会社員がiDeCo、NISAの前に検討すべき制度
水瀬ケンイチ
日本経済新聞電子版にiDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA(少額投資非課税制度)の前に検討すべき制度があるという記事が掲載されています。
世は幾度目かのマネーブーム。この仕事をしていると「よく聞かれる質問あるある」のNo.1は「どの株、上がります?」。最近それに迫るのが「iDeCo(イデコ)とNISA(ニーサ)、どっちがいい?」。イデコは個人型の確定拠出年金でNISAは少額投資非課税制度。どちらも収益に対して税制優遇のあるお得な投資の器だ。だが、特に会社員に当てはまる話だが多くの場合、その前に一番先に検討すべき選択肢を忘れているこ
詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、要するに企業型DC(企業型確定拠出年金)の「マッチング拠出」です。
マッチング拠出制度の概要や、iDeCoやつみたてNISAとの違い等については、ろうきんの研修・配布用ワークシートがよくまとまっていてわかりやすかったので、比較部分を引用させていただきます。
(ろうきんの研修・配布用ワークシートより引用)
企業型DCに自分で追加拠出するマッチング拠出で積み立てたインデックスファンド等は、運用期間中非課税だし、掛け金が所得から控除できて毎年の所得税・地方税を減らせます。iDeCoではかかる口座の維持手数料も、会社が払い社員は払わなくてよい場合がほとんど。
勤務先が企業型DCを採用していてマッチング拠出可能であれば、老後資金はiDeCoやNISAの前に、これを限度額いっぱいまで使うことが第一選択肢となりえます。会社によってはインデックスファンドのラインナップに難があったり、退職金や他の年金の受け取り方によっては、企業型DCとマッチング拠出で運用した年金の受け取り時に課税されてしまうケースもありますが、メリットが大きいので検討の余地は大いにあると思います。
実際、私も勤務先が企業型DCでマッチング拠出で可能な限りいっぱいまで拠出して、インデックスファンドを積み立てています。インデックスファンドのラインナップは、運用コスト最安値のeMAXIS Slimシリーズ等には劣りますが、まあまあです。
ただ、不満な点もあります。毎月の拠出可能金額がごく少額しかないことです。
上記記事にもあるとおり、マッチング拠出額の拠出限度額は、①会社掛け金と同額まで、②会社拠出との合計掛け金が上限内というダブルの条件があります。
私の勤務先の場合、②の合計掛け金は月額27,500円しかありません(会社の年金制度により異なります)。しかも、①の会社掛け金が少ないせいで、フルにマッチング拠出しようとしても拠出限度額27,500円いっぱいまで拠出できないのです。まあ、①の会社掛け金は社員の年収に応じて決まるため、会社掛け金が低いのは私の年収がショボいのが原因なわけですが、それにしても、自分のお金から拠出するマッチング拠出の上限が、会社掛け金までという条件は、存在理由が不明です。
社員が個人としてリスクを取って年金運用しようとするのを、会社都合の上限額で邪魔されているように感じます。厚生労働省は制度を見直してほしいです。毎年のように金融庁などからこの条件を廃止する改善要望は出ているので、なにとぞご検討を。
<関連記事>
ニッセイ基礎研究所に、今こそ確定拠出年金制度を見直すべきだというコラムが掲載されています。...
とはいえ、現在のマッチング拠出制度の活用だけでも十分に検討の余地があると思います。
なんといっても運用期間中非課税、掛け金が全額所得控除、口座の維持手数料が会社持ちというメリットは強力です。ご自身の勤務先が企業型DCか、マッチング拠出制度があるか、調べてみるのもいいかもしれませんね。
ちなみに、このブログ記事を書くにあたって、自分の企業型DCとマッチング拠出の拠出金額や運用実績を確認しようとしたところ、加入者口座番号とインターネットパスワードが不明。制度導入時に送られてきたハガキが会社の机の中に置きっぱなしのまま、ずっと見ていないことがわかりました。ずっと在宅勤務ですし。
年金運用はバイ&ホールドの積み立て投資で良いとは思っていますが、どんだけ放置してるんだって話ですね。
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