国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」(21年2月末)、低位安定でヨシ
水瀬ケンイチ
個人投資家の期待を集めながらも、「市場価格と基準価額の乖離」の大きさが課題と言われてきた国内ETF。
「市場価格と基準価額の乖離」とは、かんたんにいえば、ETFの中身に対して中身どおりの価格がついているか、それとも割高 or 割安な価格がついてしまっているかを表しています。いちばん良いのは、ETFの中身と価格が同じ(乖離率±0%)というフェアな状態です。
国際分散投資に活用できる主要な国内ETF(先進国株式クラス、新興国株式クラス、全世界株式クラス)について、2021年2月末までの乖離率を調べました。それではご覧ください。
(1)「先進国株式」クラスのETF
まずは、米国や英国などの先進国(日本除く)に分散投資できる「先進国株式」クラスのETFです。1680 日興 上場MSCIコクサイ株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -0.54% ※マーケットメイク制度対象
1550 MAXIS 海外株ETF (信託報酬 年0.15%) 乖離率 -0.17%
1657 iシェアーズ・コア MSCI 先進国株 (信託報酬 年0.19%) 乖離率 +0.03% ※マーケットメイク制度対象
2513 NEXT FUNDS 外国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.17%) 乖離率 +0.32% ※マーケットメイク制度対象
先進国株式クラスのウォッチ銘柄の市場価格と基準価額の乖離は、個人的許容範囲±1.0%に収まりました。乖離率がいちばん小さく優秀だったのは、「iシェアーズ・コア MSCI 先進国株」(銘柄コード1657)で、乖離率は +0.03% でした。ほぼ乖離なしといっていい水準です。これはマーケットメイク制度対象銘柄です。
マーケットメイク制度は、ETFの流動性向上を目的に、東証がマーケットメイカーにインセンティブを設定し、常時気配提示を義務付ける制度で、2018年7月から開始されています。また、2019年4月より、インセンティブを強化した「マーケットメイク制度 Version2.0」が開始されています。
(2)「新興国株式」クラスのETF
次に、中国・ロシア・インドなどの新興国に分散投資できる「新興国株式」クラスのETFです。1681 日興 上場MSCIエマージング株 (信託報酬 年0.24%) 乖離率 -0.04% ※マーケットメイク制度対象
1658 iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 (信託報酬 年0.23%) 乖離率 -0.02% ※マーケットメイク制度対象
2520 NEXT FUNDS 新興国株式(為替ヘッジなし) (信託報酬 年0.19%) 乖離率 +0.06% ※マーケットメイク制度対象
新興国株式クラスのウォッチ銘柄の市場価格と基準価額の乖離は、個人的許容範囲±1.0%に収まりました。新興国株式クラスのウォッチ銘柄で乖離率が小さく優秀だったのは、「iシェアーズ・コア MSCI 新興国株」(銘柄コード1658)で、乖離率は -0.02% でした。ほぼ乖離なしといっていい水準です。これはマーケットメイク制度対象銘柄です。
今月、iシェアーズは先進国株式と新興国株式で二冠を達成しています。インデックスファンドではいまいち目立ちませんが、ETFでは大崩れせずさすがの高品質だと思います。
(3)「全世界株式」クラスのETF
次に、日本、先進国、新興国を含む全世界の株式に分散投資できる「全世界株式」クラスのETFです。1554 日興 上場MSCI世界株 (信託報酬 年0.15%) 乖離率 -0.35% ※マーケットメイク制度対象
2559 MAXIS 全世界株式 (信託報酬 年0.078%) 乖離率 +0.72% ※マーケットメイク制度対象
全世界株式クラスのウォッチ銘柄の市場価格と基準価額の乖離は、個人的許容範囲±1.0%に収まりました。全世界株式クラスのウォッチ銘柄で乖離率が小さく優秀だったのは、「日興 上場MSCI世界株」(銘柄コード1554)で、乖離率は -0.35% でした。これはマーケットメイク制度対象銘柄です。
なお、「日本株式」クラスのETF(TOPIX・日経225)は、昔から売買高も多く乖離が極めて小さいので、気にする必要はないと判断して当ブログでは掲載していません。売買の際に気になる場合は、東証のWEBサイトでETFの市場価格とインディカティブNAV(取引時間中のETFの推定価値)を調べることができます(しかも15秒ごとに更新)ので、チェックしてみてください。
日本取引所グループは、東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所等を運営する取引所グループです。
(4)今月のコメント
先進国株式クラス、新興国株式クラス、全世界株式クラスのいずれも、ETFの市場価格と基準価額の乖離状態は小さく、各銘柄とも高品質な連動をしていました。先月に引き続き、低位安定しています。いつもこうだといいと思います。
海外単一国ETFやコモディティETFのようなニッチ銘柄ならまだしも、個人投資家の人生を支える資産運用のコアになるスタンダードな資産クラス(先進国株式・新興国株式・全世界株式)の国内ETFは、より高品質であってほしい。
国内ETFは、「iDeCo」や「つみたてNISA」に対応していて使い勝手の良いインデックスファンドと比較されるので、投資家の目はどうしても厳しくなります。ただ、すでに個別株投資(個々の企業の株式への投資)をやっているかたや、分配金を再投資するのではなく「使っていきたい」というかたが国際分散投資をしようとする場合は、インデックスファンドよりも国内ETFの方がなじみやすいでしょう。なぜなら、国内ETFは、注文方法(成行・指値ほか)や税務処理などが個別株とまったく同じであり、また、ETFから出てくる分配金が、個別株から出てくる配当と同様に現金で受け取れるためです。
ネット証券大手のSBI証券と楽天証券が、1日100万円までの取引手数料を無料化すると2020年9月に発表しました。この無料化はもちろん国内ETFにも適用になります。国内ETFにより投資しやすくなりました。
<該当記事>
2020/09/23 SBI証券が約定代金1日100万円まで取引手数料無料化! - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
2020/09/29 楽天証券も取引金額1日100万円まで取引手数料無料化に追随! - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
ニーズはあるはずなので、国内ETFの市場価格は、買う時も売る時もフェアな価格であってほしい。投資家がいつでも安心して国内ETFを売買できるように、関係各所にはがんばってほしいです。
マーケットメイクVer2.0の導入以降、東証上場の外国株ETFの売買が活性化しているようです。売買の活性化は、市場価格と基準価額の乖離解消に資するはずです。
とはいえ、マーケットメイク制度対象銘柄であれば今後ずっと安心という保証もありません。実際、マーケットメイク制度対象銘柄に大幅な乖離が見られたことがありますので、今後も引き続き、国際分散投資に活用できる主要な国内ETFの「市場価格と基準価額の乖離」について、毎月ウォッチしていきたいと思います。
<お得情報>
上記の「iシェアーズ」や「NEXT FUNDS」シリーズの対象ETFが、楽天証券は「売買手数料無料」なのでおすすめです。何百万円、何千万円、何億円売買しても手数料無料なのは将来にわたり大きい。
楽天証券、野村アセットのETF「NEXT FUNDS」シリーズ49銘柄の売買手数料も0円に
楽天証券は、「iシェアーズ」「MAXIS」シリーズなどのETFの売買手数料0円を打ち出していますが、2019年4月1日から、野村アセットマネジメントが運用するETFブランド「NEXT FUNDS」シリーズのうち49銘柄の売買手数料も0円にすると発表しました。...
<ご参考>
当ブログによく質問が寄せられる「なぜ、市場価格と基準価額が乖離するのか?」については、下記の東証WEBサイトに端的な説明がありますのでご参照ください。
日本取引所グループは、東京証券取引所及び大阪取引所などを傘下に持つアジアを代表する取引所グループです。
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