国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(19年11月)、マーケットメイク対象外ETFの乖離が大幅拡大。薄々感じていたことが確信へ
水瀬ケンイチ

個人投資家の期待を集めながらも、「市場価格と基準価額の乖離」の大きさが課題と言われてきた国内ETF。
国際分散投資に活用できる主要なETFについて、2019年11月末までの乖離率を調べてみました。そして、以前から薄々感じていたことが確信めいたものになりました。
まずは、米国や英国など日本を除く先進国に分散投資できる「先進国株式」クラスのETFです。

1680 日興 上場MSCIコクサイ株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -1.18%
1550 MAXIS 海外株ETF (信託報酬 年0.15%) 乖離率 -1.13%
1657 iシェアーズ・コア MSCI 先進国株 (信託報酬 年0.19%) 乖離率 -0.01% ※マーケットメイク制度対象ETF
2513 NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.17%) 乖離率 -0.21% ※マーケットメイク制度対象ETF
先進国株式クラスのウォッチ銘柄では、「日興 上場MSCIコクサイ株」(銘柄コード1680)と「MAXIS 海外株ETF」(銘柄コード1550)が、「市場価格と基準価額の乖離」が個人的許容範囲の±1.0%の範囲からハミ出て大幅に乖離していました。
これらの銘柄は、マーケットメイク制度対象ではなく、非対象銘柄です。
乖離率がいちばん小さく優秀だったのは、「iシェアーズ・コア MSCI 先進国株」(銘柄コード1657) でした。同じく乖離が小さかった「NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし)」(銘柄コード2513)とともに、マーケットメイク制度対象銘柄です。
マーケットメイク制度対象と非対象の銘柄間に、ここまで大きく乖離の差が出るとは……。
次に、中国・ロシア・インドなどの新興国に分散投資できる「新興国株式」クラスのETFです。

1681 日興 上場MSCIエマージング株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -1.16%
1658 iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 (信託報酬 年0.23%) 乖離率 -0.06% ※マーケットメイク制度対象ETF
2520 NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.19%) 乖離率 -0.03% ※マーケットメイク制度対象ETF
新興国株式クラスのウォッチ銘柄では、「日興 上場MSCIエマージング株」(銘柄コード1681)が、「市場価格と基準価額の乖離」が個人的許容範囲の±1.0%の範囲からハミ出て大幅に乖離していました。
乖離率が小さく優秀だったのは、「NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし)」(銘柄コード2520) でした。同じく乖離が小さかった「iシェアーズ・コア MSCI 新興国株」(銘柄コード1658)とともにマーケットメイク制度対象銘柄です。
マーケットメイク制度は、ETFの流動性向上を目的に、東証がマーケットメイカーにインセンティブを設定し、常時気配提示を義務付ける制度で、2018年7月から開始されています。また、2019年4月より、インセンティブを強化した「マーケットメイク制度 Version2.0」が開始されています。
今まで毎月ウォッチしている中で、マーケットメイク制度対象銘柄は、相対的に乖離率が低くなっていることが多かったです。逆に、非対象銘柄は乖離率が高い場合が度々ありました。
薄々感じていたことが、今月、確信めいたものになりました。
もはや、国際分散投資のための国内ETFは、マーケットメイク制度対象銘柄以外ダメなのではないか。
先進国株式クラスと新興国株式クラスという異なる資産クラスにおいて、マーケットメイク制度「非」対象銘柄は、同様に乖離率が±1.0%を超えています。
マーケットメイク制度「非」対象銘柄は、時々基準価額から1.0%も上振れしたり下振れしたりして、いくら運用コストである信託報酬を0.0X%引き下げたとしても、その何十年分、割高に買ってしまったり、割安に売ってしまったりする可能性がある。少なくとも、マーケットメイク制度対象銘柄よりは、フェアな価格ではない取引を強いられる可能性が高い。
思えば、日興アセットマネジメントの1680、1681といった国内ETF銘柄は、10年以上前の国内ETFの黎明期から、貴重な国際分散投資ツールでした。(当時はインデックスファンドがETFよりずっと高コストでした)
運用会社も、ETFの運用について様々な情報発信(WEBサイトやSNSなど)や勉強会(ブロガーミーティングなど)の実施、運用方法の改善(先物運用→現物運用など)などに取り組まれてきたと思います。私も微力ながら協力できるところは協力してきました。
しかしながら、この10年間、時間が経てばあるいは改善する可能性があるのではないかと期待し続けてきましたが、現在でも1680、1681の市場価格と基準価額は、安定期と大幅乖離をくり返しています。
これは、構造的な問題だと思います。
日本のETF市場は、TOPIXや日経225といった日本株式クラス(レバレッジ・インバース型含む)のETFばかりが盛んに売買され、海外資産クラスのETFはあまり取引がなく、流動性は低いままです。運用会社も、どちらかというと個人投資家というよりは、大量のETF購入を行う日銀の方ばかりを見て仕事をしているように見えます。
東京証券取引所もあの手この手で、マーケットメイカーや指定参加者たちを鼓舞してきましたが、なかなか効果が出ていませんでした。
上記の「マーケットメイク制度 Version2.0」開始により、東証がマーケットメイカーにインセンティブ(お金)を設定し、常時気配提示を義務付ける制度が本格運用しはじめて、ようやく流動性の向上とあわせて、相対的に乖離率が低いETF銘柄が出てきました。
しかし、残念ながら、1680、1681といった老舗銘柄はマーケットメイク制度対象銘柄には選ばれておらず、今回のように乖離率にも大きな差がついてしまったように見えます。
恩を仇で返すようなことは言いたくありませんが、比較対象銘柄の中で1680、1681の乖離率は、今まで努力してきたから看過するとかしないとか、そういう感情的な話とは無関係に、他の銘柄では出来ていることが出来ていない(個人投資家にとって不利)と言われてしまっても仕方がないと思います。
もちろん、もっとマイナーでニッチな銘柄には、もっともっとダメダメなETFは他にもたくさんあります。「NEXT FUNDS 南アフリカ株式指数上場投信」(銘柄コード1323)の11月の乖離率は -6.93%、「One ETF 国内金先物」(銘柄コード1683)の乖離率は -8.29%と、ETFとしては「論外」の乖離を続けている銘柄もあるにはあります。
しかし、個人投資家の人生を支える資産運用のコアにできるようなスタンダードな資産クラス(先進国株式・新興国株式)のETFは、より高品質であるべきだし、「iDeCo」や「つみたてNISA」に対応しているインデックスファンドとの競争もあって、国内ETFに向けられる投資家の目は厳しいです。
最近はインデックスファンドの低コスト化に押され気味の国内ETFですが、すでに個別株投資をメインでやっているかたや、分配金を再投資するのではなく「現金で受け取り使っていきたい」というかたは、インデックスファンドよりもETFで国際分散投資した方がなじみやすいでしょう。
そんな中で、国内ETFを選ぶとしたら、マーケットメイク制度対象銘柄と非対象銘柄では、迷わずマーケットメイク制度対象銘柄を選択するべきだという確信めいたものができつつあります。
マーケットメイク制度対象銘柄であれば、今後ずっと安心なのかもわかりませんので、投資家がいつでも安心して国内ETFを売買できるように、国内ETFの関係各所にはがんばってほしいです。
<お得情報>
上記の「iシェアーズ」や「NEXT FUNDS」シリーズの対象ETFが、楽天証券は「売買手数料無料」なのでおすすめです。何百万円、何千万円、何億円売買しても手数料無料なのは将来にわたり大きい。
<ご参考>
当ブログによく質問が寄せられる「なぜ、市場価格と基準価額が乖離するのか?」については、下記の東証WEBサイトに端的な説明がありますのでご参照ください。

1680 日興 上場MSCIコクサイ株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -1.18%
1550 MAXIS 海外株ETF (信託報酬 年0.15%) 乖離率 -1.13%
1657 iシェアーズ・コア MSCI 先進国株 (信託報酬 年0.19%) 乖離率 -0.01% ※マーケットメイク制度対象ETF
2513 NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.17%) 乖離率 -0.21% ※マーケットメイク制度対象ETF
先進国株式クラスのウォッチ銘柄では、「日興 上場MSCIコクサイ株」(銘柄コード1680)と「MAXIS 海外株ETF」(銘柄コード1550)が、「市場価格と基準価額の乖離」が個人的許容範囲の±1.0%の範囲からハミ出て大幅に乖離していました。
これらの銘柄は、マーケットメイク制度対象ではなく、非対象銘柄です。
乖離率がいちばん小さく優秀だったのは、「iシェアーズ・コア MSCI 先進国株」(銘柄コード1657) でした。同じく乖離が小さかった「NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし)」(銘柄コード2513)とともに、マーケットメイク制度対象銘柄です。
マーケットメイク制度対象と非対象の銘柄間に、ここまで大きく乖離の差が出るとは……。
次に、中国・ロシア・インドなどの新興国に分散投資できる「新興国株式」クラスのETFです。

1681 日興 上場MSCIエマージング株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -1.16%
1658 iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 (信託報酬 年0.23%) 乖離率 -0.06% ※マーケットメイク制度対象ETF
2520 NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.19%) 乖離率 -0.03% ※マーケットメイク制度対象ETF
新興国株式クラスのウォッチ銘柄では、「日興 上場MSCIエマージング株」(銘柄コード1681)が、「市場価格と基準価額の乖離」が個人的許容範囲の±1.0%の範囲からハミ出て大幅に乖離していました。
乖離率が小さく優秀だったのは、「NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし)」(銘柄コード2520) でした。同じく乖離が小さかった「iシェアーズ・コア MSCI 新興国株」(銘柄コード1658)とともにマーケットメイク制度対象銘柄です。
マーケットメイク制度は、ETFの流動性向上を目的に、東証がマーケットメイカーにインセンティブを設定し、常時気配提示を義務付ける制度で、2018年7月から開始されています。また、2019年4月より、インセンティブを強化した「マーケットメイク制度 Version2.0」が開始されています。
ETFマーケットメイク制度Version 2.0の開始について | 日本取引所グループ
日本取引所グループは、東京証券取引所及び大阪取引所などを傘下に持つアジアを代表する取引所グループです。
今まで毎月ウォッチしている中で、マーケットメイク制度対象銘柄は、相対的に乖離率が低くなっていることが多かったです。逆に、非対象銘柄は乖離率が高い場合が度々ありました。
薄々感じていたことが、今月、確信めいたものになりました。
もはや、国際分散投資のための国内ETFは、マーケットメイク制度対象銘柄以外ダメなのではないか。
先進国株式クラスと新興国株式クラスという異なる資産クラスにおいて、マーケットメイク制度「非」対象銘柄は、同様に乖離率が±1.0%を超えています。
マーケットメイク制度「非」対象銘柄は、時々基準価額から1.0%も上振れしたり下振れしたりして、いくら運用コストである信託報酬を0.0X%引き下げたとしても、その何十年分、割高に買ってしまったり、割安に売ってしまったりする可能性がある。少なくとも、マーケットメイク制度対象銘柄よりは、フェアな価格ではない取引を強いられる可能性が高い。
思えば、日興アセットマネジメントの1680、1681といった国内ETF銘柄は、10年以上前の国内ETFの黎明期から、貴重な国際分散投資ツールでした。(当時はインデックスファンドがETFよりずっと高コストでした)
運用会社も、ETFの運用について様々な情報発信(WEBサイトやSNSなど)や勉強会(ブロガーミーティングなど)の実施、運用方法の改善(先物運用→現物運用など)などに取り組まれてきたと思います。私も微力ながら協力できるところは協力してきました。
しかしながら、この10年間、時間が経てばあるいは改善する可能性があるのではないかと期待し続けてきましたが、現在でも1680、1681の市場価格と基準価額は、安定期と大幅乖離をくり返しています。
これは、構造的な問題だと思います。
日本のETF市場は、TOPIXや日経225といった日本株式クラス(レバレッジ・インバース型含む)のETFばかりが盛んに売買され、海外資産クラスのETFはあまり取引がなく、流動性は低いままです。運用会社も、どちらかというと個人投資家というよりは、大量のETF購入を行う日銀の方ばかりを見て仕事をしているように見えます。
東京証券取引所もあの手この手で、マーケットメイカーや指定参加者たちを鼓舞してきましたが、なかなか効果が出ていませんでした。
上記の「マーケットメイク制度 Version2.0」開始により、東証がマーケットメイカーにインセンティブ(お金)を設定し、常時気配提示を義務付ける制度が本格運用しはじめて、ようやく流動性の向上とあわせて、相対的に乖離率が低いETF銘柄が出てきました。
しかし、残念ながら、1680、1681といった老舗銘柄はマーケットメイク制度対象銘柄には選ばれておらず、今回のように乖離率にも大きな差がついてしまったように見えます。
恩を仇で返すようなことは言いたくありませんが、比較対象銘柄の中で1680、1681の乖離率は、今まで努力してきたから看過するとかしないとか、そういう感情的な話とは無関係に、他の銘柄では出来ていることが出来ていない(個人投資家にとって不利)と言われてしまっても仕方がないと思います。
もちろん、もっとマイナーでニッチな銘柄には、もっともっとダメダメなETFは他にもたくさんあります。「NEXT FUNDS 南アフリカ株式指数上場投信」(銘柄コード1323)の11月の乖離率は -6.93%、「One ETF 国内金先物」(銘柄コード1683)の乖離率は -8.29%と、ETFとしては「論外」の乖離を続けている銘柄もあるにはあります。
しかし、個人投資家の人生を支える資産運用のコアにできるようなスタンダードな資産クラス(先進国株式・新興国株式)のETFは、より高品質であるべきだし、「iDeCo」や「つみたてNISA」に対応しているインデックスファンドとの競争もあって、国内ETFに向けられる投資家の目は厳しいです。
最近はインデックスファンドの低コスト化に押され気味の国内ETFですが、すでに個別株投資をメインでやっているかたや、分配金を再投資するのではなく「現金で受け取り使っていきたい」というかたは、インデックスファンドよりもETFで国際分散投資した方がなじみやすいでしょう。
そんな中で、国内ETFを選ぶとしたら、マーケットメイク制度対象銘柄と非対象銘柄では、迷わずマーケットメイク制度対象銘柄を選択するべきだという確信めいたものができつつあります。
マーケットメイク制度対象銘柄であれば、今後ずっと安心なのかもわかりませんので、投資家がいつでも安心して国内ETFを売買できるように、国内ETFの関係各所にはがんばってほしいです。
<お得情報>
上記の「iシェアーズ」や「NEXT FUNDS」シリーズの対象ETFが、楽天証券は「売買手数料無料」なのでおすすめです。何百万円、何千万円、何億円売買しても手数料無料なのは将来にわたり大きい。
楽天証券、野村アセットのETF「NEXT FUNDS」シリーズ49銘柄の売買手数料も0円に
楽天証券は、「iシェアーズ」「MAXIS」シリーズなどのETFの売買手数料0円を打ち出していますが、2019年4月1日から、野村アセットマネジメントが運用するETFブランド「NEXT FUNDS」シリーズのうち49銘柄の売買手数料も0円にすると発表しました。...
<ご参考>
当ブログによく質問が寄せられる「なぜ、市場価格と基準価額が乖離するのか?」については、下記の東証WEBサイトに端的な説明がありますのでご参照ください。
日本取引所グループは、東京証券取引所及び大阪取引所などを傘下に持つアジアを代表する取引所グループです。
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