考えており、自分自身も株式時価総額比率をベースに投資してきました。
一方で、中国をはじめとした新興国の株式時価総額比率が小さいのは、浮動株調整により不当に小さく抑え込まれており、ポテンシャルはもっと高いはずなので、GDP比率の方がよいと考える人もいます。
では、今から投資するならどちらがよいのか。
こればっかりは、現時点ではなんとも言えません。答え合わせは、数十年後ですね。
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