レバナスに関する大江英樹氏の記事が、結論はともかく理屈が間違っている件
水瀬ケンイチ

PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)にレバナス大損に関する大江英樹氏の記事が掲載されています。
100万円が16万円になる悲劇…大損した投資家が今年に入って買っていたある投資信託 昨年の米国株式市場の好調で人気が集まったが…
市場が不安定な時期、投資で気をつけるべきことは何か。経済コラムニストの大江英樹さんは「最近、レバナスで大損してしまったという悲鳴がよく聞こえてきます。レバレッジ型投資信託の落とし穴をよく理解しておく必要があります」という――。
レバレッジ型投資信託に要注意、長期投資にはあまり向かないという結論には賛成ですが、途中のロジックに間違いがあったので、読者の皆さまへの注意を兼ねて取り上げさせていただきます。
ニューヨークダウは年初から約13%の下落ですが、ナスダックは約28%下落しているからです。もし年初の高値でレバレッジ2倍のファンドを買っていると下落率は56%、3倍だと84%の下落ということになります。
(100万円が16万円になる悲劇…大損した投資家が今年に入って買っていたある投資信託昨年の米国株式市場の好調で人気が集まったが… | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)より引用)
何度言っても間違える人が後を絶たないこの表現。当ブログでも10年以上間違いだと指摘してきましたが、大ベテランの大江氏ですら間違えてしまうのですね。
例えば、通称レバナスと呼ばれる「iFreeレバレッジ NASDAQ100」の目論見書を見てみましょう。ファンドの目的として、「日々の基準価額の値動きがNASDAQ100指数(米ドルベース)の値動きの2倍程度となることをめざします」と書かれています。
重要なのは「日々の基準価額の」という部分です。これは、1日単位で見れば2倍の動きをしますが、ファンド保有期間が2日以上の場合は、2倍になるわけではないことを表しています。
目論見書にも、ズバリ、「ファンド保有期間が2日以上の場合の投資成果は、通常「2倍程度」になるわけではありません」と書かれています。

何回この話をブログに書けばいいのか、いい加減うんざりしますが、「ナスダックは約28%下落しているからです。もし年初の高値でレバレッジ2倍のファンドを買っていると下落率は56%、3倍だと84%の下落ということになります」という大江氏の説明は、レバナスの目論見書がそうならないとわざわざ但し書きを書いているとおり、誤った説明です。
問題はズレかたです。きれいに2倍、3倍にならないものの大体1.9倍とか3.1倍とかにはなるという小さな程度問題の話ではなく、下手をすればプラス・マイナスすら逆になるくらいズレまくるのがレバレッジ・インバース型投資信託の実態です。
私は大江氏を人生の先輩として尊敬していますが、以前から結論はおかしくないものの、そこに至る過程の理屈がおかしいことがあります。誤りはしっかり訂正なさったほうがよろしいのではないかと思います。
それよりもなによりも、当ブログの読者さまには、レバレッジ・インバース型投資信託は、長期で持つと2倍(-2倍)、3倍(-3倍)という表面上の目標から(おそらく皆さまが抱く印象よりも大きく)ズレていく可能性があることを知っておいてほしいと思います。
「積立投資を複利で語るなかれ」という主張は間違っているのでは
日経電子版に「積立投資を複利で語るなかれ(大江英樹)」というコラムが掲載されています。私はコラム著者の大江氏の著書を多数読んでいるし、セミナーにも参加したことがありますし、なにより大江氏を人として尊敬しています。しかし、今回のコラムに限っては理屈が間違っているのではないかと思います。いったいどういうことか? ひとつひとつ説明していきたいと思います。...
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