国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(20年6月)、先月とはうって変わって順調

水瀬ケンイチ

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個人投資家の期待を集めながらも、「市場価格と基準価額の乖離」の大きさが課題と言われてきた国内ETF。

「市場価格と基準価額の乖離」とは、かんたんにいえば、ETFの中身に対して中身どおりの価格がついているか、それとも割高 or 割安な価格がついてしまっているかを表しています。いちばん良いのは、ETFの中身と価格が同じ(乖離率±0%)というフェアな状態です。

国際分散投資に活用できる主要な国内ETFについて、2020年6月末までの乖離率を調べました。

(1)「先進国株式」クラスのETF

まずは、米国や英国など日本を除く先進国に分散投資できる「先進国株式」クラスのETFです。

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1680 日興 上場MSCIコクサイ株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -0.51% ※マーケットメイク制度対象
1550 MAXIS 海外株ETF (信託報酬 年0.15%) 乖離率 +0.26%
1657 iシェアーズ・コア MSCI 先進国株 (信託報酬 年0.19%) 乖離率 -0.07% ※マーケットメイク制度対象
2513 NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.17%) 乖離率 +0.06% ※マーケットメイク制度対象

先進国株式クラスのウォッチ銘柄の市場価格と基準価額の乖離は、個人的許容範囲±1.0%に収まりました。

乖離率がいちばん小さく優秀だったのは、「NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし) 」(銘柄コード2513)で、乖離率は +0.06% でした。

ほぼ同じくらい乖離率が小さかったのが「iシェアーズ・コア MSCI 先進国株」(銘柄コード1657)で乖離率は -0.07%でした。いずれも、マーケットメイク制度対象銘柄です。

マーケットメイク制度は、ETFの流動性向上を目的に、東証がマーケットメイカーにインセンティブを設定し、常時気配提示を義務付ける制度で、2018年7月から開始されています。また、2019年4月より、インセンティブを強化した「マーケットメイク制度 Version2.0」が開始されています。

ETFマーケットメイク制度Version 2.0の開始について | 日本取引所グループ

日本取引所グループは、東京証券取引所及び大阪取引所などを傘下に持つアジアを代表する取引所グループです。


(2)「新興国株式」クラスのETF

次に、中国・ロシア・インドなどの新興国に分散投資できる「新興国株式」クラスのETFです。

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1681 日興 上場MSCIエマージング株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 +0.34% ※マーケットメイク制度対象
1658 iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 (信託報酬 年0.23%) 乖離率 +0.46% ※マーケットメイク制度対象
2520 NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.19%) 乖離率 +0.21% ※マーケットメイク制度対象

新興国株式クラスのウォッチ銘柄で乖離率が小さく優秀だったのは、「NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし)」(銘柄コード2520)で、乖離率は +0.21% でした。

先月(2020年5月)は乖離率が +2.44% とビョーーーンと割高方向に拡大して大荒れでしたが、今月は一転してクラス最小乖離率です。

あれは一体何だったのでしょうか。運用会社の野村アセットマネジメントの月次レポートを見ても、特に何も書いていませんでした。運用会社としては基準価額さえベンチマークに連動していれば、市場でいくらで取引されようが知ったこっちゃないのかもしれませんが。。。

なお、「国内株式」クラスのETFは、昔から売買高も多く乖離が極めて小さいので、気にする必要はないと判断して調べておりません。

ただし、TOPIX・日経平均以外の、セクター型ETFやレバレッジ・インバース型ETFなど、ニッチな銘柄はその限りではないので、投資をお考えの際は、乖離率をご自身でご確認されることをおすすめします。



(3)今月のコメント

先進国株式クラス、新興国株式クラスともに、市場価格と基準価額の乖離状態はおおむね順調でした。

先月、異常な乖離率を示していた「NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし)」(銘柄コード2520)も、今月は落ち着いたかのように見えます。

海外単一国ETFやコモディティETFのようなニッチ銘柄ならまだしも、個人投資家の人生を支える資産運用のコアになるスタンダードな資産クラス(先進国株式・新興国株式)の国内ETFは、より高品質であってほしい。

国内ETFは、「iDeCo」や「つみたてNISA」に対応していて使い勝手の良いインデックスファンドと比較されるので、投資家の目はどうしても厳しくなります。

すでに個別株投資(個々の企業の株式への投資)をやっているかたや、分配金を再投資するのではなく「現金で受け取り使っていきたい」というかたが国際分散投資をしようとする場合は、インデックスファンドよりも国内ETFの方がなじみやすいでしょう。

なぜなら、国内ETFは、注文方法(成行・指値ほか)や税務処理などが個別株とまったく同じであり、また、ETFから出てくる分配金が、個別株から出てくる配当と同様に現金で受け取れるためです。

ニーズはあるはずなので、国内ETFの市場価格は、買う時も売る時もフェアな価格であってほしい。投資家がいつでも安心して国内ETFを売買できるように、関係各所にはがんばってほしいです。

マーケットメイク制度対象銘柄であれば、今後ずっと安心という保証もありませんので、今後も引き続き、国際分散投資に活用できる主要な国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」について、毎月ウォッチしていきたいと思います。


<お得情報>
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楽天証券、野村アセットのETF「NEXT FUNDS」シリーズ49銘柄の売買手数料も0円に

楽天証券は、「iシェアーズ」「MAXIS」シリーズなどのETFの売買手数料0円を打ち出していますが、2019年4月1日から、野村アセットマネジメントが運用するETFブランド「NEXT FUNDS」シリーズのうち49銘柄の売買手数料も0円にすると発表しました。...


<ご参考>
当ブログによく質問が寄せられる「なぜ、市場価格と基準価額が乖離するのか?」については、下記の東証WEBサイトに端的な説明がありますのでご参照ください。

ETF投資のリスク | 日本取引所グループ

日本取引所グループは、東京証券取引所及び大阪取引所などを傘下に持つアジアを代表する取引所グループです。


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Posted by水瀬ケンイチ