日本の投資信託市場が大転換するかも
水瀬ケンイチ

ついにインデックスファンドが国内最大ファンドになるかもしれないという話です。
投信市場の大転換の予兆か? インデックスファンドが国内最大ファンドになる日
国内最大の公募投信が米国株式のインデックスファンド「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に代ろうとしている。現在のところ、米株アクティブファンドの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース」がトップに君臨し、第2位である同ファンドとの残高の差は5000億円ほどあるが、5月には同ファンドに公募投信で最大の700億円超の資金流入があり、トップとの差が縮まってきた。同ファンドの残高拡大を支えているのは、つみたてNISAをはじめとしたネット証券を通じた積立投資での継続的な資金流入と考えられる。
モーニングスターによると、日本の投資信託で純資産残高トップの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース」(純資産残高1兆7405億円)と2位の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(純資産残高1兆2209億円)の差が縮まってきたとのこと。
たしかに、eMAXIS Slimシリーズは販売会社の営業が積極的に販売促進する類の商品ではないと思います。なぜならば、購入時手数料は0%、運用管理費用(信託報酬)も年0.1%以下と金融機関側の利幅が小さいからです(その分、投資家の取り分が大きい)。ちなみに、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース」の購入時手数料は最大3.3%、運用管理費用(信託報酬)は年1.727%です。かつては、「グロソブ(グローバル・ソブリン・オープン)」や「グロイン(ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド)」など市場を席巻する大型ファンドが登場したが、これらは全てアクティブファンドであり、金融機関の窓口を通じた積極的な営業の働きかけの力があった。インデックスファンドは、主として投資家の自発的な行動によって購入されていると考えられ、そのファンドが国内最大を記録するようだと、投信市場が大きな変化を遂げた象徴になると考えられる。
(投信市場の大転換の予兆か? インデックスファンドが国内最大ファンドになる日| モーニングスターより)
eMAXIS Slimシリーズの純資産残高が伸びているのは、投資家の自発的な行動だというモーニングスターの分析は正しいと思います。
コロナ禍もあって「金融機関の窓口を通じた積極的な営業の働きかけの力」が弱まってきたのかもしれません。あるいは、金融機関の窓口など元々利用しない若い世代の投資家が、YouTubeや本でインデックスファンドのことを学んだのかもしれません。
この傾向が今後も続くかどうかはわかりませんが、金融先進国の米国では、投資信託(ミューチャル・ファンド)の純資産残高トップ5はすべてインデックスファンドとなっています。
(Top 5 Biggest Mutual Fundsより)
- Vanguard Total Stock Market Index Fund Admiral Shares (VTSAX) - $1.3 trillion
- Vanguard 500 Index Fund Admiral Shares (VFIAX) - $808.8 billion
- Vanguard Total International Stock Index Fund Admiral Shares (VTIAX) - $385.5 billion
- Fidelity 500 index Fund (FXAIX) - $380.7 billion
- Vanguard Total Bond Market Index Fund Admiral Shares (VBTLX) - $305.1 billion
個人投資家が資産運用のコアとして投資すべきファンドがどのようなものか、日米にそれほど違いがあるとは思えません。日本の投資信託市場でも、同様のことが起こってもなんらおかしくないと私は思います。

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