大和総研の新NISA(案)の表から金融庁の意図がちょっと見えてきた?
水瀬ケンイチ
大和総研グループのWEBサイトに、一般NISAの新制度(以下、新NISA)の案についてのレポートが掲載されています。
一般NISA・つみたてNISAの期間延長が決定 | 大和総研グループ
2020年度税制改正大綱速報—ジュニアNISAは廃止へ
レポートは、2019年12月12日に自由民主党・公明党が決定した「令和2年度税制改正大綱」をもとに、新NISA(案)とジュニアNISAの終了についてまとめられています。
個人的に、新NISA(案)については、新聞報道を見る限り複雑怪奇さばかりが目立ち、何を目的にしているのかよくわかっていませんでした。
複雑怪奇な2階建て新NISAの日経新聞報道。脳内で円卓会議を妄想 - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
新NISA(案)の良いまとめ情報を探していたのですが、このレポートでまとめられた表がわかりやすかったので、その部分のみ引用させていただきます。

(一般NISA・つみたてNISAの期間延長が決定 2019年12月13日 | 大和総研グループ | 是枝 俊悟より引用)
上記の表によると、新NISA(案)は、2024年~2028年の5年間で610万円が累計非課税枠になります。122万円×5年間で610万円。現行の一般NISAが、120万円×5年間で600万円なので、10万円だけ非課税枠が増えています。
特徴的なのが、20万円の「1階部分」で積立投資を行った場合に限り、102万円の「2階部分」を利用できるという2階建ての建てつけです。
1階部分に投資できる商品は、現在の「つみたてNISA」と同じとなっています。
一部報道では、「1階部分は低リスク投信のみ」とありましたが、つみたてNISAの対象商品と同じであるなら、たとえば新興国株式100%のインデックスファンドなど相対的にハイリスクな商品も含まれており、必ずしも低リスク商品だけではないので、注意が必要だと思いました。
NISA投資、2階建てに 低リスク商品に20万円枠 :日本経済新聞
また、1階部分は投資タイミングが積立投資のみとあります。1階部分の縛りは対象商品だけかと思っていたので意外でした。1階部分で定時定額の積立投資をやっている方だけが、2階部分で個別株やETFのタイミング投資をできる設計です。
これだと1階部分では、現行の一般NISAでは可能だった「相場が安くなったぞ今が買いだ」「上がったから売りだ」といった投資タイミングを図った投資は難しそうです。
つまり、金融庁は、国民に定時定額の積立投資という投資法をもっと普及促進したいのだと思われます。レポートでも「一般NISAの利用者にも積立投資を促す内容になっている」としています。
もちろん、個別株やETFによるタイミング投資も投資法としては全然アリですが、将来の老後資金が年金だけでは不足するという現実を考えた時に、より多くの国民に、よりマイルドな積立投資をベースにして、コツコツと資産形成してほしいと考えているのだと私は感じました。
おまけですが、現行の一般NISA同様、5年間の非課税期間の後にロールオーバー可能というのは朗報でした。これなら、新規資金を投入できるのは5年間ですが、非課税での運用自体は10年間継続できます。
本当は、10年間とはいわずもう5年くらい上乗せしてほしかったし、もっといったら英国ISAのように非課税期間は恒久化してほしいところですが、一歩一歩、利用実績を積み重ねてからというところでしょうか。
以上は私個人の感想ですが、金融庁では、2019年12月19日に個人投資家向けの「NISA関連税制改正説明会」が開催されるようです。そこで金融庁の意図が明らかになると思われます。
12月19日 金融庁によるNISA関連税制改正説明会(東京都)
あいにく私は仕事の出張で参加できないのですが、参加した方々からの情報発信を期待して待ちたいと思います。
いずれにしても、現行NISA同様、新NISA(案)もまだまだ発展途上であり、少々クセのある制度になっています。やはり、現行NISAやつみたてNISAと同様に、「自分の運用方針に利用できる部分は利用する」というスタンスで臨むのが良さそうです。
投資家にとって非課税は美味しいですが、非課税枠を目一杯まで活用することに血まなこになるあまり、自分の運用方針と異なる商品や方法で投資をしてしまうのは、本末転倒なので避けたいですね。
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