「ゾンビ投信」は投信併合で効率化&低コスト化を!
水瀬ケンイチ
朝日新聞に「ゾンビ投信」について書かれた記事が掲載されています。ゾンビ投信とはえらい言われようですが、どういう投信なのでしょうか。
「ゾンビ投信」乱立、整理進まず 運用効率悪く高手数料:朝日新聞デジタル
老後の資金作りで投資信託が注目されている。選ぶ際に要注意なのは、手数料の一つ「信託報酬」の差だ。日経平均株価に連動させるなど運用成績が同様なはずの投信も、信託報酬が違えば投資家の得る果実が異なる。最…
詳しくは上記朝日新聞の記事をご覧いただきたいのですが、要点をざっくりまとめると、古い投信のなかには手数料が高く運用効率も悪いまま残り続けているものがあるということです。
たとえば、野村アセットマネジメントには日経平均連動のインデックスファンドが7本あり、運用方針は同じなのに、信託報酬は年0.17%~1.52%と幅があります。
信託報酬がいちばん割安なインデックスファンドの約9倍もの信託報酬を取る古いインデックスファンドが、同じ運用会社のなかに存在します。この古くて高コストな投信を「ゾンビ投信」と上記記事では呼んでいるようです。
私も当ブログでインデックスファンド比較を定期的に行っているのでわかるのですが(低コストインデックスファンド徹底比較カテゴリ)、同様のことが、三菱UFJ国際投信(例:eMAXISとeMAXIS Slim)、三井住友トラスト・アセットマネジメント(例:SMTとi-SMT)、アセットマネジメントOne(例:MHAMとたわらノーロード)など多くの運用会社で散見されます。
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
低コストインデックスファンド徹底比較カテゴリです。現在3か月ごとに更新中。
運用コストはパフォーマンスを確実に削り、同じインデックスに連動するインデックスファンドであれば、低コストなインデックスファンドの方が概ね高パフォーマンスとなります。
私たち個人投資家は、同じようなインデックスファンドがたくさんある中から、もっとも低コストなインデックスファンドを選ぶことで、相対的に高いリターンを得られる可能性が高まるわけです。
そう考えて、その時々でもっとも低コストなインデックスファンドを選びながら、私のように18年間もインデックス投資を継続しているとどうなるか。
そう、インデックスファンドの本数がどんどん増えていってしまうのです。
同じ日本株式クラスのインデックスファンドが3種類、先進国株式クラスのインデックスファンドが5種類、新興国株式クラスのインデックスファンドが4種類、みたいな状況になります。しかも、上記のように、同じ運用会社の同じ資産クラスのインデックスファンドを何本も抱えることになるのです。
旧世代の高コストインデックスファンドではありますが、さすがに15年以上運用継続していると、それなりの含み益が乗っている銘柄が多いです。でも、これを新世代インデックスファンドに乗り換えるためには一度売却する必要があります。その際に利益に20%以上の税金が取られ、資産はしぼんでしまいます。
だから、昔から高コストの旧世代インデックスファンドをバイ&ホールドしている古参インデックス投資家ほど旧世代インデックスファンドの高い手数料を毎年毎年、運用会社に献上し続けている構図になっています。
運用会社が、競争により運用コストを下げる時に既存のインデックスファンドの運用コストを引き下げるのではなく、新規の低コストインデックスファンドシリーズを次々に立ち上げるからこういうことになっています。
既存のインデックスファンドの運用コストを引き下げてくれればいいのですが、上記記事にあるような「大人の事情」から、どうしても既存インデックスファンドの運用コスト引き下げはしてくれません。
同じような運用の複数の投信をひとつにまとめる「投信併合」という方法もあるのですが、それも上記記事にあるような「大人の事情」から、一向に投信併合も進みません。
(その点、ニッセイアセットマネジメントは、ある時期から新規インデックスファンドシリーズを出さず、既存インデックスファンドシリーズの運用コスト引き下げをしてくれるようになってくれてありがたいです)
3か月前のブログ記事『「eMAXIS Slim」シリーズの残高5000億円突破に賛辞と要望』にも書かせていただいたとおり、旧世代の高コスト投信は、「投信併合」を行い、効率化するとともに、低コストな新世代投資の方へ運用コスト水準を統一してほしい。
「先行者利益」はなくても、せめて「先行者損失」あるいは「先行者養分」状態がこれからも放置されるのは改善してほしい。日本のインデックスファンド黎明期を支えた古参投資家に、その後ずっと高コスト負担を強い続けるなんて、ひどい仕打ちで、どう考えてもおかしいでしょう。
「eMAXIS Slim」シリーズの残高5000億円突破に賛辞と要望
モーニングスターに、インデックスファンド「eMAXIS Slim」シリーズ残高5000億円突破という記事が掲載されています。...
運用コストが高い投信は、同じような運用をしている低コストな新世代投信と併合していただき、効率的な運用を行うことで、運用コストを低コストな新世代投信の方に合わせていただきたいです。
「ゾンビ投信」の投信併合で効率化&低コスト化を、なにとぞ、なにとぞ、お願いします!🙏
今まで同様これからも、機を捉えて運用会社に「投信併合」を直接要望し続けたいと思います。
それでも、読者のなかには投信の本数が増えてしまってなんとかしたいという方もいらっしゃると思います。そういう方は、下げ相場を利用して旧世代の高コストインデックスファンドを整理する方法があります。
ご興味があれば下記ブログ記事をご覧ください。
インデックス投資家にとって「損出し」は旧世代ファンドの整理に使うもの
トウシルに「損出し」による節税についての記事が掲載されています。税理士が教える株式投資の年末準備・税を抑えて投資成果を最大化する方法 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア 早いもので2020年もあと1カ月半ほどとなりました。今年2020年は新型コロナウイルスに振り回された1年でした。お仕事に大きな影響があった、という方も少なくないと思います。 株式マーケットも、まさに波乱万丈でした。2~3月にかけての急...
- 関連記事
-
-
流行りモノみたいにESGを消費したファンドの功罪 2023/11/12
-
え、第1回なの!?「モーニングスター・ファンド・アワード」発表 2023/09/28
-
日本初のグローバルサウスを投資対象地域とする株式ファンド登場! 2023/09/19
-
「今のところ無風の投信コスト競争」という珍妙なレポートが示す日本の悪しき商習慣の名残り? 2023/09/08
-
粗製乱造されてきた投信を金融機関側でも選別する動き? 2023/06/26
-
2024年4月から投資信託のコスト開示が変わる。「総経費率」の目論見書記載を義務付け 2023/06/08
-