国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(20年5月)、NEXT FUNDS 新興国株式に嵐が!?

水瀬ケンイチ

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個人投資家の期待を集めながらも、「市場価格と基準価額の乖離」の大きさが課題と言われてきた国内ETF。

「市場価格と基準価額の乖離」とは、かんたんにいえば、ETFの中身に対して中身どおりの価格がついているか、それとも割高 or 割安な価格がついてしまっているかを表しています。いちばん良いのは、ETFの中身と価格が同じ(乖離率±0%)というフェアな状態です。

国際分散投資に活用できる主要な国内ETFについて、2020年5月末までの乖離率を調べました。

(1)「先進国株式」クラスのETF

まずは、米国や英国など日本を除く先進国に分散投資できる「先進国株式」クラスのETFです。

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1680 日興 上場MSCIコクサイ株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -0.31% ※マーケットメイク制度対象
1550 MAXIS 海外株ETF (信託報酬 年0.15%) 乖離率 +0.22%
1657 iシェアーズ・コア MSCI 先進国株 (信託報酬 年0.19%) 乖離率 +0.40% ※マーケットメイク制度対象
2513 NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.17%) 乖離率 +0.27% ※マーケットメイク制度対象

先進国株式クラスのウォッチ銘柄の市場価格と基準価額の乖離は、個人的許容範囲±1.0%に収まりました。

乖離率がいちばん小さく優秀だったのは、「MAXIS 海外株ETF」(銘柄コード1550)で、乖離率は +0.22% でした。

ウォッチ銘柄唯一のマーケットメイク「非」対象銘柄が、根性を見せた形です。いいぞ、その調子だ!

2020年3月にマーケットメイク制度対象ETFになり、4月の乖離が縮小していた「日興 上場MSCIコクサイ株」(銘柄コード1680)の乖離率もまずまず小さいです。

マーケットメイク制度は、ETFの流動性向上を目的に、東証がマーケットメイカーにインセンティブを設定し、常時気配提示を義務付ける制度で、2018年7月から開始されています。また、2019年4月より、インセンティブを強化した「マーケットメイク制度 Version2.0」が開始されています。

ETFマーケットメイク制度Version 2.0の開始について | 日本取引所グループ

日本取引所グループは、東京証券取引所及び大阪取引所などを傘下に持つアジアを代表する取引所グループです。


(2)「新興国株式」クラスのETF

次に、中国・ロシア・インドなどの新興国に分散投資できる「新興国株式」クラスのETFです。

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1681 日興 上場MSCIエマージング株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -0.32% ※マーケットメイク制度対象
1658 iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 (信託報酬 年0.23%) 乖離率 +0.14% ※マーケットメイク制度対象
2520 NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.19%) 乖離率 +2.44% ※マーケットメイク制度対象

新興国株式クラスのウォッチ銘柄で乖離率が小さく優秀だったのは、「iシェアーズ・コア MSCI 新興国株」(銘柄コード1658)で、乖離率は +0.14% でした。

2020年3月にマーケットメイク制度対象ETFになり、4月の乖離が縮小していた「日興 上場MSCIエマージング株」(銘柄コード1681)の乖離率もまずまず小さいです。

一方で、「NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし)」(銘柄コード2520)の乖離率が +2.44% とビョーーーンと割高方向に拡大して大荒れです。

個人的許容範囲±1.0% も大幅に超えておりダメダメです。5月に2520を購入した投資家は、本来の価値よりも割高な市場価格で買わされたことになります。

2520に何が起こったのでしょうか。足もと、6月第1週を見ると、すこし乖離が落ち着いてきたようにも見えますが、果たしてこの状況が来月以降も続いてしまうのか、今後もウォッチしていきたいと思います。


なお、「国内株式」クラスのETFは、昔から売買高も多く乖離が極めて小さいので、気にする必要はないと判断して調べておりません。

ただし、TOPIX・日経平均以外の、セクター型ETFやレバレッジ・インバース型ETFなど、ニッチな銘柄はその限りではないので、投資をお考えの際は、乖離率をご自身でご確認されることをおすすめします。



(3)今月のコメント

先進国株式クラスの市場価格と基準価額の乖離状態はおおむね順調でした。新興国株式クラスでは、2520の乖離が異常値を示しています。

新興国株式クラスのウォッチ銘柄は、いずれもマーケットメイク制度対象銘柄です。もしかしたら、マーケットメイク制度対象銘柄のなかでも、マーケットメイカーの実力やコミット度合いに差があり、出来、不出来があるのかもしれません。

海外単一国ETFやコモディティETFのようなニッチ銘柄ならまだしも、個人投資家の人生を支える資産運用のコアになるスタンダードな資産クラス(先進国株式・新興国株式)の国内ETFは、より高品質であってほしい。

国内ETFは、「iDeCo」や「つみたてNISA」に対応していて使い勝手の良いインデックスファンドと比較されるので、投資家の目はどうしても厳しくなります。

ただ、朗報もあります。

インデックスファンドの低コスト化に押され気味だった国内ETFにも、超低コストな新商品や、信託報酬引き下げの動きが出てきました。

<該当記事>

全世界株式型ETFは、いままで「日興 上場MSCI世界株」(1554)がありましたが、比較対象がなかったためデータだけ黙々と記録していました。比較対象となる「MAXIS 全世界株式」(2559)が登場したため、データが蓄積されてきたら当シリーズ記事でも取り上げたいと考えています。

すでに個別株投資(個々の企業の株式への投資)をやっているかたや、分配金を再投資するのではなく「現金で受け取り使っていきたい」というかたが国際分散投資をしようとする場合は、インデックスファンドよりも国内ETFの方がなじみやすいでしょう。

なぜなら、国内ETFは、注文方法(成行・指値ほか)や税務処理などが個別株とまったく同じであり、また、ETFから出てくる分配金が、個別株から出てくる配当と同様に現金で受け取れるためです。

ニーズはあるはずなので、国内ETFの市場価格は、買う時も売る時もフェアな価格であってほしい。投資家がいつでも安心して国内ETFを売買できるように、関係各所にはがんばってほしいです。

マーケットメイク制度対象銘柄であれば、今後ずっと安心という保証もありませんので、今後も引き続き、国際分散投資に活用できる主要な国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」について、毎月ウォッチしていきたいと思います。


<お得情報>
上記の「iシェアーズ」や「NEXT FUNDS」シリーズの対象ETFが、楽天証券は「売買手数料無料」なのでおすすめです。何百万円、何千万円、何億円売買しても手数料無料なのは将来にわたり大きい。

楽天証券、野村アセットのETF「NEXT FUNDS」シリーズ49銘柄の売買手数料も0円に

楽天証券は、「iシェアーズ」「MAXIS」シリーズなどのETFの売買手数料0円を打ち出していますが、2019年4月1日から、野村アセットマネジメントが運用するETFブランド「NEXT FUNDS」シリーズのうち49銘柄の売買手数料も0円にすると発表しました。...


<ご参考>
当ブログによく質問が寄せられる「なぜ、市場価格と基準価額が乖離するのか?」については、下記の東証WEBサイトに端的な説明がありますのでご参照ください。

ETF投資のリスク | 日本取引所グループ

日本取引所グループは、東京証券取引所及び大阪取引所などを傘下に持つアジアを代表する取引所グループです。


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Posted by水瀬ケンイチ