なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その4) 個人投資家の要因
水瀬ケンイチ
前回の記事、
2006/12/14 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その1)
2006/12/16 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その2) 市場の要因
2006/12/17 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その3) 金融業界の要因
の続きです。インデックス投資が、個人投資家の間でだけマイナーな、「個人投資家の要因」について考えてみます。
もしかしたら、これが一番くせものかも…?
(3)個人投資家の要因
○ギャンブル性がない(面白味がない)から
インデックス投資は、インデックス商品を一度買ったらあとは持ち続けるだけ、いわゆるバイ&ホールド戦略が基本です。
個別株投資のように、企業の事業内容や財務内容を詳しく調べたりする必要はありません。
また、投資タイミングについても、リアルタイムチャートや板情報を見ながら、「よし、今だ!」というような、瞬間的で息詰まる判断も必要ありません。
更に、投資によって得られるリターンも、それぞれの資産クラス(国内株式・国内債券・外国株式・外国債券)の期待リターン(せいぜい年率10%以下でしょう)と同じであります。
当然、デイトレで一発逆転!とか、奇跡の大暴騰!とか、あっという間に億万長者!というような、ドキドキ感、ワクワク感とは無縁です。(その分リスクも低いのですが)
僕も昔は、デイトレードやバリュー投資(もどき)をやっていた時期もあるので、感覚的に理解できるのですが、これらの投資はとても楽しいものです。もっと言ったら、一種の「ギャンブル性」があると思います。
それに対して、インデックス投資は、実に退屈であります。面白みがありません。毎日出てくる「ストップ高!」などのニュースを横目に、なーんにもすることがないのですから。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
○裏付けとなる理論の理解に数学が出てきて難しいから
インデックス投資の理論的裏付けになる「現代ポートフォリオ理論」をちゃんと理解するためには、分散・標準偏差など数学の知識(微分・積分というやつ)が必要になります。
僕を含めて私立文系大学卒の人間にとって、数学の微分・積分は、全力で避けるべき「鬼門」であったはずです(笑)。
僕も、投資を勉強しだして間もない頃、「ウォール街のランダム・ウォーカー
」などを読んで、「わが人生で、まさか、こんなところで『数学の壁』にブチ当たるとは…」と呆然としたものです。
誰だって、お金は儲けたいけれど、数学の勉強はしたくはありません。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
余談になりますが、これをご覧の学生諸君!!
学校で習う大半の勉強は、社会に出てから直接は役に立たないかもしれないけど、「微分・積分」は思いっ切り金儲けの役に立つぞ!!と声を大にして言いたい(笑)。
更に余談になりますが、現代ポートフォリオ理論の理解は難しくても、理論から導かれる最終結論は、幸いにも、あきれるほど簡単です。
「世界中のインデックスファンドを買って放置せよ」
たったこれだけです。
2006/12/14 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その1)
2006/12/16 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その2) 市場の要因
2006/12/17 なぜ、インデックス投資はマイナーなのかを考える (その3) 金融業界の要因
の続きです。インデックス投資が、個人投資家の間でだけマイナーな、「個人投資家の要因」について考えてみます。
もしかしたら、これが一番くせものかも…?
(3)個人投資家の要因
○ギャンブル性がない(面白味がない)から
インデックス投資は、インデックス商品を一度買ったらあとは持ち続けるだけ、いわゆるバイ&ホールド戦略が基本です。
個別株投資のように、企業の事業内容や財務内容を詳しく調べたりする必要はありません。
また、投資タイミングについても、リアルタイムチャートや板情報を見ながら、「よし、今だ!」というような、瞬間的で息詰まる判断も必要ありません。
更に、投資によって得られるリターンも、それぞれの資産クラス(国内株式・国内債券・外国株式・外国債券)の期待リターン(せいぜい年率10%以下でしょう)と同じであります。
当然、デイトレで一発逆転!とか、奇跡の大暴騰!とか、あっという間に億万長者!というような、ドキドキ感、ワクワク感とは無縁です。(その分リスクも低いのですが)
僕も昔は、デイトレードやバリュー投資(もどき)をやっていた時期もあるので、感覚的に理解できるのですが、これらの投資はとても楽しいものです。もっと言ったら、一種の「ギャンブル性」があると思います。
それに対して、インデックス投資は、実に退屈であります。面白みがありません。毎日出てくる「ストップ高!」などのニュースを横目に、なーんにもすることがないのですから。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
○裏付けとなる理論の理解に数学が出てきて難しいから
インデックス投資の理論的裏付けになる「現代ポートフォリオ理論」をちゃんと理解するためには、分散・標準偏差など数学の知識(微分・積分というやつ)が必要になります。
僕を含めて私立文系大学卒の人間にとって、数学の微分・積分は、全力で避けるべき「鬼門」であったはずです(笑)。
僕も、投資を勉強しだして間もない頃、「ウォール街のランダム・ウォーカー
誰だって、お金は儲けたいけれど、数学の勉強はしたくはありません。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
余談になりますが、これをご覧の学生諸君!!
学校で習う大半の勉強は、社会に出てから直接は役に立たないかもしれないけど、「微分・積分」は思いっ切り金儲けの役に立つぞ!!と声を大にして言いたい(笑)。
更に余談になりますが、現代ポートフォリオ理論の理解は難しくても、理論から導かれる最終結論は、幸いにも、あきれるほど簡単です。
「世界中のインデックスファンドを買って放置せよ」
たったこれだけです。
○自分はインデックスなど軽く超えられる考える自信家が多いから
投資家の自信過剰。行動ファイナンスではこれを、「オーバーコンフィデンス」と呼んでいるようです。
そのかたが、自信どおりにインデックスを超える実力を持っているのであれば、インデックス投資などする必要はないと思います。
僕にはその実力がないので、心の底から羨ましく思います。
しかしながら、投資信託の世界では、アクティブファンドの8割以上がインデックスファンドに実際の成績で負けている現実を考えれば、投資家側に明らかなオーバーコンフィデンスが存在すると言い切ってしまっていいのではないでしょうか。
インデックスに負けているアクティブファンドを、相当数の投資家が「インデックスに勝てる」と判断した(=間違えた)ことになりますから、これは明らかな自信過剰でしょう。
個別株投資については、個々の投資家の実績データがないので、なんとも言えません。
もしかしたら、自信どおりの実力を持っており、かつ、インデックスを上回る実績をあげ続けているかたも、相当数いらっしゃるのではないかと想像しております(特に日本市場では)。
その影で、自信もむなしく、市場から退場させられてしまう投資家も相当数いるとは思いますが…。
個別株・投資信託のいずれにしても、過剰であるかないかは別として、個人投資家が「自信満々」だということは、多くの個人投資家が、インデックス程度のリターンではもの足りないと考えているということになります。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
○インデックス投資のことを最初から知らないから
「最近、株が流行っているようだから、コンビニで買った雑誌に書いてあったとおりに、ちょっとやってみようかなぁ…チャートの見方…フムフム…」
というような感じで投資を始められるかたもいらっしゃると思います。
自分自身の生活パターンを考えれば、「会社帰りのコンビニで買った雑誌」、「テレビでやっていた投資信託のCM」、「ニュースで見た億万長者のニートデイトレーダー」などをキッカケに投資に興味を持つのは、まあ自然な形だとは思います。
でも、「手近なところ」に「たまたま」あった情報のみで、投資を始められてしまうのは、ちょっと危ないのではないかと思います。
なぜなら、金融業界側は、個人投資家になるべく高いアクティブファンドを売りたい事情があったり(詳細は前回の記事参照)、個人投資家により多くの売買をしてもらって手数料を稼ぎたい(稼がなければならない)事情があったりしますので、投資に興味を持った初心者が、「手近なところ」で「たまたま」見つかるように、金融業界側が儲かる投資法の情報を、意図的に配置している可能性があるからです。
もし、投資に興味を持った初心者が、最初に、「ファンダメンタル分析、テクニカル分析、インデックス投資の中から、好きな投資法を選んでね!」と言われていたら、インデックス投資を選ぶかたが相当数いるのではないかと僕は推測します。なにせ、最も「楽ちん」な投資法ですから。(ただし、裏付けとなる理論の理解を無視すればです)
でも、世の中そうはなっていないのが現実です。
巷に溢れる投資情報は、金融業界が儲かるやり方で埋め尽くされているといっても過言ではないと思います。少なくとも、インデックス投資は金融業界にとって忌むべき存在でしょうから、なるべく初心者の目に触れないよう、小さく触れるだけ(もしくはまったく触れない)ということになります。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
---
ここまで、いくつかの記事にわたり、機関投資家の間ではメジャーなインデックス投資が、個人投資家の間でだけ、“超”マイナーな理由を、自分なり考え、これが大きいんじゃないかなと思われる要因を、(1)市場、(2)金融業界、(3)個人投資家、の3つの面から整理してみました。
金融業界側だけでなく、個人投資家側にも、たくさんの要因があって、インデックス投資はマイナーなのですね。
その要因の中には、もうどうにもならない問題もありましたが、一方で、なんとか改善でき得る問題もあったように思います。
問題さえ明らかになれば、さっそく対策を検討(まずはブレーンストーミングから)して、張り切って「どうしたらインデックス投資をメジャーにできるのか」を考えるというステップに移りたいところですが(企画職の悲しいサガ…)、実は、そうはなりません。
何故か?それはまた次回。
(続きは次回)
投資家の自信過剰。行動ファイナンスではこれを、「オーバーコンフィデンス」と呼んでいるようです。
そのかたが、自信どおりにインデックスを超える実力を持っているのであれば、インデックス投資などする必要はないと思います。
僕にはその実力がないので、心の底から羨ましく思います。
しかしながら、投資信託の世界では、アクティブファンドの8割以上がインデックスファンドに実際の成績で負けている現実を考えれば、投資家側に明らかなオーバーコンフィデンスが存在すると言い切ってしまっていいのではないでしょうか。
インデックスに負けているアクティブファンドを、相当数の投資家が「インデックスに勝てる」と判断した(=間違えた)ことになりますから、これは明らかな自信過剰でしょう。
個別株投資については、個々の投資家の実績データがないので、なんとも言えません。
もしかしたら、自信どおりの実力を持っており、かつ、インデックスを上回る実績をあげ続けているかたも、相当数いらっしゃるのではないかと想像しております(特に日本市場では)。
その影で、自信もむなしく、市場から退場させられてしまう投資家も相当数いるとは思いますが…。
個別株・投資信託のいずれにしても、過剰であるかないかは別として、個人投資家が「自信満々」だということは、多くの個人投資家が、インデックス程度のリターンではもの足りないと考えているということになります。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
○インデックス投資のことを最初から知らないから
「最近、株が流行っているようだから、コンビニで買った雑誌に書いてあったとおりに、ちょっとやってみようかなぁ…チャートの見方…フムフム…」
というような感じで投資を始められるかたもいらっしゃると思います。
自分自身の生活パターンを考えれば、「会社帰りのコンビニで買った雑誌」、「テレビでやっていた投資信託のCM」、「ニュースで見た億万長者のニートデイトレーダー」などをキッカケに投資に興味を持つのは、まあ自然な形だとは思います。
でも、「手近なところ」に「たまたま」あった情報のみで、投資を始められてしまうのは、ちょっと危ないのではないかと思います。
なぜなら、金融業界側は、個人投資家になるべく高いアクティブファンドを売りたい事情があったり(詳細は前回の記事参照)、個人投資家により多くの売買をしてもらって手数料を稼ぎたい(稼がなければならない)事情があったりしますので、投資に興味を持った初心者が、「手近なところ」で「たまたま」見つかるように、金融業界側が儲かる投資法の情報を、意図的に配置している可能性があるからです。
もし、投資に興味を持った初心者が、最初に、「ファンダメンタル分析、テクニカル分析、インデックス投資の中から、好きな投資法を選んでね!」と言われていたら、インデックス投資を選ぶかたが相当数いるのではないかと僕は推測します。なにせ、最も「楽ちん」な投資法ですから。(ただし、裏付けとなる理論の理解を無視すればです)
でも、世の中そうはなっていないのが現実です。
巷に溢れる投資情報は、金融業界が儲かるやり方で埋め尽くされているといっても過言ではないと思います。少なくとも、インデックス投資は金融業界にとって忌むべき存在でしょうから、なるべく初心者の目に触れないよう、小さく触れるだけ(もしくはまったく触れない)ということになります。
そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。
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ここまで、いくつかの記事にわたり、機関投資家の間ではメジャーなインデックス投資が、個人投資家の間でだけ、“超”マイナーな理由を、自分なり考え、これが大きいんじゃないかなと思われる要因を、(1)市場、(2)金融業界、(3)個人投資家、の3つの面から整理してみました。
金融業界側だけでなく、個人投資家側にも、たくさんの要因があって、インデックス投資はマイナーなのですね。
その要因の中には、もうどうにもならない問題もありましたが、一方で、なんとか改善でき得る問題もあったように思います。
問題さえ明らかになれば、さっそく対策を検討(まずはブレーンストーミングから)して、張り切って「どうしたらインデックス投資をメジャーにできるのか」を考えるというステップに移りたいところですが(企画職の悲しいサガ…)、実は、そうはなりません。
何故か?それはまた次回。
(続きは次回)
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