マイナンバーカードの普及がいまいち進まない理由についてひとこと

水瀬ケンイチ

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マイナンバーカードの普及がいまいち進まない理由について、日本経済新聞が記事で取り上げています。

健康保険証 「誤り3万件」が映すマイナンバーの不思議

菅義偉首相肝煎り、「デジタル庁」の発足が間近だ。関連法案は6日に衆院を通過し月内にも成立する見通し。デジタルガバメント成否のカギを握るのはいわずと知れた個人番号、通称・マイナンバー。日本に住む1億2000万人超の全員に割り振られている12ケタの数字だ。1960年代まで遡る国民的な侃々諤々(かんかんがくがく)を経て制度そのものは5年以上も前に発足したにもかかわらず、いざ使いこなそうとすると必要にな


詳しくは上記記事をお読みいただきたいのですが、ざっくりまとめると要するに、政府側にマイナンバーを使う覚悟ができていないという根本的な問題があり、利用者側にも誤解を含めてそんな政府を信用していないという事情があるとのことです。

実際問題として、日本政府は、戦争中の戦果について日本国民を欺いてきたし、戦後も財閥解体や実質的な資産課税を国民に行なった歴史は消しようがありません。だから、マイナンバーカード導入の魂胆が裏にあるのではないかという(特に富裕層からの)疑念があることは否定しようがない事実だと思います。

新型コロナウイルス感染症拡大の国難に際して、5000円相当のマイナポイントを配布すれば、そのために必要なマイナンバーカードを全国民が喜んで作ると考えていたのだとすれば、為政者は現実を見ていないと言わざるを得ません。マイナンバーカードが「労多くして功少なし」のものだから、普及が進んでいないのだと個人的には思います

私自身、基本的に国をあまり信用していない方なので、マイナンバー制度が導入され、2015年に番号通知カードが配布された後も、実際の不自由が出てこない限り、絶対にマイナンバーカードは作らないぞという謎の決意を持って、番号通知カードだけで勤務先や副業の会社への報告などの諸手続きをしのいできました。

その後、5年経ってもなんら問題なく過ごしていましたが、昨年2020年のコロナ禍で、マイナポイントをマイナンバーカード保有者にのみ配布するという施策が実施されるに至り、渋々マイナンバーカードを作成してみようかと思いました。

しかし、その道程は長く、写真撮影や申込みはスマホからできましたが、受け取りはコロナ禍もあって予約制で、先々までびっちり満員で受け取るだけで2ヶ月もかかり、わざわざ仕事を休み区役所に平日昼間に出向いて、それでもあれが足らないこれが足らないと言われ、日をあらためてもう一度来いと言われ仕方なく行き直してようやく受け取りました。

その後も、マイナポイントはSuicaで受け取ることにしましたが、その操作は非常に難しく、実際に受け取るまでに何度も試行錯誤しないといけないものでした。たかだか5000円ぽっちのポイントを受け取るのに何週間もかかり、労力に見合わないものでした。なお、それ以来マイナンバーカードを一度も触ってすらいません。

翻って、上記の日本経済新聞の記事にあった、マイナンバーカードが普及していないのは日本政府が信頼されていないからだという理屈は、いかにも机上の空論であると感じます。作成も利用も大変でメリットが小さくデメリットが大きすぎるというのが真の理由だと実感を持って言えます。

今でも一部の自治体ではマイナンバーカードがあればコンビニで住民票が取れるらしいですが、そもそも住民票が必要な場面は数年に一度もないでしょう。健康保険証の機能を兼ねるという話も、財布に入れる健康保険証がマイナンバーカードに代わるだけ。さらに他の複数のカードの機能も兼ねなければ持ち歩くカード類の数は減りません。しかも、健康保険証を兼ねる機能の提供開始は2021年3月下旬からの予定がしれっと10月以降に延期されたようです。ああ、そうかい。

先日、妻もマイナンバーカード作成に向けてスマホで自撮り写真を撮って手続きをはじめました。えらいと思いますが、これからマイナンバーカードを受け取るまでに、長々とサポートが続くことと思います。

そもそも、サラリーマンの税金は、国が勝手に見込みで多めに徴収しておき、取りすぎた分の返還をする業務を民間企業に押し付けたのがいわゆる「年末調整」の制度であって、肝心の政府によるサービスは小出しでショボく、延期&延期でいつまでたっても実質的に生活は便利にならない。いざマイナンバーカードを作ろうとしても手続きには2ヶ月以上かかる。そんな状況では誰もマイナンバーカードを作らなくても、不思議ではないでしょう。

上記の日本経済新聞のマイナンバーカードの普及が進まない理由の記事は、政府が信頼されているかどうか云々という、ロマンチックな机上の空論でまとめられていましたが、国民が置かれている現状と乖離した大いなる的外れの内容であり、マイナンバーカードの作成は、大多数の国民にとって「労多くして功少なし」のものだからであり、それ以上でもそれ以下でもない。

精神論的に「政府の信用度を高める」などとやっていれば、また10年も20年も変わらないまま、マイナンバーは半端な状態となって、関係各位の悩みのタネになってしまうでしょう。もし、マイナンバーカードのさらなる普及を目指すのであれば、国・政府都合の目的ではなく、国民の生活が便利になり、低コストかつスマートになるサービスをドンドン提供するのが近道だと思います。

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Posted by水瀬ケンイチ