高配当株への投資、なにか勘違いしてませんか?
水瀬ケンイチ
SNSを見ていると、最近は高配当株投資が流行していて、「個別株投資といえば高配当株投資」といった様相を呈しています。
ひと昔前まで、個別株投資といえばバリュー投資、特に「低PER投資」だったように記憶していますが、ファッションの流行と同じく、投資法の流行の移り変わりもまた早いものです。
さて、トウシルに、そんな高配当株投資についての記事が掲載されています。
夢の配当生活…のはずが老後難民に? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア
カネの切れ目は縁の切れ目。愛情が豊かな家庭でも、うまくいかない家計には不幸が忍び寄るものです。このシリーズでは、本当にあった家計の事件を取り上げ、やってはいけなかった行動と、解決の手段を紹介します。伊藤肇さん(仮名)会社員・(58歳)「…
記事では、高配当の個別株への投資の失敗例が書かれています。小見出しを抜粋すると、
●夢の配当生活実現の予定が、株価の下落で老後危機に!
●安定収入をもくろみ、株式配当に頼る老後はまずいのか?
●配当額だけを見ると比較的安定
●株価推移の比較で、高配当銘柄の落ち込みが浮き彫りに
となっており、ざっくりまとめると、「配当金額は安定して出ていたのに、株価が落ち込んで大きな損失を被った」というお話です。

(夢の配当生活…のはずが老後難民に? | トウシル 楽天証券の投資情報メディアより引用)
2015年以降、高配当株を代表するJT、武田薬品、みずほFG、日産自動車の株は、配当は安定的に出ているものの、株価が市場平均と比べて冴えません。
本来、株式のリターン(トータル・リターン)は、インカムゲイン(配当や分配金)と、キャピタルゲイン(売買差益)を合計したものです。
いくらちょこちょこ配当をもらっても、株価が大幅に下落しては、トータルでは損失となります。
ところが、SNSを見ていると、「配当だけで月○○万円を目指す」「今月の配当は△△万円達成!」というような、配当額だけに着目したような投稿が散見されます。
なかには、毎月の配当だけに着目して、株価の損益を気にしていない思われるかたもいらっしゃいます。ここ数年上げ相場が続いていますので、配当など焼け石に水となってしまうような、株価暴落を経験していないのかもしれません。
昔は、インカムゲインだけをありがたがるのは、いわゆる「分配金利回り」が高い毎月分配型投信を買いこむ高齢者と相場が決まっていました。
分配金競争が過熱していた当時は、投信の基準価額が下がってもいいから分配金は下げるなというトンチンカンな要望をする高齢投資家がいて驚かされたものです。
ところが、高配当株投資においては高齢者だけでなく、若者も「豊かさを実感したい」「毎月キャッシュフローがほしい」などと言って、ことさら配当をありがたがり、株価の方はおろそかになっているように見える方々が散見されます。
言うまでもなく、資産形成期においては、配当は再投資することで効率的に資産を増やすことができます。配当という形でちょこちょこ現金化して引き出していると、当然、資産はそのぶん減ってしまい、複利効果も減ってしまいます。
もちろん、高配当株投資も立派な投資戦略のひとつ。トータル・リターンで見て資産形成できるように投資されている投資家さんもたくさんいらっしゃると思います。
ただ、記事にあるような失敗ケースには配当や「配当生活」への過剰期待があるように思います。
行動ファイナンスの研究で、老若男女にかかわらず、人には「時間選好の歪み」(報酬を早く受け取ることの時間的価値評価が直近重視に歪む傾向)があることがわかっています。
トータル・リターン = インカムゲイン(配当・分配金) + キャピタルゲイン(売買差益)
この公式は日本株だろうが、米国株だろうが、高配当株投資だろうが、低PER投資だろうが、チャート分析だろうが、インデックスファンドの長期投資だろうが、すべて同じです。
チャリンチャリンと定期的に払い出される配当金は魅力的に見えるかもしれませんが、投資のほんとうの成否はトータル・リターンで決まります。それを忘れないようにしたいものです。
●夢の配当生活実現の予定が、株価の下落で老後危機に!
●安定収入をもくろみ、株式配当に頼る老後はまずいのか?
●配当額だけを見ると比較的安定
●株価推移の比較で、高配当銘柄の落ち込みが浮き彫りに
となっており、ざっくりまとめると、「配当金額は安定して出ていたのに、株価が落ち込んで大きな損失を被った」というお話です。

(夢の配当生活…のはずが老後難民に? | トウシル 楽天証券の投資情報メディアより引用)
2015年以降、高配当株を代表するJT、武田薬品、みずほFG、日産自動車の株は、配当は安定的に出ているものの、株価が市場平均と比べて冴えません。
本来、株式のリターン(トータル・リターン)は、インカムゲイン(配当や分配金)と、キャピタルゲイン(売買差益)を合計したものです。
いくらちょこちょこ配当をもらっても、株価が大幅に下落しては、トータルでは損失となります。
ところが、SNSを見ていると、「配当だけで月○○万円を目指す」「今月の配当は△△万円達成!」というような、配当額だけに着目したような投稿が散見されます。
なかには、毎月の配当だけに着目して、株価の損益を気にしていない思われるかたもいらっしゃいます。ここ数年上げ相場が続いていますので、配当など焼け石に水となってしまうような、株価暴落を経験していないのかもしれません。
昔は、インカムゲインだけをありがたがるのは、いわゆる「分配金利回り」が高い毎月分配型投信を買いこむ高齢者と相場が決まっていました。
分配金競争が過熱していた当時は、投信の基準価額が下がってもいいから分配金は下げるなというトンチンカンな要望をする高齢投資家がいて驚かされたものです。
このようなご時世なので毎月の分配金額の減額を実施したところ、基準価格が下がろうがとにかく毎月の分配金額だけは維持してほしいと苦情を言ってきた顧客がいたとのこと。トータルでいくらもらえるかではなくて、最重要なのは毎月の分配金額の維持なのだそうだ。
(2011/07/21 トータルでいくらもらえるかではなく、最重要なのは毎月の分配金額の維持? - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記))
ところが、高配当株投資においては高齢者だけでなく、若者も「豊かさを実感したい」「毎月キャッシュフローがほしい」などと言って、ことさら配当をありがたがり、株価の方はおろそかになっているように見える方々が散見されます。
言うまでもなく、資産形成期においては、配当は再投資することで効率的に資産を増やすことができます。配当という形でちょこちょこ現金化して引き出していると、当然、資産はそのぶん減ってしまい、複利効果も減ってしまいます。
もちろん、高配当株投資も立派な投資戦略のひとつ。トータル・リターンで見て資産形成できるように投資されている投資家さんもたくさんいらっしゃると思います。
ただ、記事にあるような失敗ケースには配当や「配当生活」への過剰期待があるように思います。
行動ファイナンスの研究で、老若男女にかかわらず、人には「時間選好の歪み」(報酬を早く受け取ることの時間的価値評価が直近重視に歪む傾向)があることがわかっています。
トータル・リターン = インカムゲイン(配当・分配金) + キャピタルゲイン(売買差益)
この公式は日本株だろうが、米国株だろうが、高配当株投資だろうが、低PER投資だろうが、チャート分析だろうが、インデックスファンドの長期投資だろうが、すべて同じです。
チャリンチャリンと定期的に払い出される配当金は魅力的に見えるかもしれませんが、投資のほんとうの成否はトータル・リターンで決まります。それを忘れないようにしたいものです。
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