日経に「つみたてNISA」の良記事! ただこの説明は…
水瀬ケンイチ
日本経済新聞に「つみたてNISA」に関する良記事が掲載されています。
積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)が始まって約3年半。この間に株式相場は大幅な下落局面をはさみながらも上昇し、制度を利用する人の多くが資産を積み上げた。つみたてNISAは2037年まで毎年口座を開設でき、20年間非課税での運用が可能だ。利用し続ける人や新たに始める人が長期の資産形成に生かすには投資対象をどう選び、何に注意すればいいのだろうか。つみたてNI
詳しくは上記日経記事をご覧いただきたいのですが、無理やりまとめると、つみたてNISAが始まって約3年半で株式相場は大幅な下落局面をはさみながらも上昇し、制度を利用する人の多くが資産を積み上げたが、つみたてNISA口座を開いたものの始められない人も多かった。標準偏差でみたリスクと運用コストに気をつけて国際分散投資をするのがよい、という内容です。
ほぼ異論がない良記事ですが、一点だけ、最後のリスクの説明で、「例えば年率リターンが18%、標準偏差が20%の投信なら、リターンは18%を中心に上下に20%の範囲(プラス38%からマイナス2%)で動く確率が約7割あることを示す」とあります。期待リターンを中心に上下にプラスマイナス標準偏差分の間で動く確率が約7割というのは正しいのですが、「例えば期待リターンが18%」という設定が荒唐無稽で良くないと思います。
株式クラスの期待リターンはせいぜい年率5~6%と言われており、たまたまある年に18%のリターンが出たからといって、それを期待リターンと置き換えるのは、投資判断を根こそぎ間違える恐れがあるレベルで不適切です。
もし本当に、「プラス38%からマイナス2%」の範囲に7割の確率で収まる金融商品があったら、世界中の機関投資家や大富豪たちがこぞって買いまくるレベルの見逃せないお宝投資案件となりますが、実際にはそんなものはありません。
投資においてリスクを標準偏差という数値で把握することは、とても、とても、重要なこと(大事なことなので2回言いました)ですが、その事例として、ありえない期待リターンの数値を例示するのはあまりよくないと思いました。
期待リターンの計算方法については、以下のブログ記事がよく読まれています。ご参考まで。
「リスクと期待リターンは過去のデータから計算できる」の嘘 (その1)
インデックス投資に詳しいかたでも誤解している場合があることのひとつに、「リスクと期待リターンは過去のデータから計算できる」というものがあります。何を隠そう、自分も昔はそう思っていました。だって、自分が読んできた投資本の中に、そう書いてあるものが結構あったのですから。例えば、橘玲氏の名著「臆病者のための株入門」にも、「過去の株価データさえあれば、個別銘柄のリスクとリターンは容易に計算できる」とさらり...
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