投資信託の「実質コスト」に日経新聞が斬り込む!

水瀬ケンイチ

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日本経済新聞に、投資信託の実質コストについて書かれた記事が掲載されています。

投信の真のコスト 信託報酬の数倍で思わぬ負担増も

■ハナ(29) 入社7年目、メーカー勤務。資産形成に興味がある。話がつまらなくなると、眠る癖がある。■岡根(32) パーソナルファイナンス(個人向けの資産形成論)を教える大学講師。ハナのサークルの先輩


詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、ザックリと要点をまとめると、投資信託には信託報酬以外にもその他の費用がかかっており、合計した実質コストは信託報酬の水準を大きく上回ることがあるから要注意ということ。

その他の費用とは、銘柄を売買する際の手数料や外貨建て資産の保管費用、監査報酬などのこと。当ブログの10年前の記事からで恐縮ですが、もうすこし詳しく補足すると以下のとおりです。

1. 有価証券の売買にかかる手数料
投資信託の運用を行う場合、有価証券の売買に際してかかる費用のことです。株式や債券等を売買するためには、その売買代金に対して手数料が発生します。取引手数料が自由化された国が多く、比較的低コストでの売買が可能ですが、この費用は売買の都度、信託財産から差し引かれます。

2. 外国証券における管理費用(カストディーフィー)とは
外国株式・外国債券等の現地保管・受渡にかかる費用のことで、以下の2つに大別されます。
・セーフキーピングフィー:保管にかかる費用(残高に応じてかかります。)
・トランザクションフィー:売買等にかかる費用(1件の売買等につきかかります。)

3. 監査報酬とは
信託財産に関して監査証明を取得するための費用のことです。

投資信託のいわゆる「隠れコスト」って何? - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーより)


日経記事では、資産別の実質コストと信託報酬の差についての図表が掲載されています。これがわかりやすいので引用させていただきます。

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投信の真のコスト 信託報酬の数倍で思わぬ負担増も :日本経済新聞より)


特に、新興国株式クラスにおいて、信託報酬と実質コストに大きな差があることが指摘されています。

まず、平均実質コストが年 2% を超える高コストなアクティブファンドは論外。信託報酬が低いインデックスファンドでも、平均信託報酬は年 0.62% であるのに対して、実質コストは年 1.02% と1%を超えています。

しかも、記事では、新興国株式インデックスファンドにおいては、信託報酬の低さが必ずしも高リターンに結びついておらず、実質コストが低いファンドが高リターンであることが指摘されています。

少しでも良好な成績を得たければ、信託報酬と実質コストも調べたほうがよいと締めくくっています。

日本経済新聞で、投資信託の実質コストにここまで深く切り込んだ記事は、過去に記憶がありません。グッジョブ!👍

ただ、あらかじめ手数料率が固定されていて変わらない信託報酬と違い、実質コストやリターンは運用状況によって毎年変わります。

現時点で実質コスト最安のファンドが、今後もベストファンドかというと、そうとも言い切れない。

突然、運用会社が大きなミスをしてリターンが相対的に下がってしまうことはありえます。過去、実際に某インデックスファンドにおいて、大口顧客の注文を一度に受け付けた際の運用ミスによりファンドのリターンが下がり、運用会社が臨時レポートでお詫びを出したこともありました。

実質コストまでちゃんと見るなら、決算ごとに発行される運用報告書を継続してチェックしていく必要があります。だって、毎年変わるものですから。

当ブログでは定期的(四半期ごと)に、資産クラスごとに低コストインデックスファンドを徹底比較しています。比較記事では、信託報酬、実質コストに加えて、ベンチマークであるインデックスとの差異、1年リターン、3年リターン、5年リターンで比較しています。

特に新興国株式のインデックスファンド選びは、複数の評価軸で総合的に判断することが必要だと思います。ちなみに、直近の比較記事では、新興国株式クラスは「SBI・新興国株式インデックス・ファンド」が高評価でした。

まあ、新興国株式クラスのインデックスファンドは、この調査期間中全てのファンドがマイナスリターンですし、「そこまで気にしなくても別にいいや」といってもそれほど間違いではないような細かい話ではありますが…💦

気になる方は、各インデックスファンドの運用報告書か、当ブログの低コストインデックスファンド徹底比較シリーズ記事をご覧いただければと思います。


梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記) | 低コストインデックスファンド徹底比較カテゴリ

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Posted by水瀬ケンイチ