インデックス投資家にとって「損出し」は旧世代ファンドの整理に使うもの

水瀬ケンイチ

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トウシルに「損出し」による節税についての記事が掲載されています。

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 早いもので2020年もあと1カ月半ほどとなりました。今年2020年は新型コロナウイルスに振り回された1年でした。お仕事に大きな影響があった、という方も少なくないと思います。 株式マーケットも、まさに波乱万丈でした。2~3月にかけての急落…


詳しくは上記のトウシルの記事をご覧いただきたいのですが、要点は、含み益と含み損の株を持っている場合、両方売却すると損益通算されて含み益株にかかる課税を抑えることができるという話だと思います。

いわゆる「損出し」は、売買をくりかえしてリターンを目指す投資法をしているかたにはおなじみの技ですが、インデックスファンドの積み立て投資を続けるインデックス投資家にとってはなじみがないかもしれません。

定期的に積み立てる(買う)だけで売らないのが基本ですから、通常、「損出し」はインデックス投資とは無縁の話です。

ただ、積み立てを続けるインデックス投資家であっても、「損出し」が役に立つ場合があります。

それは、運用コスト競争によって相対的に信託報酬が割高になってしまった旧世代のインデックスファンドから、新世代のより低コストなインデックスファンドへの税金ゼロの移行に使えるということです。

どういうことか。

インデックス投資歴も10年を超えてくると、だいたい旧世代のインデックスファンド(旧STAMシリーズやインデックスeシリーズなど)を抱えているものです。長期間投資しているのでそれなりに大きな含み益が出ていることが多いでしょう。

こういうのは、売却すると利益に20%以上課税されて、資産が縮んでしまうので売るに売れません。

例えば、春先のコロナショックの時のように、相場が大きく下落すると、同じ資産クラスの中でも旧世代ファンドは含み益で、新世代ファンドは含み損、という状況が生まれることがあります。

そんな時は旧世代ファンドの整理のための「損出し」です。

手順は以下のとおり。

  1. 含み損になっている新世代ファンドを売却して損失を作る(=損出し)
  2. その損失と同額の利益が出るように旧世代ファンドを売却する
  3. 売却によってできたキャッシュの全額で新世代ファンドを購入しなおす
  4. 損益通算され税金ゼロで、高コストな旧世代ファンドから低コストな新世代ファンドに乗り換え完了
  5. わーいわーい

「損出し」により、旧世代ファンドを整理して、新世代ファンドへの移行が進むというものです。

注意点は、特定口座でないと損益通算が自動で行われないということと、旧世代ファンドには売却時にかかる信託財産留保額が設定されているものが多いので、そのぶんの計算を忘れないようにすること。

でも、旧世代ファンドの運用コストが高ければ高いほど、やる価値はあると思います。

上記トウシルの記事とは若干趣旨が異なりますが、ベテランのインデックス投資家は、下げ相場での旧世代ファンド整理法として、「損出し」を頭の片隅に置いておくとよいかもしれません。


超・低コストな新世代インデックスファンドについては、以下のブログ記事で比較、おすすめしています。ご参考にどうぞ。

【まとめ記事】低コストインデックスファンド徹底比較(20年9月末)高評価インデックスファンド集【全部入り】

「低コストインデックスファンド徹底比較」シリーズ記事で取り上げた資産クラス(日本株式、先進国株式、新興国株式、全世界株式、日本債券)ごとのインデックスファンド比較の図表(2020年9月末時点)を、すべて1本の記事にまとめました。各資産クラスの高評価なインデックスファンドが一覧できますよ。※当シリーズ記事の説明書きとして、まずは『新シリーズ!「低コストインデックスファンド徹底比較」開始。まずは説明書き』を...


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Posted by水瀬ケンイチ