長期投資といいながら短期的な株価変動で大騒ぎしている人に見てほしいグラフ
水瀬ケンイチ
モーニングスターに長期的な国際分散投資の運用成績を示したグラフが掲載されています。長期投資といいながら短期的な株価変動で大騒ぎしている人に見てほしいグラフです。
日本では長期投資のデータが整備されておらず、世の中に長期投資の力を示すデータが出てくることがあまりありません。また、金融機関にとっても、投資家にバイ&ホールドの長期投資を決め込まれるよりは、短期的に激しく売り買いしてもらった方が手数料が稼げるという事情もあるため、よけいに長期投資の力を示したデータを公開する動機は弱くなりがちです。
私たちの公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、長期の運用データを公開している数少ない機関投資家のひとつです。(もともと私たちが毎月払っているお金の一部を運用している公的機関なのだから当然といえば当然なのですが)
GPIFは「長期的に運用する場合には、短期的な市場の動向によって資産構成割合を頻繁に変更するよりも、基本ポートフォリオを決めて長期間維持していく方が、効率的で良い結果をもたらす」との考えから、「基本ポートフォリオを含む中期計画を作成・変更するときは、あらかじめ経営委員会の議決を経た上で、厚生労働大臣の認可を得る」ことになっており、そうやすやすとは資産配分を変更できない仕組みになっています。
資産配分の見直し評価スパンとしては、少なくとも5年ごとに国民年金及び厚生年金の財政の現況及び見通しの作成、いわゆる財政検証を実施することになっており、結果的に過去、4年ごとに基本ポートフォリオが見直されてきています(結果的に資産配分は変更しない時もあり)。
したがって、常に同じ資産配分というわけではないのですが、長期的視点で、国際分散投資が行われているのは間違いありません。運用実績は四半期ごとに(1年に4回)公開され、悪ければマスメディアに叩かれ、よければマスメディアにスルーされながらも、長期で見れば堅調な運用実績をあげていることが、Webサイトでいつでも誰でも見ることができる状態で広く公開されています。
そのGPIFの公開データで、モーニングスターに掲載されていたのが上記のグラフです。2020年度が特異な上げ相場だっただけなのです。
過去の実績がそのまま未来に続くわけではないし、今までもこれからも、年単位で見ても株価が上がる年もあれば、下がる年もある。一方で、長期で均せば年率数パーセントのプラスが期待できる。GPIFの運用のこの20年間を均すと年率3.61%、直近10年間は年率6.07%です。そんなもんですが、まあまあプラスです。
しかし、長期的な国際分散投資というのは元来そのようなものです。もう耳にタコができるほど聞いているとは思いますが、しっかりと腹に落とし込みたい。精神論ではなく、データで。
もし20年では物足りなければ、情報開示が進んでいる米国の例ですが、200年のデータもありますのでぜひご覧ください。
先月、下げ相場の中で書いたブログ記事「売りたくなった時に見る言葉、見るグラフ」でご紹介した私の大好きなグラフが、最新データに更新されました。...
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