なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その3) 金融業界の要因
水瀬ケンイチ
前回の記事、
2006/12/14 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その1)
2006/12/16 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その2) 市場の要因
の続きです。インデックス投資が個人投資家の間でだけマイナーな、「金融業界の要因」について考えてみます。
(2)金融業界の要因
○コストが安く金融業界が儲からないから
一般的に、インデックスファンドは、アクティブファンドよりも信託報酬が安いです。
ちなみに、国内株式ファンドの信託報酬の平均を比較すると、2006年4月末現在、
アクティブ型 1.487%
インデックス型 0.825%
(出典:モーニングスターのWEBサイト)
と、インデックスファンドの信託報酬の低コストは明らかです。(個人的にはこれでも高いと思いますが)
インデックスファンドは、信託報酬だけでなく、販売手数料も安いものが多いです(ノーロードも多い)。
金融業界としては、インデックスファンドは、販売しても利幅が薄い商品ということになりますので、いきおい、利幅の厚いアクティブファンドの販売にいそしむということになります。
それに加えて、機関投資家の間では、「(その1)の記事」で指摘させていただいたように、「インデックス運用ブーム」が起こり、コスト競争が激化し、運用報酬が下がるところまで下がりきってしまいました。
個人投資家の間でも、国内株式の株式売買手数料について言えばは、もはや世界最低水準と言っていいレベルまで、下がりきってしまいました。
このような事情もあり、金融業界としては、行動ファイナンス理論を販売のマーケティングに悪用してでも、個人投資家からは、投資信託でたくさんの手数料を稼がなければならない懐事情なのでしょう。ああ、お寒い。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。
○日本の証券会社のビジネスモデルが旧態依然だから
上記のように、懐がお寒くなってしまった日本の証券会社ですが、インデックス投資先進国である米国の証券会社はいったい何で儲けているのでしょうか?
ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリルリンチなど、米国の大手証券会社は、日本の証券会社のように株式売買や投資信託の運用だけではなく、主にM&A仲介業務などのいわゆる「投資銀行」業務の方にシフトして、飯を食っているようです。
最近は、日本企業の大型M&Aのニュースを見ることが多くなってきました。
たしかに、そのようなビッグディールに顔を出しているのは、野村證券や大和証券ではなく、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーであることが多いような気がします。
日本の大手証券会社は、大口を優遇して小口の個人を嵌め込む、昔ながらの「株屋」の発想から、早いところ脱却してほしいものです。がんばれ、日の丸証券!
そうは言っても、日本の証券会社の投資銀行業務が、まだまだこれからなのであれば、当面のビジネスモデルとしては、個人投資家向けの投資信託に注力して稼がなくてはならないのでしょう。
注力するなら、断然、利幅の厚いアクティブファンド!となるのは、彼らからすれば当然(必然?)かもしれません。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。
2006/12/14 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その1)
2006/12/16 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その2) 市場の要因
の続きです。インデックス投資が個人投資家の間でだけマイナーな、「金融業界の要因」について考えてみます。
(2)金融業界の要因
○コストが安く金融業界が儲からないから
一般的に、インデックスファンドは、アクティブファンドよりも信託報酬が安いです。
ちなみに、国内株式ファンドの信託報酬の平均を比較すると、2006年4月末現在、
アクティブ型 1.487%
インデックス型 0.825%
(出典:モーニングスターのWEBサイト)
と、インデックスファンドの信託報酬の低コストは明らかです。(個人的にはこれでも高いと思いますが)
インデックスファンドは、信託報酬だけでなく、販売手数料も安いものが多いです(ノーロードも多い)。
金融業界としては、インデックスファンドは、販売しても利幅が薄い商品ということになりますので、いきおい、利幅の厚いアクティブファンドの販売にいそしむということになります。
それに加えて、機関投資家の間では、「(その1)の記事」で指摘させていただいたように、「インデックス運用ブーム」が起こり、コスト競争が激化し、運用報酬が下がるところまで下がりきってしまいました。
個人投資家の間でも、国内株式の株式売買手数料について言えばは、もはや世界最低水準と言っていいレベルまで、下がりきってしまいました。
このような事情もあり、金融業界としては、行動ファイナンス理論を販売のマーケティングに悪用してでも、個人投資家からは、投資信託でたくさんの手数料を稼がなければならない懐事情なのでしょう。ああ、お寒い。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。
○日本の証券会社のビジネスモデルが旧態依然だから
上記のように、懐がお寒くなってしまった日本の証券会社ですが、インデックス投資先進国である米国の証券会社はいったい何で儲けているのでしょうか?
ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリルリンチなど、米国の大手証券会社は、日本の証券会社のように株式売買や投資信託の運用だけではなく、主にM&A仲介業務などのいわゆる「投資銀行」業務の方にシフトして、飯を食っているようです。
最近は、日本企業の大型M&Aのニュースを見ることが多くなってきました。
たしかに、そのようなビッグディールに顔を出しているのは、野村證券や大和証券ではなく、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーであることが多いような気がします。
日本の大手証券会社は、大口を優遇して小口の個人を嵌め込む、昔ながらの「株屋」の発想から、早いところ脱却してほしいものです。がんばれ、日の丸証券!
そうは言っても、日本の証券会社の投資銀行業務が、まだまだこれからなのであれば、当面のビジネスモデルとしては、個人投資家向けの投資信託に注力して稼がなくてはならないのでしょう。
注力するなら、断然、利幅の厚いアクティブファンド!となるのは、彼らからすれば当然(必然?)かもしれません。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。
○金融業界の多くのお仕事が不要になってしまうから
インデックス投資が最も効率的と帰結する「現代ポートフォリオ理論」によれば、株価の動きはランダムであり、「何ひとつとして将来の株価を予想する役には立たない」ことになっています。
これが本当に正しいかどうかは別として、現代ポートフォリオ理論がサポートするインデックス投資を追及していくと、証券会社のお仕事、例えば、アナリスト、エコノミスト、ストラテジストなどは、すべて不要という結論にたどり着いてしまいます。
だって、将来の株価を予想することは「不可能」だというのですから。
また、投資アドバイザー、情報提供サービス会社、出版社、イベント会社などの証券周辺業界のお仕事も、大きなダメージを受けることになるでしょう。
金融業界にお勤めの皆さんは、自分たちの仕事の存在意義、もっと言ったら、自分たちの生活がかかっているわけですから、場面場面で、個人投資家の目を、インデックス投資からそむけさせようとする気持ちが働いたとしても不思議ではありません。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。
もちろんこれ以外にも「金融業界の要因」はあるかと思いますが、個人的には上記の三点が大きいのではないかと見ています。
なお、金融業界にお勤めのかたにとって、一部不愉快な表現がありましたことをお詫びいたします。
でも、苦言を申し立てる客は、相手に期待しているからこそ、あえて苦言を申し立てているのであって、期待してなければ最初から無視するだけです。どうかお許しを。
次回は、「個人投資家の要因」について考えてみたいと思います。
(次回に続く)
インデックス投資が最も効率的と帰結する「現代ポートフォリオ理論」によれば、株価の動きはランダムであり、「何ひとつとして将来の株価を予想する役には立たない」ことになっています。
これが本当に正しいかどうかは別として、現代ポートフォリオ理論がサポートするインデックス投資を追及していくと、証券会社のお仕事、例えば、アナリスト、エコノミスト、ストラテジストなどは、すべて不要という結論にたどり着いてしまいます。
だって、将来の株価を予想することは「不可能」だというのですから。
また、投資アドバイザー、情報提供サービス会社、出版社、イベント会社などの証券周辺業界のお仕事も、大きなダメージを受けることになるでしょう。
金融業界にお勤めの皆さんは、自分たちの仕事の存在意義、もっと言ったら、自分たちの生活がかかっているわけですから、場面場面で、個人投資家の目を、インデックス投資からそむけさせようとする気持ちが働いたとしても不思議ではありません。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。
もちろんこれ以外にも「金融業界の要因」はあるかと思いますが、個人的には上記の三点が大きいのではないかと見ています。
なお、金融業界にお勤めのかたにとって、一部不愉快な表現がありましたことをお詫びいたします。
でも、苦言を申し立てる客は、相手に期待しているからこそ、あえて苦言を申し立てているのであって、期待してなければ最初から無視するだけです。どうかお許しを。
次回は、「個人投資家の要因」について考えてみたいと思います。
(次回に続く)
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