超速で残高3000億円突破した米国株アクティブファンドの実力は?
水瀬ケンイチ
モーニングスターに、純資産残高が急増している米国株アクティブファンドについての記事が掲載されています。
「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」残高3000億円突破、直近10年の設定では2番目の速さ| モーニングスター
その名も「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」。
米国の老舗ミューチャル・ファンド名を冠するこのファンドは、設定(2019年12月27日)から93日目で3000億円台を突破したとのこと。
「設定来の5カ月のうち、19年12月、20年3月、4月の3カ月で純資金流入額が国内公募追加型株式投信全体でトップとなり、20年1月は3位、2月は2位となった。5月(21日まで、モーニングスター推計)も105億円の純資金流入でトップとなっている」という超人気ぶりで、しかも、販売会社はみずほ銀行とみずほ証券のたった2社だけというから、ますますすごいですね。
では肝心のリターンはどうかというと、まあコロナショックもあって、20年4月末時点の3カ月のトータルリターンは▲7.30%です。
しかし、「モーニングスターカテゴリー『国際株式・北米(為替ヘッジなし)』平均(▲14.29%)を6.99%上回り、カテゴリー内上位19%(224本中42位)となった」とモーニングスターでは高く評価されています。
モーニングスターの記事によると、銘柄選択に際しては、米国でアクティブ運用に強いティー・ロウ・プライス社アナリストの調査情報に基づくボトム・アップ・アプローチを重視するとのこと。なんだか良さげです。
ただ、私はアクティブファンドはインデックス(市場平均)を上回ってこそ意味があると考えているので、ベンチマークとなるインデックスとの比較を重視します。
ところが、このファンドはベンチマークの設定がありません。しかたがないので、構成銘柄を調べてみたところ以下のとおりでした。
1位 アマゾン・ドット・コム 8.80%
2位 マイクロソフト 6.90%
3位 アルファベット 5.90% ※グーグルの持株会社
4位 フェイスブック 4.80%
5位 アップル 4.70%
見事に「GAFAM」(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字)です。それも1銘柄で9%や7%など相当大きな比率を占めています。そこで、同じくGAFAMが構成銘柄上位を占めるNASDAQ100指数が近いと考えました。
ちなみに、NASDAQ100指数の構成上位銘柄はこんな感じです。
こちらも見事にGAFAMですね。
ということで、日本で購入できるNASDAQ100指数連動のインデックスファンド「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」と「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」の基準価額を比較してみました。
青の折れ線:ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド
ピンクの折れ線:iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
……え?
超速で残高3000億円突破したアクティブファンド、モーニングスターカテゴリー内上位19%のアクティブファンドなのに、ただのインデックスファンドに負けているんですけど。設定来、値動きは似ていますが、ほぼ常時負けています。
これではアクティブ運用に強い「ティー・ロウ・プライス」の名が泣くというものです。
ちなみに、両ファンドにかかるコストは以下のとおり。
◆ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド
販売手数料 3.30%(税込)・信託報酬 年率 1.463%(税込)
※みずほ銀行で購入した場合
◆iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
販売手数料 なし・信託報酬 年率 0.495%(税込)
※楽天証券やSBI証券などのネット証券で購入した場合
「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」は購入時にかかる販売手数料がなく、保有中ずっとかかる信託報酬は「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」の約3分の1、でもリターンは上。
今後も「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」がリターンでインデックスに負け続けるのかはわかりませんが、コストは確実にリターンを蝕むということはいえます。
たとえ超人気ファンドであっても良いとは限らない、アクティブファンド選びはほんとうに難しいものですね。
米国の老舗ミューチャル・ファンド名を冠するこのファンドは、設定(2019年12月27日)から93日目で3000億円台を突破したとのこと。
「設定来の5カ月のうち、19年12月、20年3月、4月の3カ月で純資金流入額が国内公募追加型株式投信全体でトップとなり、20年1月は3位、2月は2位となった。5月(21日まで、モーニングスター推計)も105億円の純資金流入でトップとなっている」という超人気ぶりで、しかも、販売会社はみずほ銀行とみずほ証券のたった2社だけというから、ますますすごいですね。
では肝心のリターンはどうかというと、まあコロナショックもあって、20年4月末時点の3カ月のトータルリターンは▲7.30%です。
しかし、「モーニングスターカテゴリー『国際株式・北米(為替ヘッジなし)』平均(▲14.29%)を6.99%上回り、カテゴリー内上位19%(224本中42位)となった」とモーニングスターでは高く評価されています。
モーニングスターの記事によると、銘柄選択に際しては、米国でアクティブ運用に強いティー・ロウ・プライス社アナリストの調査情報に基づくボトム・アップ・アプローチを重視するとのこと。なんだか良さげです。
ただ、私はアクティブファンドはインデックス(市場平均)を上回ってこそ意味があると考えているので、ベンチマークとなるインデックスとの比較を重視します。
ところが、このファンドはベンチマークの設定がありません。しかたがないので、構成銘柄を調べてみたところ以下のとおりでした。
1位 アマゾン・ドット・コム 8.80%
2位 マイクロソフト 6.90%
3位 アルファベット 5.90% ※グーグルの持株会社
4位 フェイスブック 4.80%
5位 アップル 4.70%
見事に「GAFAM」(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字)です。それも1銘柄で9%や7%など相当大きな比率を占めています。そこで、同じくGAFAMが構成銘柄上位を占めるNASDAQ100指数が近いと考えました。
ちなみに、NASDAQ100指数の構成上位銘柄はこんな感じです。
こちらも見事にGAFAMですね。
ということで、日本で購入できるNASDAQ100指数連動のインデックスファンド「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」と「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」の基準価額を比較してみました。
青の折れ線:ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド
ピンクの折れ線:iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
……え?
超速で残高3000億円突破したアクティブファンド、モーニングスターカテゴリー内上位19%のアクティブファンドなのに、ただのインデックスファンドに負けているんですけど。設定来、値動きは似ていますが、ほぼ常時負けています。
これではアクティブ運用に強い「ティー・ロウ・プライス」の名が泣くというものです。
ちなみに、両ファンドにかかるコストは以下のとおり。
◆ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド
販売手数料 3.30%(税込)・信託報酬 年率 1.463%(税込)
※みずほ銀行で購入した場合
◆iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
販売手数料 なし・信託報酬 年率 0.495%(税込)
※楽天証券やSBI証券などのネット証券で購入した場合
「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」は購入時にかかる販売手数料がなく、保有中ずっとかかる信託報酬は「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」の約3分の1、でもリターンは上。
今後も「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド」がリターンでインデックスに負け続けるのかはわかりませんが、コストは確実にリターンを蝕むということはいえます。
たとえ超人気ファンドであっても良いとは限らない、アクティブファンド選びはほんとうに難しいものですね。
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