為替の考え方についての良記事!
水瀬ケンイチ
「東証マネ部!」で、為替の考え方についての良記事を見つけたので取り上げます。
<ここがポイント!> ■ 主要国のコロナ対応で短期的に安定し...
記事の趣旨は為替予想です。主要国のコロナ対応で短期的に安定した為替を想定、長期的に米ドル安・円高の可能性は低い、構造的に円安の可能性も低いなど、要するにあんまり大きく動かないんじゃないかという見通しが述べられています。
ただ、私がこの記事を取り上げた理由は、為替予想の内容ではありません。記事の中で、為替において非常に重要な「考え方」が端的に述べられているからです。
私が重要な考え方だと思った箇所を抜粋させていただきます。
たまにFX投資家などが、なにかの外貨を「コツコツ積み立てる」「バイ&ホールドしてリターンを狙う」というような意気込みを語るのを見ます。為替は二つの国・地域の相対的な経済状態(インフレ率格差、成長率格差など)に依存して決まる。
(長期的に円高の可能性はあるか | 東証マネ部!より)
しかし、上記のように、為替は二国間のインフレ率格差、成長率格差などによって決まる通貨の「交換レート」に過ぎません。単なる二国間の綱引きです。
ある通貨をずっとバイ&ホールドすれば長期的に一方的に増えていくような性質のものではありません。
株式や債券と同じ理論を、そのまま通貨に当てはめるのは間違いのもとだと思います。
購買力平価のお話ですね。結果的に、「外貨の高金利は通貨安で相殺される」。重要なことなので100万回暗唱してもいいくらいです。金利格差は為替で調整される(金利が高い国の通貨を預金して高金利を享受すると、その後為替が下落することで価値が一定となる)はずだ。
(長期的に円高の可能性はあるか | 東証マネ部!より)
日本円の金利は年0.01%だったか、0.0000000001%だったか忘れましたが、万年低金利の日本において、高インフレ率で高金利な国の通貨には、メキシコペソなら年5%とかトルコリラなら年10%とか桁違いの金利がついていて一見、魅力的に見えます。
手数料が高い商品を売りたい金融機関も、言葉巧みにこの話をしながら、高金利通貨の商品を売ろうとしてきます。これが、個人投資家が為替絡みで大損する悲劇のもと。
高金利をコツコツ享受して浮かれていると、ある日ドカンと通貨安でやられる。リーマンショックで絶滅したミセス・ワタナベ(用語解説はこちら)よろしく、「コツコツドカン」で大損する投資家が跡を絶ちません。
「外貨の高金利は通貨安で相殺される」。覚えておきたい重要な原則です。
<ご参考>
2019/04/12 100万回暗唱しましょう「外貨の高金利は通貨安で相殺される」 - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
2010/05/24 購買力平価は大正初期から成り立っていた - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
一方、購買力平価には限界があることも知られています。長期では効いてくるものの、短期では全然当てはまりません。現実には、高金利通貨が(クレジットが同じ程度でも)為替ですべて相殺される傾向は歴史的にあまり強くなく、金利差が十分あれば、高金利通貨のバリュー効果によるリターンが期待できる。
(長期的に円高の可能性はあるか | 東証マネ部!より)
短期では、二国間の金利格差やインフレ率格差以外にも、要人の発言、中央銀行の介入、投機筋の動き、戦争や紛争など様々な要因で為替レートは揺さぶられます。毎日、毎分、毎秒、通貨高になったり、通貨安になったりをくり返しています。
結果的に、ある一定期間を切り取ってみると「高金利通貨のバリュー効果」なるものがあるように見える時期もあり、ことは単純ではないのが現実です。同時に、誤解と悲劇がいつまでもなくならない要因でもあると思います。
「コツコツドカン」で絶滅しても、ミセス・ワタナベは何度でもよみがえるのです。
為替についての考え方の要諦がこの一文に集約されていると思います。人々の努力や工夫を信じて株式に投資したり、元本保全を期待して債券に投資する長期投資においては、為替変動でポートフォリオのリターンが大きく動くことがないよう、十分に分散させることが望ましい。
(長期的に円高の可能性はあるか | 東証マネ部!より)
私は世界中の株式や債券など企業の生産活動に資するものに対して資金を投じるのが投資であり、為替は付加的にくっついてくる余計なおまけだと考えています。
投資の本来のリターンを安定させるため、予期せぬ形で減らさないように(予期せず増えることもありますが)、為替リスクは分散させるのがよいと私も思います。
余談ですが、ここ2~3年は米国株のリターンが良かったためか、保有資産が米国株100%の初心者投資家が増えている印象です。米国株100%の投資は、同時に、米ドルの為替リスクを100%とっている状態でもあることはもっと意識されてよい話だと思っています。
最後に、私は上記記事の「為替の考え方」が参考になると考えブログで取り上げましたが、「為替予想」の部分はまったく信用してません。為替は大きく動かないだろうという上記記事の予測にもとづき、投資を行うことはおすすめしません。
参考にできる部分だけ、参考にさせてもらいましょ。
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