うまく分析すれば相場を読めるという前提のあやうさ

水瀬ケンイチ

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投資を扱うメディアは、うまく分析すれば相場を読めるという前提のもと、あれこれ記事をアップしているように思います。アクティブ運用の存在意義はそこにあるということでしょう。

でも、実際は違います。洋の東西を問わず大半のアクティブ運用のファンドは市場平均に負ける無残な結果を出し続けています。予測は外れる、もしくは、運用コストを上回るリターン向上に貢献しないのです。にもかかわらず、昔からメディアでは相場を読む方法、読める前提の情報ばかりなのは、正直、疑問でした。

相場の先を常に読めるという幻想 焦らず待つのも手

出版社でマネー雑誌の仕事をしていた2016年11月に、トランプ氏が米国の大統領選挙に勝って日経平均株価は1万6000円台の前半まで急落した。しかしすぐに財政拡張への期待が出て反発した。そのときの日経平均は1万7000円台。景気の良いことを言いたいのが雑誌の性(さが)で、2万円に行く可能性があるのではないかと期待して、校了間際の朝早くから編集部の記者があちこち電話したなかに、「それは(いつも強気


上記の日本経済新聞の記事は、相場の先を常に読めるというのは幻想だと喝破しています。メディアが相場予測に対してこのように白旗を揚げるのはめずらしいことですが、正しいと私は思います。

2016年の米国大統領選挙の際は、世界中のアナリスト、ストラテジストが「もしトランプが大統領になったら株価は暴落する」と断言していました。トランプ大統領誕生で実際に一瞬暴落したものの、その後は大方の予想に反して株価の暴騰「トランプ・ラリー」が続いたのは、そんなに大昔の話ではありません。

<ご参考>

2020年米国大統領選後の株価動向は気にしない

2020年11月3日に行われる米国大統領選挙が、現行の共和党トランプ大統領か、民主党のバイデン前副大統領か、世界の注目になっています。トランプ大統領のナショナリズム継続を懸念する報道もあれば、バイデン氏が大統領になったら増税により株価は25%下がるとの報道もあります。いったいどうなってしまうのか。そんななか、バンガードのWEBサイトに、個人投資家向けの「米国の大統領選挙が投資家に及ぼす影響」についてのコラムが...



上記日経記事でも、トランプラリーについて取り上げ、三井住友DSアセットマネジメントのファンドマネジャー苦瓜達郎氏の取材の中で学んだ「株式市場はどうせ理不尽なのだからそこをあれこれ理屈で考えたり、読みが浅いと悩んだりするのも限度がある、ただ、市場はたまに理屈に合ったことをするので、それを待つのが良い」という話が書かれています。

また、「個人投資家も腕の立つ人ほど相場は分からないという前提でやっているように思う」とも言っています。

つい先日も、2021年6月21日に日経平均が1000円下落した際に、「シナリオが変わり下落が続く」といったようなメディアのネガティブ情報や解説記事が量産されてましたが、その日の夜にNYダウがいきなり大幅上昇し、メディアが急速に尻すぼみになっていくのを、チベットスナギツネのような冷めた目で眺めていたところです。たった数時間の間の出来事です。


個人的に、ネット上にあふれる投資の予想情報と実際に起こった事実を丹念に突合すればするほど、専門家による短期予測の的中率はサイコロを振って半か丁かを当てる(的中確率50%)のと大差ないように感じます。

短期的な市場の動きはランダムウォーク(千鳥足)。

多くのインデックス投資家はよくわかっていることですが、投資関連のメディアがこの身も蓋もない事実を認めることは、仕事として日々相場予測をしている誰かの利益や存在意義を否定してしまうことでもあり、とても勇気あることだと思います。でも、読者にとって真に価値がある情報というのは、得てしてそのようなものだと思います。

では、相場について調べたり学んだりすることは無意味なのかというとそうでもなく、前述の苦瓜氏の話のように「市場はたまに理屈に合ったことをする」ので、セオリーを知っておくこともまた必要だと思います。このあたりは、モデルとしての経済学を学ぶと投資で儲けられるわけではないが、無意味ではないのと同じ感覚です。

そのうえで、そのセオリーや予測を信じきって手持ち資産を全振りで賭けるたりレバレッジをかけるようなことはせず、相場がどんな状況になっても、ある程度対応できる保守的な資産配分でどっしり構えているのが良いのではないかと私は思います。

不確実な未来に対しては、保守的に備える。それが今まで約20年、投資を継続できたコツのひとつだと思っています。

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Posted by水瀬ケンイチ