米国株投資ブームで「キャピタルフライト」を懸念する必要なし
水瀬ケンイチ

積立王子は最近の米国株投資ブームがお気に召さないようです。私も米国株集中投資についてはいかがなものかと思うところはあります。
投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。つみたてNISAは一般NISAの反省からスタート一般NISAと呼ばれる少額投資非課税制度が長期資産形成のための制度として定着できなかったのは、まず非課税投資期間が中途半端な長さになってしまったのが一因だ。金融庁は10年で法制化したかったのだが、政府税制調査会の抵抗が大
・つみたてNISAの国際分散投資の〝推奨〟は割り切った判断
・「ブーム」はいつか終わり調整が始まる
・キャピタルフライトも心配
それぞれごもっともな懸念だと思います。ただ、一点、間違っていると私が思うのは、日本人が米国株投資で資産形成することを「キャピタルフライト」として懸念している点です。
そもそも、キャピタルフライトとは何でしょうか。
キャピタルフライト(きゃぴたるふらいと)
資本逃避。政治や経済の混乱などにより信任を失った国から、他国へ資金を一斉に移動させることを示す場合が多い。
(キャピタルフライト|証券用語解説集|野村證券より)
日本はべつに政治や経済の混乱で信任を失ったわけではなく、上記コラムで懸念されていることは、日本人が収入をやりくりして捻出した余剰資金の運用先が米国株に集まっているというだけです。
日本人が米国株で増やした資産は、その人が日本に居住している限り、いずれ円に換金されて日本国内で使われます。海外の経済成長を取り込んで、日本国内に還元するのですから、むしろ低成長な日本にとって良いことなはずです。
それをキャピタルフライトと称して懸念するのは的はずれです。もし、日本人投資家は日本株に投資するべきだというのであれば、それは投資家の利益を度外視した身勝手な発想だと思います。
最も懸念されるべきことは、日本人の投資先が米国に向いていることではなく、日本の株式市場や企業が、自国民にそっぽを向かれるようなリターンしか長年提供できていないことではないでしょうか。
少なくとも、投資家が利益を追求するスタンスや、非課税制度の設計が問題なのではありません。投資先として国内外とも自由に選べるのですから。
なお、当ブログでは米国株のみへの集中投資はお勧めしてません。未来の世界がどうなるかわからないので日本を含めた全世界に国際分散投資することをお勧めしています。それでも、上記コラムの米国株へのキャピタルフライト懸念はおかしいと思ったので、記事を書いた次第です。
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