一般NISAが複雑化するのは制度の趣旨にそぐわぬ利用が頻発したから
水瀬ケンイチ

最近投資をはじめた方が口々に「NISAを複雑化する意味がわからない」というのを聞きます。過去の経緯にその理由があります。
投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。金融所得倍増への一歩はリスクマネーへの転換だいろはちゃんの言う通り、岸田文雄首相が「インベスト・ イン・ キシダ」演説の中で言及した「資産所得倍増プラン」は唯一、具体性のあるメッセージとして海外メディアでも関心が高い。資産所得とは金融所得のことで、要するに日本の個人金
詳しくは上記コラムをご覧いただきたいのですが、要するに、少額投資非課税制度(NISA)がまだ一種類だった頃、制度の趣旨にそぐわぬ利用が頻発したからだということ。
コラムには、「非課税運用期間は5年と中途半端な上、個別株式をはじめ長期投資指向ではない様々なタイプの投資信託まで幅広く投資対象として認めたため、証券会社を経由して投機的商品の売買で短期間で勝負するといった制度の趣旨にそぐわぬ利用も頻発した」とあります。
制度の趣旨とは、「より多くの国民に積立・分散投資による安定的な資産形成を促す」(NISAとは? : 金融庁より)ことです。
NISA制度がはじまった2014年当時、高齢者の退職金などを狙った証券会社・銀行が、非課税制度であるNISA口座開設をトリガーに高コスト毎月分配&通貨選択型投信などを売り込む営業ばかりしていたため、NISA利用者の大半が高齢者、かつ、若者の新規投資家はほとんど増えずという状況になっていました。
NISA口座で満額まで投資した場合、吐き出された配当・分配金は、もう非課税枠で再投資することはできません。一度もらってはい終了。資産形成とは程遠い運用ですが、日々のこづかいがほしい高齢者たちはそれでよかったのでしょう。
しかし、金融庁はこりゃアカンということで、自ら商品を厳選し(毎月分配型は対象外、低コストかつ分配金を出さず基準価額増加に回すことが多いインデックスファンド中心)、つみたて投資の形式を満たした場合のみ非課税とする「つみたてNISA」が2018年に追加された経緯があります。
これには、20~30代の若者が積極的に利用しはじめ、今でもどんどん利用者が伸びています。
その後、追加された別の「ジュニアNISA」は利用者が増えず廃止が決まり、一般NISAも廃止されると覚悟はしていましたが、2024年から、つみたて投資分の上に自由な商品を投資できるようにする複雑二階建ての「新NISA」に刷新されることになっています。
非課税制度を変な使い方をする投資家とそれでひと儲けしてやろうという金融機関がいるから、制度に変な縛りが増えて複雑化するのです。
「より多くの国民に積立・分散投資による安定的な資産形成を促す」という制度の趣旨に沿った利用をする人が増えれば、制度もより拡充され、利用しやすく進化していくのではないかと思います。
なお、通常の課税口座であれば、どんな投資でも自由にできます。NISA制度の趣旨など知らん、自由に投資したいんだという方々は、課税口座で自由に投資したらよいと思います。
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